小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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第十六話「入学条件」

次の日の朝…俺は、目を開けた。ギシギシと軋むベッドの音…。

さすがに一人用のベッドに六人も入ったんじゃ、危ないと思う。そう思いながらもなかなか起き上がれない。

何せ、このベッドには五人の悪魔が寝ているのだ。しかも全員少女ばかり…。

さらに、相変わらず皆寝相が悪いのか、掛け布団を蹴たぐっている。

俺はいつの間にかベッドの端に押し込まれ、ベッドの柵に顔をこすり付ける形の状態になっていた。

―全く、このベッドは俺のだってのに…。


そんなことを思いながら起き上がろうとした次の瞬間、ついに最悪の事態が起きた。

そう、以前から予想していたベッドの崩壊…。それがついに起こったのだ。

俺がベッドの柵にず〜っと押し付けられていたせいか、柵が耐えられなくなり

バキバキッ!!

という音と共に、俺は五人の悪魔少女に押され、

カーペットのしかれた床に思いっきり顔から落ちてしまった。

バタンッ!

という音と共に、他の皆もようやく起きたのか眠そうな顔をして、欠伸をしながら片方の眼を擦り、

俺を見る。俺は、ゆっくり起き上がるとヒリヒリ赤くなっている顔を優しく擦った。

しばらくして全員が起き上がり、俺の鼻を擦る様子に気がついたルリが俺に話しかけてきた。

「ねぇ響史…。その鼻どうかしたの?」

「誰のせいで、こうなったと思ってんだ!!」

「もしかして私達のせい?」

「ああ、そうだよ…」

「…ご、ごめん」

―うっ!そんな悲しい顔されたらまるで俺が悪いみたいじゃねぇか!!そうだ…。

俺が昨日考えていたことをこいつらに話さねぇとな…。


「な、なぁ…実は相談なんだがお前等学校に通いたいとは思わないか?」

「「「「思わない!!」」」」

―即答かよ!!!?


「ま、まぁまぁ…皆落ち着いて…。でも急にどうしたの?」

「えっ、ああ…。いや、俺が学校に行っている間お前らのことが見れないだろ?

そうなると、何かと心配事とかがあるんだよ…。それに、もしも護衛役が来たりしても大変だろ?

だからだよ…」

「ふぅ〜ん。まぁ、確かに学校にいて響史と一緒にいる方が何かと安全かもしれないし、

すぐに連絡も取り合えるか〜。それに、人間界のことについて学ぶ良い機会かもしれないし、私はいいよ?」


「はぁ〜。姫様がそう言うのであれば私も行かない訳には行くまい…。

何せ、私は姫様の護衛役だからな…」

「はいはい…。じゃあ、全員行くんだな?」

「うん…」

皆の返事を代表してルリが返事をした。

「じゃあ、学校に行くか!」

そう言って、俺は急いで、部屋の壁にかけてある制服を取り、ハンガーをベッドにポイッと投げた。

「先に下に降りて、朝ごはん食べてくれ!」

「分かった!」

俺は五人が下に降りて行ったことを確認すると、急いで、パジャマを脱ぎ、カッターシャツの袖に腕を通し、

ボタンを一つ一つ手際よくはめていった。

そして、机の横についているフックにかけてある学校のバッグを片手に、部屋の扉を開けると、

階段を駆け下りていった。靴下を履いていたため、少し階段で滑りそうになったが、

手すりを慌てて掴んだため、ギリギリで階段からこけることはなかった。

そして、慎重に一番下まで降りると、食パンを口にくわえたまま、

蜜柑色の髪の毛をゴムで留めているルリがいた。

「お前ちゃんと食べてからにしろよ、行儀ワリィな…」

「はっへ、ひほははひほひへはひふへひょ(だって、急がないといけないんでしょ)?」

「だから、口にくわえたまま喋らない…!」

俺は彼女の口から食パンを取り外した。

「えへへ…ゴメンね?」

「全く、急げよ?」

「あっ響史待って!!」

「何だよ?」

「髪結んで?」

俺は思わずそれぐらい自分でやれよという表情を作ろうかと思ったが、彼女の眼差しに少し押され、

俺は溜息をつくと、彼女からいつも髪の毛を結ぶのに使っている紐を貰うと、

彼女の蜜柑色の髪の毛を結んであげた。そして髪を結び終わると、

ルリが俺の方を向いて笑顔でありがとうとおれいを言った。

その顔に俺は少し頬を赤らめたが、すぐに冷静になった。そして、リビングに行き、

俺も食パンを一枚食べようと皿に何枚か置いてあるふっくらした食パンを取った。

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