しかし、そのおかげで俺は咄嗟に彼女の攻撃をかわすことができた。
彼女の横をすり抜け、前転をして交わす俺…。
我ながらカッコイイと思う。
しかし、今のこの状況ではそんな冗談を言っている暇はなさそうだ。
その証拠に俺がさっきまでいたコンクリのブロック塀には、
彼女が振るった剣の跡がくっきりと刻みつけられていたのだ。
―もしも、俺の反応が一秒でも遅ければ…ううぅっ想像しただけでも身の毛がよだつ…。
「へぇ、なかなかやりますね…。では、次の攻撃はかわせますか?」
彼女は、足を後ろに下げ上半身を少しひねると、
片方の剣を逆手に持って、勢いよく回転した。
凄まじい勢いによって、足から火花が散っている。
しかも、コンクリートにも少しばかり黒い跡が残っていた。
すると、ヒュンッ!という音と共に四方八方に風を纏った血の刃が飛んできた。
「くっ!!」
俺は軽くジャンプし背中を猫背にしてカタカナの『コ』の字にしてかわした。
「危ねぇ…」
「休んでいる暇はありませんよ?」
「くっ!?」
―いつの間に…?
一瞬にして彼女は回転を止めて、俺の背後に回っていた。
さすがの俺でもこの攻撃はかわせるはずもなく、
彼女の攻撃をまともにくらってしまった。
「ぐはっ!」
彼女の剣がよほど切れ味がいいのか、俺のわき腹辺りを勢いよく切り裂いた。
切り口から溢れ出る大量の血…。
―これは、何だか彼女に勝っても大量出血で死ぬか、貧血で倒れそうだな…。
「これで終わりです…!」
彼女はクックッとジグザグに向きを巧みに変えながら、
俺の死角から攻撃してきた。しかし、俺はその攻撃を防いだ。