小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「あれ?何処にもいない…っかしいな、確かにさっき声がしたと思ったんだが…」

俺は目で辺りを見回したが、何処にもそれらしき姿はない…。

―やはり、聞き間違えたんだろうか?


俺はそう思って、ルリ達と一緒に校長室を出て行こうとすると

「こっちですよ?」

という今度は別の声が聞こえてきた。

「何処にいるんですか?」

「隣の部屋です…」

―隣の部屋?

俺はよく部屋を見回すと、なるほど確かに、扉が開けっ放し状態の部屋を見つけた。

俺はルリ達と顔を見合わせ首を傾げながら、その部屋に入って行った。

しかし、やはり何処にもそれらしき姿は見えない。俺は狐か狸に化かされているのかと思ったが、

どうやらそれは違ったようだ。

「ここよ、ここ!!」

俺は声のする方に近づくと、そこは理事長もとい…学園長のデスクだった…。

おそるおそるそこを覗くと、そこには必死にデスクに手を伸ばし、座った状態で、

床に足をつけようとしている小柄な少女の姿があった。

「君、ここで何してるの?」

「なっ、誰が君ですって!?私はこう見えても二十歳よ二十歳!!」

「えっ、君が…二十歳?そ、そんな馬鹿な…!」

「ふんっ、失礼しちゃう…!」

彼女は怒ってプイッとそっぽを向いた。

「あれっ?でも、そこの席は学園長の…」

「何言ってるの?私が学園長でしょ?」

「えぇ〜っ!?学園長って、もうちょっと年のとった感じの人だったような…」

俺は頬を少しかきながら、昔の思い出を振り返った。

「はぁ〜っ、これだから今時の子供は…」

―自分も子供だろ!っていうのはおいといて…まさか、この子がおっと…。

この人がこの光影学園の学園長だったなんて…。一体いつの間に、変わったんだ?全然気がつかなかった…。


その時俺はあることを思い出した。

「あっそうだ!なぁ…おっと、あの〜校長先生は何処に行ったんですか?」

「ああ…あのおっさんなら…こっち!着いてきて…」

俺は学園長の後をついていった。すると、そこはさっき俺達が入ってきた校長室の、

入口の右側にあるロッカーの目の前だった。

「えっ、まさかここに校長がいるの…じゃなくているんですか?」

「そうよ…。疑うなら開けてみなさい?」

「は、はぁ…」

俺はゴクリと息を呑み、ガチャッとロッカーの扉を開けた。すると、そこから校長が海老反りの状態で、

縄にしばられたまま出てきた。

「きゃぁあ〜!!」

その異様な姿に驚き悲鳴を上げるルリ達…。

「こ、校長…先生何やってるんですか?」

「むぐ、ムググ…!!!」

俺は校長が、何を言っているのかは理解出来なかったが、

とにかく解いてと言っているようには見えたので解いてあげた。

「はぁ〜…ありがとう、神童君…」

はぁはぁと息を乱しながら、呼吸を整えようとする校長…。一体何があったというのか?

「どうして、あんなことになっていたんですか?」

「ええ…それは…あなた達の来る少し前の出来事だったわ…」

校長はそう言って過去を振り返った。





「それは私がコーヒーを飲もうと、職員室に向かった時のことだったわ…。

(ふふふ〜ん♪今日のコーヒーは割といい出来だわ!!)

そうそしてその時…、

(きゃぁあ!!)

(なっ!?)

私は、何故か私の部屋にいた学園長とぶつかった…。しかも、それと同時に…バシャァア!!

(ギッ、ギャァアアア!!!せっかくの服が台無しじゃないの〜!!しかも、

今日のコーヒーは割りといい出来だったのに…キ〜ッ!!どうしてくれるのよ、このお転婆娘!!
)

(ふんっ!よそみしてたそっちが悪いんでしょ、このオッサン!!)

(なななな、何ですって〜!!!?)

私は珍しく、その怒りが頂点に達して、学園長と大喧嘩をしたわ…でも、事件はまさにその時起こった…。

私は今日ハイヒールを履いてきてたんだけど、そのハイヒールが床に偶然落ちていた縄にからまって、

倒れてしまったの…それをチャンスと思ったのか、学園長はそのまま私をぐるぐるまきにして、

このロッカーに閉じ込めたのよ!!」

「って…学園長が犯人じゃないですか!!?」

「あっれ〜?そうだったけ…ごめん…忘れてた!」

「こんの小娘〜!調子に乗ってんじゃないわよ?ごめん…とか、ぶりっ子みたいなことしてたら、

可愛いとか思われるとか、思ってたら大間違いよ!!!」

「な、何…わ、訳の分からないこと言ってんのよ!!そ…そっちこそ、馴れてないくせにわざとらしく、

高いハイヒールなんか、はいてくるから悪いのよ!!! 」

校長室に響き渡る二人の言い争いの声…。

「あの〜すみません…」

「「うっさい!!ちょっと黙ってて!!!」」

「はいっ!!」

―何で、俺が怒られないといけないんだ?


俺は訳が分からないといった感じで、後ろに一歩下がった。





そうこうして三十分が経過した。

「はぁはぁ…どうやら、これ以上やっても意味無いようね…」

「そのようね…」

どうやら、言い争いもようやく幕を閉じたようだ。

「また、次の機会に決着つけましょ!」

「そうね…」

その一言だけ残し、学園長は自分の部屋に戻っていった。

「ふぅ…事が、わりと早くおさまってよかったです…それで、校長先生あの話があってきたんですけど?」

「ああ…そうだったわね?何の用なの?」

「はい…こいつらがテスト全部終わったので、点数をつけてもらおうと…」

「ああ、そうだったわね!!嶋鳴先生!!」

「はい…」

相変わらずパシリの様に、こきつかわれる嶋鳴教頭先生…哀れだ。教頭はメガネをカチャッと上げ、

校長の手からテスト用紙の紙の束を受け取ると、それを腕に挟み、職員室に向かった。

「すぐに、済むと思うから、その間待ってなさい…」

「はい…あっ、そういえば校長先生、さっきの学園長って…?」

「ああ…あの子ね…あの子は、新しく入った学園長で『三堂 美優希』っていうのよ…。

何でも昔から、あのくらいの身長で、全然背が伸びないことが悩みだったみたいだけど…あれで、

おとなしかったら、少しは可愛げがあるってもんなんだけど…あの性格だから…」

「はぁ…」

俺は学園長のことについて少しだけ知ることが出来た。にしても、世の中さっきみたいに、

年齢に似合わずに身長が伸びない人もいるんだということが理解できた。すると、教頭が扉を勢いよく開け、

血相を変えて戻ってきた。

「こここ、校長!」

「何よ、騒々しいわね…何があったの?」

「これを見てください…」

教頭は額から溢れる汗を、白いハンカチで拭いながら、校長に片手で手渡した。

「こ、これは!」

「ど、どうですか?」

「…信じられないわ、殆どのメンバーが満点だなんて…」

「!?」

俺は驚いた。

―満点?


昨日も聞いてはいたが、この学園のトップ5ですら、五百点に行くか行かないかの点数だったというのに、

満点も行くなんて…満点ということは、文句なしの1000点…。

―まぁ、確かに偏差値が80以上あれば、ムリもないか…。


俺は自分で、自分を納得させた。しかし、一つ引っかかる点があった。

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