小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「プハ〜ッ!やっぱり、朝一の牛乳は格別だな〜」

俺がコップをテーブルに強く叩きつけるように置いて言っていると、

そんな俺の様子をじ〜っと零が見ていた。

「な、何だよ何か俺の顔についてるか?」

「いえ、何でもありません…ただ…―」

「ただ?」

俺が彼女に聞き返すと、零は俺と眼を合わせながら色白な指で自分の上唇辺りをさした。

「ここ…牛乳特有の白い膜がついてますよ?」

「あっ、ヤベッ!!」

俺は咄嗟に腕で拭った。

「サンキュウ…零おかげで、学園で恥をかかずにすんだよ…」

「いえ…」

「全く、本当に優しいな零は…私ならそのままほったらかしにして、学園で恥をかかせてやったのに…」

霄が既にバターが塗られ、焼かれた状態の食パンを食べながら言った。

その時の、バリバリッという、何とも食パンの耳ならではの独特の音が、何とも言えない食欲をそそる…。

「あのな…たまにはお前も零みたいに俺に気を遣えないのか?」

「響史に…気を遣う必要など無い!」

「…あっ、そうですか…」

俺は少し悲しくなりガックリと肩を落としながら言った。時刻はそろそろ七時二十分…。

「じゃ、腹もいっぱいになったことだし、そろそろ学園に行くか…テストはちゃんと持ったか?」

俺は一応皆に確認した。

「もっちろん…ちゃんと持ってるよ?」

「落とさずにな…」

俺はリビングを出て、玄関に向かった。鍵を片手に持ち、革靴を履く…。基本光影学園は靴の指定は無いが、

俺は両親に言われ、仕方なく革靴を履いていくことにしている。未だに壊れたままの玄関ドアを開けると、

明るいを超えて眩しいくらいの日差しが一瞬俺の視界を奪った。

「…眩しい」

俺は目を瞑り、腕で日差しを遮る。俺は全員が家の中から出たことを確認すると、玄関扉を閉め、

鍵をかける。ここで少しばかり鍵をかけるためにコツがいる。何しろ、姉の唯が、

少し前に玄関扉を壊してしまったため、鍵穴が歪んでしまったようなのだ。

玄関扉を直すにしても、二階の屋根(俺の部屋のみ)を直すにしても金がいる…。全く、いろんな出費だ…。

「そういえば、響史…」

ルリが急に俺の名前を呼んだ。

「ん、どうかしたのか?」

「いや…そのあの校長が出してた条件の一つ目でお金の話なんだけど、ちゃんと用意出来たの?」

「ああ…その件なら大丈夫だ…」

「えっ?」

彼女が驚くのも無理ない…。俺の家は見た感じボロいとも豪華とも言えない、

ごく普通の家だからというものあるが、何よりも両親が出稼ぎに行っていたり、

壊れた場所をそのまま放置という理由もある。だが、俺にはお金を用意する方法があるのだ。

まだ紹介をしていなかったが、実は俺にはお爺ちゃんがいる。名前は『神童 豪佑』…。

この光影都市では凄く有名な五つのテーマパークを作り出したという、

『バブルドリームカンパニー』の社長だ。そう、要するに俺はその社長の孫ということだ…。

ちなみに俺の父親『神童 五郎』が、その息子…。本当は爺ちゃんが、

俺の家のローンも全額負担してくれるというまさに鶴の一声を言ってくれていたのだが、

俺の両親が迷惑かけるわけにはいかないと行って、全てを自分達で負担したのだ。

だが、実際にはそれも今ではもう限界に達している…。

しかも、少し前にその爺ちゃんから

「もしも困ったことがあったり金がなくなったりした時には、わしに言ってくれ!」

と言っていた。まさに、今がその時…。

俺はさっそく携帯をカバンから取り出し、電話をかけた。





ここは、俺の爺ちゃん神童 豪佑が、住んでいるバブルドリームカンパニーの最上階…。

その部屋は凄く広く壁の色は黒一色だった。天井からは、豪華そうな装飾をされたシャンデリアが、

ぶら下がっている。地面は交互に色が違うタイルがずら〜っと敷き詰められていた。

その部屋の窓側に置かれたデスクと高級そうな黒い椅子…そこには一人の白髪頭の老人が、

片目にメガネをかけ、腕置きの部分に腕を置き、何かをしている。

そう、彼こそが俺の爺ちゃん『神童 豪佑』だ。またその両隣にいる四人の少女は、

俺の従姉妹で端から一番年上の、赤毛が特徴の女性が『東條 茜』…。

その隣にいる髪の毛が少し霄達水蓮寺一族に似ているのが『西城 燈』…。

反対側に回って後ろ側にいる背の一番低い子供が『南 奈緒』…。

その手前にいる、髪の毛がいつもクルクルパーマをかけたような状態になっている人が、

『北条 姫歌』…この四人が俺の従姉妹だ。この四人が何故爺ちゃんと一緒にいるのかというと、

まぁよく分からないが爺ちゃんが一人は寂しいということで、孫の彼女達四人が選ばれたのだ。

また、この爺ちゃんがあまりにも子供っぽくゲームが大の好き…そのため、

いつでも姉ちゃんや妹とゲームをしている。この間は、テレビゲームをしていた。





〈もしもし?〉

「おお〜、響史じゃないか…久しぶりじゃな、今日はどうかしたのか?」

「お爺ちゃん、誰?」

「ああ…響史じゃよ!」

〈どうかしたのか?〉

「いや、こっちの話じゃ!それで、用件は何じゃ?」

〈ああ…実は、金が急に必要になって…〉

俺は少し遠回りに言ってみた。

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