小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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第十七話「入学テスト」

家に帰ると、俺はさっそくありとあらゆる辞書を取り出し、リビングに運んだ。

「こんなに、たくさん何に使うんだ?」

「何って、日本語の勉強に決まってるだろ?」

「ほう…。だが、こんなにたくさん使う必要あるのか?」

「何しろ、俺達の世界には大量の言葉があるからな…。これだけあれば一応足りるかな…」

俺は最後の分厚い辞書の一冊をテーブルにドサリと置くと、バッグをそこらへんにポイッと置いて、

座布団のしかれた床に座った。それと同時に俺はさっきから首を絞められている気がして、

ネクタイを緩めた。
「ふぅ〜。さてと、まずはひらがなから勉強するか?」

「ひらがな?」

「ああ…大抵の日本語はひらがな、カタカナ、漢字の三つに分かれていて、

それらを多種多様して言葉を生み出していくんだ。例えばそうだな…、

『千里の道も一歩から』とかいう風に、漢字とひらがなを一緒に使ったりもするし、

『ひらがな』だって、漢字でかくと『平仮名』って書くしな…」

「へぇ〜。日本語って中々面白いんだね〜♪」

霊が頬に手を当てて、両肘をテーブルに置き、他人事の様に言った。

「言っておくが、お前も受けるんだぞ?」

「ええ〜っ!?私も〜??」

「当たり前だろうが!」

俺は少しムッとしながら言った。その時、俺は彼女達が普通に日本語を言葉にしていることを、

改めて思いだし言った。

「っていうか、お前ら既に日本語口にしてるじゃん!?」

「ああ…これは、言語翻訳機と言ってな、その場その場に応じた言語に翻訳することが出来るのだ。

だから、私が今魔語を使って喋っていたとしても日本語に翻訳されるというわけだ」

俺は彼女の説明を聞いて、ある程度理解しすごいと思った。

「それって、誰が作ったんだ?」

「これも、少し前に姫様が話したという話に出てきた、姫様の叔母様が作ったものだ」

「なるほど、魔界の発明家も凄いな…」

「とりあえず、日本語の勉強の続きしよ?」

「そうですね…」

あれから、どれくらいの時間が経っただろうか?日も暮れて、辺りもすっかり真っ暗になってしまった。

時計を見てみると、時刻は午後五時をしめしていた。俺は丁度いいタイミングと思い、

とりあえず今まで勉強したことの復習をするために、彼女達から辞書を受け取ると、さっそく問題を出した。

「じゃあ、まずはこの問題だ…。『謎』←何と読む?」

「はい!」

俺は元気よく手を上げルリに返答権を与えた。

「答えは、『めい』です!!」

「ぶ〜っ!!『めい』じゃなくて『なぞ』な?」

「あ、そうだったてへへ…」

このお茶目さがなんとも言えない。

「じゃあ、次の問題今度のは少し難しいかもしれないな…。『鮪』←何と読む?」

「はいはいは〜い!!」

俺は凄くテンションアゲアゲの霊を当てた。

「答えは『マグロ』です!!」

「すげ〜合ってる。じゃあ、次の問題は分かるかな?『鮃』←何と読む?」

「『ヒラメ』!!」

―何でこいつは、魚の名前は全部当てやがるんだ…。


「じゃあ、『鯨』←これは?」

「『くじら』!!!」

「くっ、正解だ…」

―全く、どんだけ魚好きなんだ?


俺はある意味霊を尊敬した。

「まぁ、いいや…じゃあ『胡桃』これは?」

「う〜ん、『ごま』?」

「う〜ん、おしいな…」

「分かったぞ…。『くるみ』だ!」

「おっ、凄いな霄…合ってるぞ?」

「おお、本当か?」

「ああ…」

「それは良かった」

俺は思った。

―だんだん、彼女達は成長していっている。問題もどんどん解いてるし…。





そして、さらに一時間が経過し時刻は六時…。

「じゃあ、そろそろテストの一つ前の問題を解いてみるか?」

「そうですね…。そろそろ人間界のテストの形式も見てみたいですし…」

―うわっ、めっさ専門的なこと言ってる…。


「ちなみに、お前らの通ってた魔界学園って偏差値幾つ?」

「偏差値ですか?ざっと、80〜90はいってたはずですけど…」

―うえぇぇええ〜〜〜〜!!?桁が違いすぎる〜!!いや、厳密的に言えば、

光影学園は偏差値60くらいでそこまで数字的には変わらないけど、俺的には二十も差があったら、

桁が違うんだよ!


俺が心の中で叫んでいると、追い討ちをかけるかのように、霄が少し微笑みながら言った。

「言っておくが、魔界学園を卒業して護衛役になるためには、偏差値80以上はもちろんのこと、

単位も全て取っておかないといけないからな?」

―ぬわぁんだと〜!!?俺は頭が爆発しそうだった。


ていうかそれくらい信じられなかった。だって、彼女達は見た目的には戦っていない時の日常生活では、

のほほんと平和ボケした大抵何処でもいそうな奴らだったからだ。

―でもまさかそんな奴らがこんなにも頭が良かったなんて…。そんなやつらに俺は得意気に、

日本語を教えていたってのか?何か俺めっさカッコワルイじゃん!!


「まぁまぁ、そんな気を落とさないで…?私は偏差値そんなに高くないから…。ね?」

「じゃあ、お前…偏差値幾つ?」

「えっ?え〜と、確か70だったかな?」

「てめぇもあっちの仲間だろが!!」

俺は、はしっこで体操座りをしたまま動かなくなった。

「ねぇ響史…。そんなに落ち込まないでよ〜。私達、まだ本番のひとつ前のテストをやってないよ?」

「グスッ…そこにおいてあるだろ?時間は45分だから…。じゃっ!」

俺は机の上に置いてあるテスト用紙を指さして、再び憂鬱状態に陥った。

「まぁ、響史があんな感じだから私達だけで始めちゃおっか♪」

「そうだな…。じゃあ、とりあえず一番上に置いてある奴から…。

ムッ、これは…私の一番苦手とする科目…英語じゃないか!!」

「やった〜私の一番好きな教科だ〜!!じゃぁ、時間計ってやってみよ〜」

向こうからは、楽しそうにはしゃいでいる少女達の声…こっちでは一人寂しく床に指で文字を書いている。

俺はあまりにも退屈なのと、日頃の疲れがたまっていたせいか、いつの間にか体操座りしたまま、

眠っていた。気がつくと、ルリに肩をポンポン叩かれていた。

「あれっ、俺寝てたのか…?」

「そうだよ?」

「それで、何かあったのか?」

「うん、終わったよ?」

「えっ、終わったって…。あんなにたくさん教科あったのに?」

「うん…」

俺はその言葉に一瞬疑いを持った。何せ、彼女達は十教科あったテストを、

たったの100分で全て終わらせたからだ。

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