第九話「夜の襲来」
「そういえば、まだ自己紹介していませんでしたね…。
私は水蓮寺一族の八女の『水蓮寺 零』と言います」
「零…。それが、お前の名前か?」
「ええ、そうです…」
俺は剣を構え相手に向けたまま、しばらく動かなかった。
相手の出方を伺っていたのだ。しかし、相手もいっこうに動いてこない。
「どうした?どうして、かかってこない?」
「私は悪魔であなたは人間です…。
実力の差からしても、ハンデを与えるのが“せめてもの情け”というものです…。
さぁ、先攻はあなたにお譲り致します…。
さぁ、姉上のその剣で私を斬ってみてください!
出来るものならば……の話ですが…。」
「へっ、俺も随分と舐められたものだな…。後で後悔しても知らないからな?」
俺はまんまと挑発に乗ってしまったのではないかと、
うすうす感じてはいたが、もう動き出したら止まらない。
それが俺の性格でもあるからだ。