「いや…。だが、今回はその勇気ある少年に免じて許してやろう…。
その変わり、この少年にはこの写真の男の居場所を教えてもらう…」
「なっ!?」
突然の青年の発言に桔梗は驚いているようだった。
「若頭が無事ならそれでいいッス!!」
「ふん…。勝手にせぇ…」
若頭は側にいた不良達の手を借り、
コンクリートの地面にポツンと落ちている、
ヒビの入ったサングラスを拾い上げ、自分の顔にかけた。
「わいは、先に戻る…」
桔梗は少し足をひきずりながら、黒い車に乗り込んだ。
他の不良達は桔梗が車に乗るまで道路の両脇に急いで並び、綺麗にお辞儀をした。
そしてエンジンをふかし、黒い車はその場から姿を消した。
「ふぅ…。そういえば、まだ名前を聞いてなかったなお前…名前は?」
「あっ…『緑川 秋次』ッス!」
「秋次か…よろしくな…」
「あの、あなたは?」
「俺か?俺は、『水蓮寺 雫』だ…」
黒い帽子に青い髪の毛の青年、
雫は陽河組の不良達の一人と思われる少年緑川 秋次に、
写真の男の家への道案内をしてもらうことになった……。
しばらくして、彼らがやってきたのは、
この物語の主人公でもある神童 響史(きょうし)の家だった。
そう、写真の男とは響史のことだったのである。
雫と秋次の二人は彼の家の前に立ち止まった。
周りを見渡し雫は念入りに確認したいのか、もう一度少年の胸倉を掴んで問い詰めた。