「校長、良かったんですか?あんな約束して」
「大丈夫よ…あの問題を全て解くなんてこと出来るわけないわ。余程の天才ぐらいしか…。
そんなことよりも、先週頼んでいたお試し用の化粧品がまだ届いてないんだけど、どういうことなの!!?」
「そ、そんなこと、この私に言われても…」
校長室は相変わらず賑やかだな〜と俺は心の中で思った。しかし、あんな約束を校長としてしまったが、
こいつら本当に大丈夫なのだろうか?
「なぁ、本当に大丈夫なのか?」
「ああ…大丈夫に決まっている!私達を舐めるな…人間界の問題など私達には簡単すぎて、
逆にヘドが出そうになる…」
「そんなこと言ってるが、じゃあこの問題解けるのか?」
「ああ…任せておけ」
そう言って、霄は俺から数学の問題周を取り上げると、じ〜っとにらみつけた。
そして、一分が過ぎ、彼女はその場に立ち止まった。
「おいおい、やっぱり解けないんじゃないか!」
「……すまない、ダメだ。解けない…」
「ほら見ろ!」
「いや、まず字が読めない…」
―ええ〜っ!?まずそこから〜?なんじゃそりゃ!
「えっ、お前ら日本語読めないのか?」
「うん…。私達は魔界兵育成教育学園。通称魔界学園で、魔語しか習ってないから…
日本語なんて文字は習ってないよ?」
「それじゃ、ダメじゃねぇか!まずは、日本語から学ぶって相当時間かかるぞ?
しかも、提出日は明日だし、ホントに大丈夫なのか?」
「だ、大丈夫だ…」
俺はその瞬間を逃さなかった。
―確実に今、霄一瞬戸惑ったよな…。
「じゃあ、さっそく家に帰って勉強だな!」
「うん!」
と、その時彼らの目の前に教師が現れた。
「何が帰って勉強だ!神童、お前、この間から一週間全く学校に来ていないだろが!!!」
「逃げるぞ!!」
「うわっ、ちょっと待ってよ〜!!」
「こら〜!校内で走るな〜!!」
今叫んでいるこの教師…。彼の名前は『胡摩武良 厳太郎』と言って、
俺の通うこの光影学園の生徒指導をやっている…。男子には厳しく、女子には甘いのが彼の悪いクセ…。
しかし、ある程度のストレスを与えると、例え女子だろうが容赦なく厳しく指導する。
「あいつに、捕まったら厄介だ!とりあえず、ここから脱出しよう!」
「うん…」
俺達は昇降口から脱出すると、そのまま校門に向かって走り、
途中にある噴水を囲んでいる庭園を抜けて行った。しかし、途中で胡摩武良に捕まりそうになり、
俺達は間一髪の所で、庭園を盾にして、逃げ切った。
「ふぅ〜。ここまで来ればもう安心だ」
「でも、明日またさっきの人に会ったらまずいんじゃないですか?」
「それについては問題ない。何せ、あいつはいろんな奴をターゲットにしているからな、
一日の内に起こったことはよっぽどの事じゃない限り、次の日には忘れてる」
「なら、いいんですが…」
「それよりも急ごうぜ?じゃないと、まずは日本語から勉強しないといけないんだから…」
「そうだね…」
俺は少し呼吸を乱しながら、家に帰っていった。