小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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第十八話「最悪の自己紹介」

俺は今、光影学園の校門の前にいる。えっ、誰かと待ち合わせをしているのかって?

もちろん、ここにいる五人の悪魔を入学させるために、金を用意してもらい、

ここに持ってきてもらっているのだ。

―にしても、随分と遅いな…何してるんだ?ていうか、誰が持ってくるのだろうか?

やはり、二百万という大金だ…、恐らく、厳重な警備の中で、車に乗せられて、

SPが持ってくるのだろうか?


しかし…俺の予想を超えて、実際にはとんでもない奴が持ってきた。そう、従姉妹の燈だ…。

―よりにもよってSPよりも強い奴が持ってくるなんて…。


「あん!?何か言った?」

「いや、別に…」

「どうかしたの、響史?」

「なっ…!? 」

バタッ!

アタッシュケースがアスファルトに落ちる音…。俺達の間に吹き込む強い風…。

俺達の髪の毛が風になびき、思い空気を吹き飛ばす。俺は、ゴクリと息を呑み燈に聞いた。

「なぜお前がここに?」

「はぁ〜?あんたが、お金持って来いって言ったんでしょ?」

「いや、そうだけど…」

「しかも、良かった…私がここに来て…。ねぇ一つだけ聞かせて?あんたがこの二百万が必要な理由って、

もしかしてその子達のため…なんて言わないよね?」

頭を下げ、握りこぶしを作り、ブルブル体を震わせる燈…どうやら、完全に怒っているようだ。

まぁ無理もない…何しろ彼女の言うとおり、こいつらのためにわざわざお金を用意させたなど、

とんでもないことだからだ…。だが、俺にはもう時間がない…。

「ねぇ少しだけ、こいつ借りて行っていい?」

「えっ、でも…ムグッ!」

「ああ、構わんぞ?」

「なっ、霄!お前何いい加減なこと…―」

「ありがとう、じゃあ少し借りていくね!!」

「ぬわぁああああ!!!離せ、離してくれ〜!!! 」

燈の手が、俺の着ている制服の後ろ側の首周り部分を掴む。俺はそのまま引っ張られ、

コンクリートの地面の上を引きずられていった。それを心配そうに見守る奴らと、

「ふっ!」

と何かを企む策士の様な表情で俺を見る奴…(霄のみ…)。





気がつくと俺は狭い人気の少ない路地裏にいた。さらに、俺は燈に片手で首を捕まれ、

ブロック塀に叩きつけられていた。

「んぐっ!?」

「さぁ…白状してもらうわよ?さっきの、あの子達とはどういう関係なわけ〜?」

「い、いや…その何というか空から降ってきたっていうか…」

「言い訳しない!!」

「いやいや、本当なんだって!信じてくれよ!!」

まぁ、確かにいきなりルリが空から降ってきたと言って信じてもらう方が無理な話だ…。

だが、これは本当の話だから仕方がない。

「とりあえず、このことはお姉ちゃん達にも話させてもらうから…」

「えっ、マジでそれだけは勘弁してくれ…!」

俺は必死に燈に頼んだが、どうやら聞き入れてはもらえないようだ。

「ぜ〜ったいに嫌!まっ、そういう訳だからさよなら…」

「なっ…ま、待ってくれよ!」

「ついてこないで!!」

「うっ…!?」

俺は彼女の気迫と大声に、思わずその足を止めてしまった。しかも、彼女が見えなくなるまで、

動くことが出来なかった…。

「ど、どうしよう…」

俺は学園の校門にトボトボと肩を落として向かうと、霄以外の皆が俺の表情を見て心配そうにしていた。

「だ、大丈夫…響史?」

「あ、ああ…まぁな」

ルリ達にはそういったが、実際には違った。

まず家に帰ったら大丈夫だろうか(俺の身が…)?ということ。

もう一つはこいつらと同じクラスになった場合だ…。何とかしてこいつらとは違うクラスにならなくては…。

俺がそんなことを考えながら校門に入ろうとすると、霄が俺の肩をポンと軽く叩いてきた。

「よく、やったな響史!私の予想以上の結果になった…」

「ああ…お前のせいで、俺は家に帰ったらどうなるかってことを今、頭の中でシュミレーションしてるよ!!」

―全く、こいつのせいで、酷い目にあう。いや…これから酷い目にあうんだな…。


「とりあえず、校長室に行くか…」

俺達は、昇降口から校舎の中に入り、職員室の奥の方にある校長室へと向かった。





コンコン…。

「…」

コンコン…。

「……」

返事がない…これは一体どういうことだろうか?

―まさか、オカマの様なあの顔が悪影響して、教育委員会に訴えられ、学校を辞めさせられたんじゃ…!?


俺は少しオーバーな想像をしたが、

「どうぞ?」

という、声がしたので、

「失礼しま〜す」

と言って、扉を開け、校長室に入った。

―あれ?そういえば、今の声…校長の声じゃなかったような…。


俺はそんな疑問を抱きながら扉を閉めると、そこにはいつもならそこにいる校長の姿がなく、

ふかふかの黒い椅子があるだけだった…。

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