小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「なっ、おい秋次…。何やってるんだお前は!?」

「秋次?」

どうやら、今鼻血を出した少年の名前は秋次というらしい…。

「なぁ、霄。こいつ誰なんだ?」

「ふっ、仕方がない自己紹介してやろう…。

俺の名前は『水蓮寺 雫』…。姫の護衛役で霄の兄だ…」

―雫…。


彼の名前を聞いて俺はふと思った。

―今思えば雫に霄に霊に零…全員雨冠がつく…。

これは何か関係があるのだろうか?


だが、今の状況からしてそんなことを言っている暇はないようだ。

「あんたも、俺を殺しに来たのか?」

「ああそうだ…。厳密的に言えばお前を殺して姫を魔界に連れて帰るのが、

俺の今回のミッションだがな…。さぁ、姫を渡してもらおうか?」

「あんたには渡さ…―」

「どうかしたの、響史?」

―えええ〜っ!?

だから、何でこういう時に限って出てくるんだ〜!!


俺は心の中で叫んだ。

「姫、ようやく見つけたぜ…。霄、何をやっている!

早く姫を捕まえろ!!」

「悪いな兄者…魔界にいた頃の私なら今頃兄者の言うことを聞いて、

姫様を捕らえていたかもしれない…。

だが、こっちに来てからの私はどうもおかしいらしい…。

…私は響史の意見に賛成だ…。姫様を魔界に連れて行かせるわけにはいかない!」

「ちっ、ったくこんな世界の何がいいというんだ?

大していいところもないみてぇだし、それにこの平和地味た場所…。

俺達の様に血の味をしめた古の種族がいていい場所じゃねぇんだよ…」

「それは、分かっている…。

だが、どうしても…こればかりはさすがの兄者の頼みでも聞けない…」

「ならいい。もうお前に用はない…。そこをどけ!」

「いやだ!!」

「邪魔だ〜!!」

「くっ!!」

雫の拳の動きに反応した霄が慌てて腕で拳の攻撃を受け流した。

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