小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「ねぇ、今の悲鳴って霰だよね!?」

霊が後ろから駆けつけた。

すると、彼女は俺が手に持っていた手紙に気がついたのか、急に俺に近づいて俺の肩に手を置くと、

手紙の内容を確認するかのように手紙を覗き込んだ。

「何て書かれてるの?」

「えっ?ちょっと、待ってくれ…。え〜と、お前の仲間はわしらが預かった。返してほしければ、

わしのアジトまで来い…。場所は手紙の中に同封されている地図を使え…。陽河組のボス陽河 太…」

俺はとりあえず、ありきたりな名前だな〜なとどいう突っ込みの前に、

同封されているという地図を確認しようとした。しかし、肝心な地図が無い…。

―どういうことだ?


俺は思い切って、封筒をビリビリに破ったが、やはり地図などない…。

―どうなってるんだ?嫌がらせか?ていうか、地図が無いとアジトにいけないんだけど…!?


俺はそう思いながら霊を見た。霊は首を傾げながら俺を見つめた。

「な、なぁ…どうしよう。地図がないから助けようにも助けられないんだけど…」

「ええ〜っ?どうして、地図が無いの?」

「…分からない…。でも、そうなると…」

「あっ、そうだ。確か陽河組のアジトだったよね?」

「ああ…」

「だったら、以前行ったことがあるから私に任せて!」

霊の言葉に俺はぱぁ〜っと明るくなった。

「そうとなったら、準備して行くぞ!」

「うん…」

今思えば俺達二人ともパジャマ姿のままだった。俺は玄関ドアを閉めて部屋に戻り、

服を着替えの洋服を持ってきた。

―そういえば、あいつらの服ないんだった…。

くそ、仕方ねぇもう一度姉ちゃんの部屋探して見つけよう。

くそ、こんなことしてる暇ねぇのに…。


俺はいらだちを心の奥底に押し込め、握りこぶしを作って姉ちゃんの部屋へと向かった。

この間はメイド服などと面倒なことに巻き込まれそうな服があったが、

次はもっとマシな服があることに期待したい…。

そう心の中で願いながら俺は姉ちゃんの部屋を開けた。

押入れの扉を開けて、中をあさくる。そして十分くらい経ってようやく、洋服を見つけた。

組み合わせはどうであれサイズ的にこれくらいしかない。


俺は自分の部屋に行き、扉を開けた。

すると、霄が大好物のおにぎりを食べながら頬にご飯粒をつけて、こちらを見た。

彼女はご飯を飲み込むと、俺に話しかけた。

「響史、どうしたんだその服…」

「ああ…お前達のとりあえずの服だ」

俺はその時さっきから彼女が食べているおにぎりに目がいった。

「そういえば、霄。お前、そのおにぎりどうしたんだ?」

「ああ、これか?これはな…

私がこの間、コンビニとかいう場所に行っておにぎりをたくさん買おうと思って店の人間に渡したんだ」

「えっ、ていうかお前金持って無いだろ?」

「当たり前だ…」

「じゃあ、どうしたんだよ?」

「もちろん…―

≪お金は500円になります…あ、あのお金は?≫

≪お金?そんなものない!≫

≪えっ、でもお金がないと買えませんよ?≫

≪何!?≫

≪ひぃいぃい…!あ、あのその…お金…≫

≪ただにしろ!≫

≪えっ、そ…それは≫

≪さもなくば、お前の首がなくなるぞ?≫

≪わ、分かりました…≫

…っていうふうにしたら、普通に店員が泣きながら私におにぎりを差し出したぞ?」

「それ軽く脅しだよね?ていうか、万引きっつって立派な犯罪に等しいし…!!」

俺は想像してた通りの結果になり、何というか少し悲しくなった。

その時、俺は今まで何をやっていたのかを改めて思い出した。

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