「何やってるんだ、響史…。そいつは誰なんだ?」「なっ、ななな…し、神童!お前、何故下の名前で…?ま、まさか…!?」
「おい、何か勘違いしてないだろうな?」
「お、お前がそんな奴だったなんてこ…この裏切り者〜!!」
ボゴァ!!
俺は何故か藍川に殴られ地面に体全体を打ちつけた。
「いっててて…。ど、どうして俺がこんな目に…」
「だ、大丈夫響史?」
「ああ…何とかな」
俺は殴られた頬を押さえながらゆっくり立ち上がると、校長室に向かった。
「ここだ…」
俺は、身だしなみを整えて校長室の扉を数回ノックした。
「どうぞ〜♪」
明るいが少し低めの声が向こうの部屋から聞こえてくる。俺はその声に背中に寒気を感じ、
扉を開けることを少しためらったが思い切って扉を開けた。
「あら〜、誰かと思えば神童君じゃないの〜!!」
そう言って、俺の近くに来たのはこの光影学園の校長を勤めている『牡蒲 満』先生だった。
彼はこんな風に女のような言葉で話しているが女ではなく男だ。そう要するにオカマだ。
「何か言った?」
「いえ…」
―全く、どうしてこうも女は勘が鋭いんだ。いや、待て。この人は男もとい…オカマだったな。
すると、いきなり校長が近づいてくるや否や急に耳元で変なことを囁いた。
「今日は、どうかしたの?しかも、珍しいじゃない。あなたがこんなに可愛い娘連れてくるなんて…。
まさか、ガールフレンド?」
「なっ!?ち、違いますよ!!」
「まぁまぁ、そんなに顔赤くして…。相変わらず素直なんだから〜」
―全く、この人の声を聞いていると、調子が狂う…。
「それで、本題は?この娘達を連れてきたのにもちゃんと意味があるんでしょ?」
「ええ、まぁ…実はこいつらをこの学園に通わせようと思って…」
「まぁ、あなたの頼みだからねぇ〜。でも、あたしもこの学園の校長だから、そう甘くも扱えないのよ〜。
とりあえず人数が空いているかどうか聞いてみましょう!教頭先生〜!!」
そう言って校長は教頭を呼んだ。
すると、奥の扉がガチャッと音を立てて開き、そこから突然泣いている教頭が現れた。
「グスッ!…はい、校長…。どうか致しましたか?」
「どうかしたはこっちのセリフよ!何泣いてるの?」
「ええ…実はこの小説で感動してしまって、ついつい泣いてしまいました…」
「年を取ると大変ね〜」
「ええ…」
今、白いハンカチで涙を拭いているのが、この光影学園の教頭『嶋鳴 邦彦』先生だ。
「それで、何の用ですか牡蒲 満校長…」
「グッ!!ゴルゥァァァ!!!誰が満ダァ!!!未知子だろうが〜!!!」
「ひぃぃい…。すみませんでした牡蒲 未知子校長…」
「ふん!……それで、いいのよ…」
何故校長が“満”ではなく“未知子”だと言っているのかというと彼、いや彼女…まぁどっちでもいいや。
名字がオカマと紛らわしいためフルネームで言うと『オカマ ミチル』と、
まるでオカマが満ちているかのようになるためというのが一つ目の理由、
もう一つが女っぽい名前がいいということで、こんな名前になったのだ。
いや、しかし漢字で書くと『未知子』と何が未知なのかまるで分からない。
どちらかというと謎に満ち溢れているという意味で『満』の字のままでも良かったのではないかと、
俺は思っている。