「実を言うと、私もその天魔の一人なの…。
天使と悪魔のハーフ…それが天魔」
「あっ、そうか…。ルリは大魔王と女神の間に生まれた子供だから…」
「そうつまり、私と妹は二人とも天魔なの…。
でも、それでも研究は続いた。そして新たな事実が発覚したの」
「新たな事実?」
「そう、天魔と天魔をかけあわせると人間が生まれる事が分かったの!!」
「天魔と天魔をかけあわせると人間が生まれる!?」
俺はあまりにもの驚きに腰を抜かしてしまった。
「えっ、でも俺の親は天魔なんかじゃないし…」
「そりゃそうだよ…。天魔と天魔をかけあわせると人間が生まれるけど、
人間同士をかけあわせてもまた人間が生まれるだけなんだから…」
「じゃあ、俺の先祖の先祖の先祖のも〜っと先の先祖は、
もしかしたら天魔かもしれないのか?」
「まぁ、そういうことになるかもしれないけど…」
「ま、マジかよ…」
「でも、研究はもっと拡大していった。
その後今度は天魔と悪魔をかけあわせると、悪魔が生まれ、
天魔と天使をかけあわせると天使が生まれることが分かったの。
その事実を発見したのが私の叔母さんつまり、
現在の鏡界を納めている支配者…ってこと」
「ルリのお母さんの妹が?」
「うん。お父様がどうして私を外の世界に出したくないのかこれで分かったでしょ?」
俺はしばらく考え込んだが、さっきのルリの話を思い出し、理解した。
「そうか…。ルリとルリの妹は天魔だから、
もしも外の世界に出たりしたら他の世界の奴と結婚して、
天使や人間が生まれるかもしれないんだ!」
「そういうこと…。お父様は跡継ぎを作るためにも私達を外に出したくないの…。
だから、私はここに来た。でも、本当の目的はそれだけじゃない。
お父様の計画を止めるためでもあるの!!」
ルリの言葉に俺は公園で雫が言っていた言葉を思い出した。
「雫も言ってたな…。ルリの父親が考えている計画って何なんだ?」
「それは、全ての世界を自分の物にするということ」
「全ての世界を自分の物にする?どうして…そんな大胆な行動に?」
「全ては理想郷を手に入れるためだよ…」
「理想郷を手に入れるため?でも、
さっき魔界から出たら力が半減するから無理だって…」
「そう…だから、お父様は考えた。
魔界の領土を広げればその分、自分の力が半減せずに天界へ近づけるということ。
だから、お父様はまず手近な冥界から攻めているの!」
「なっ!?」
俺が声を出そうとした瞬間、突然大きな地震が起きた。
ガタガタガタガタ…!!
「何だ?」
「やっぱり、もう始まってるんだね…」
「どういうことだ?」
「この地震はお父様の軍が冥界を攻撃している音なの…。
本来、冥界は死人の霊を審判するところで、
それによって死人の霊が天界に行くべきか魔界に行くべきかを審判してもらうんだけど、
この戦いのせいで審判することが出来ずに死者の魂が地上に溢れているの。
全く、昔はお父様もこんなことをする人じゃなかったのに…。どうして…」
ルリは暗い表情で俯いていた。
「お、おい…ルリ。その、それでお前はどうしたいんだ?」
「うん…お父様を止めるためにも、私はこのことをお母様に報告しないといけない。
そのために人間界に来たんだから…」
ルリの言葉に俺は少し疑問を抱き、彼女に質問した。
「なぁ、でもどうしてわざわざ人間界から天界に行かないといけないんだ?」
「他の世界に行くためには必ず他の世界を行き来しないといけないんだ…。
それで、その仲介役となっているのが、この人間界ってわけ。
それで、人間界には天界に行くための通路として『空の裂け目』っていう場所があるんだけど、
それが何故か行方不明になってしまったの」
彼女の言葉に俺は思わず取り乱してしまい、テーブルをバンと叩き、立ち上がった。