小説『魔界の少女【完結】』
作者:YossiDragon()

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「では、次の方…自己紹介を…」

「え〜、今日からこの一年二組に入る事になった『水蓮寺 霄』だ!これから…よろしく頼む!」

―ふぅ〜、どうやら霄は普通の自己紹介だけみたい…―。


「ちなみに、響史の従姉妹でもある…」

―!!!? ななな…何でんなことをここでComing out!!!しねぇといけないんだよ!!!


「し…神童〜!!!?」

男子生徒の更なる怒りの視線…今にも、怒りのパラメーターを突き破り、怒りの火山が、

大爆発を起こしそうな気さえする…。

「いやいや…落ち着こうぜ?」

「では…次」

ついに、先生も呆れて咳払いさえしてくれなくなった。

「えっと…『水蓮寺 霊』です…よろしく…お願い、します…」

いつもと違い元気のない霊…。

―緊張でもしているのだろうか?


すると、突然亮太郎が鼻血を噴き出した。

「ブハ〜ッ!!?」

バタッ!!

「先生、大変です…藍川君が…鼻血で気絶しました…」

「あっ、そうですか……誰か保健室に連れて行ってください…」

相変わらずの冷静さに、俺は一瞬先生を尊敬してしまった。

「じゃあ、続きお願いしますか…」

―えっ、そこスルーなの?

「え〜と、『水蓮寺 霰』……です…よろしくお願いします」

―あれ?霰も少しいつもと違う…やはり、皆緊張しているんだな……あれ?いや、待て…よく見ると、

何度も何度も霰、霊をチラ見してる?一体、どういうことだ?まぁ、いい…。

これで、自己紹介も終わったし…。大丈夫だろう…。


と、その時…。

「え〜、彼女達は全員…神童君の従姉妹ですが…―」

―下倉〜!!!?よけいなこと言ってんじゃねぇ〜!!!?(怒)


俺は突然、下倉があいつら全員と従姉妹だということをバラしたことに驚きながら怒っていた。

しかも、その近くで霄が少し

「ふふっ!」

と笑っている…。

―笑ってんじゃねぇ〜!


「じゃあ…今度はクラスの皆を転校生の皆に知ってもらうために、我々が自己紹介をしましょう!!」

―うえぇええ〜!!?下倉、てめぇ何口走ってんの?いやいや、訳わかんないんだけど!!

そんな面倒なことすんなよ〜!!


俺が心の中で言いたい放題思ったことを叫んでいると、チャイムの音が教室内に鳴り響いた。

―やった、終わった…!よかった…これで、自己紹介をしなくて済む……たすかっ…―


「え〜、朝の会が終わってしまいましたが、偶然にも次の一時間目は、私の授業なので、

その時間に自己紹介を行いましょう!!」

―し〜も〜く〜ら〜!!!?てめぇ何してんだ〜!!!?普段なら喜ぶ所だが、よりにもよって、

かわりに入る授業が自己紹介って…てめぇ、ふざけんじゃねぇぞ!?そんなに自己紹介がやりたいのか?


しかし、俺一人以外皆は凄く喜んでいる。皆はどうやら俺の『自己紹介よりも授業がいい』という選択肢では

なく、『授業よりも自己紹介がいい』の選択肢を選ぶようだ…。

―こうなったら、なるべく他の奴らに時間を稼いでもらって、俺のターンに来る前に、

一時間目を終わらせる作戦でいくしかない!だが、上手く行くか?いや、ここはもう皆を信じるしかない!

問題はあいつらが、どの席に座るかと、どの席から始まるかだ!なるべくなら、

一番席が遠いあいつ(名前を覚えていない)から始めて欲しいんだが…。


そして、五分間の休みが始まった。

すると、突然下倉が俺の近くにやってきて言った。

「とりあえず、彼女達ですが、神童君の近くが一番いいだろうという考えになりましたので、

あなたの周りに彼女達を座らせることにしました…」

―何でだ〜!!!?てめぇ、どんだけ俺を面倒なことに巻き込ませたいんだ〜!!

「まぁ、という訳ですので…」

下倉はそう言って、俺の斜め前や前後左右の席に元々座っていた生徒に話をしていた。

―だが、そう上手くいくわけないよな…。


などと心の中で思いながら、俺はその他の生徒の反応を見ていた。すると、ななななんと、

その生徒達が笑顔でOKマークをしているではないか!?

―お前等グルか〜!! まずい、さっきから俺の思い通りではないことばっかり起こっている。





そして、一時間目の始まり…俺はこれを地獄の始まりと呼ぶ…。

何せ、これから始まるのはまさしくその地獄なのだから…。

「では、今から一時間目を始めます…学級委員長、挨拶を…」

そう言って、下倉の言葉に反応して、学級委員長が一時間目の授業の挨拶の言葉をかけ始めた。

ちなみに、学級委員長は雛下である…。

「今から一時間目の授業を始めます、礼…お願いします!!」雛下にあわせて皆が礼をする。

「え〜っと、ではまず誰から自己紹介を始めましょうか!」

下倉の言葉に俺のさっき言っていた奴が俺の心を読んだのか、声を張り上げて挙手をした。

俺は一瞬やったと思ったが、そう上手くもいかなかった。

「そうですね…じゃあ、角の席に座っている四人で、ジャンケンをして決めましょうか!」

―おいいいいい!!!既に、手を上げてるやついるだろうが!!なのに、何故わざわざジャンケンで決めんだよ!?

完全に俺に対する嫌がらせとしか思えねぇだろうが!!…まぁ仕方ない…ここは何としてでも、

あいつに勝ってもらうしか…。


俺は両手を組み、わらにもすがる思いで願い続けた。


そして、ジャンケンの結果……。

「くっそ〜、負けちまったぜ!!」

―何だと〜!?予想外の展開。このままでは、俺の自己紹介の順番まであっという間じゃねぇか…。

こうなったら他の奴らに、なるべく長く紹介してもらうしか…ねぇか。


俺はいちかばちかの賭けに出る事にした。さっそく一人目…。

「僕の名前は…―」

―頼む!何でもいいから時間を稼いでくれ!


「―…です」

「では、次の人自己紹介お願いします…」

―ええ〜っ!?自分の名前言うだけで終わり!?どういうことだ…どうして、名前だけで終わるんだよ!

ん?あれ、あいつ今俺の方見て…。


グッ!!

彼は急に片手でグーを作ると、親指を立て満面の笑みで俺を見た。

―何なんだ!その親指は!?何かよく分かんねぇけど、イラッとくるんだけど!!?


その後も次々と生徒が自己紹介をしていったが、どいつもこいつも何故か俺の方を見て、

イチイチあのイラッとくる親指を突き出してくる。一体あの親指は何を指しているのか?

俺にはさっぱりだった。そして、だんだんと亮太郎の席に近づいてきた。しかし、今あいつはいない。

―くっそ〜、どうすりゃいいんだ?ただでさえ、他の奴らの紹介が短いのに、ここでさらに、

一人人数が少ないと俺の順番まであっという間じゃねぇか!!頼む…亮太郎戻ってきてくれ!!

カ〜ムバ〜ック!!!


すると、俺の心の叫び声が聞こえたのか、亮太郎が声を荒げて扉を勢いよく開け放ち、教室に入ってきた。

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