第五話『閣下がご乱心・・・でもなかった』
急遽ヒエイを呼び、ガレット領に飛んでもらった。 ジェットコースターより速いから慣れるのにはちと時間が掛かったが、慣れると楽しいもんだよ
「それにしても、随分盛り上がっているな・・・」
「そうですね、キリュウさん」
ん?後方から聴いたことのある声が・・・もしや
そう思い後ろを振り向くと、近衛隊長を兼任しているビオレ・アマレット が立っていた
「ビオレさんか。どうしたんですか?」
「レオ様の所に未だに来ないので、探しにきたんですよ!」
少し怒った口調で話す。すんません、怖さが微塵も感じません・・・
「ハハッ、すいません今行きますよ。 そしてどうもです」
軽く微笑み、城のある方向に走り出した
「・・・あの笑顔は反則です///」
近衛隊長とは言え、プライベートでは一人の恋する女性であった
◆
「レオ、怒ってなきゃいいが・・・」
何せチェイニーから渡された手紙の裏に、【戦が終わり次第、私の元にくるように】 と書かれてたが、随分と遅れてしまった
「つっても、何故に呼び出しをくらったんだ?」
そんなことを考えていると向こうから見知った顔がこちらに向かってきた
「兄貴、遅いぞ!」
「ん?ガウルか、どうしたこんな所で」
ガレットの王子でありレオンミシェリの弟であるガウル・ガレット・デ・ロワが走ってきた
「いや、姉上が星詠みの場所に兄貴を呼んでこいって言われて来たんだけど・・・姉上の様子が少し暗かった気がするけど、何か心当たりあるか?」
「いや、特に・・・?」
少し前に会ったが、そんな雰囲気はなかったが・・・何があったんだ?
「分かった、とりあえず星詠みの部屋に行ってみる」
「兄貴、姉上を頼む」
ガウルの言葉を背に、走り出した
◇
「ふ〜ん、星詠みでそんなことがね・・・」
静寂とした部屋に、俺の声が響き渡る
「ああ、儂はどんな手を使ってもこの事態を回避してみせる・・・」
星詠みで出た内容は、ビスコッティの勇者シンクとミルヒオーレが30日以内に確実に死亡、その運命は絶対に回避できない そういう内容だった
レオはそう強がってみせたもの、その声には覇気がにも感じられなかった
「・・・お前はさ、一人で何もかも抱え込みすぎなんだよ・・・お前の周りにいる奴らが信じられねぇか?」
「・・・そんなとはない。皆、よくやってくれている」
「今回みたいな権は別だが、普段はガウルやビオレさんなどの部下を頼る事!いいな」
軽く微笑み、レオを優しく抱擁し、銀の長く綺麗な髪を撫でる
「星詠みの権は俺に任せろ、お前は今まで通りに戦なり何なりしてろ・・・その代り、暫くは戦に参加は出来ない。そこのところを考慮してくれ」
「・・・ありがとう///」
妙に顔を赤らめ俺の服に顔を埋めながら呟いた。うん、可愛いし素直でよろしい
「んじゃ、俺は帰って色々準備としますかね・・・」
とりあえず、情報収集やら原因やら・・・やることはたくさんあるなぁ〜
◆
「と、ああは言ったものの・・・どれから手を着ければよいのやら」
ガレット領で行われている宴をそっちのけで、夜歩くには危険な森の中を考えごとをしながら歩く
「原因、魔物なのか、はたまた人物なのか・・・後者の確率は低いな。となれば、魔物か・・・厄介なものが来たな・・・ワウ!?」
考えながら歩いていると、目の前に柔らかく暖かい毛皮のようなものにぶつかった
(ん?なんやオマエ?)
なんと言うことでしょう、目つきの悪い熊がこちらを睨んでいるではありませんか! しかも関西弁で
「え〜と、キリュウ・キサラギと申します・・・では!」
脱兎の如く逃げようとするがーー
(おお、おかんのセンセーが言っとった人か! ちょいと待ちいな、おかん所連れてくから)
「・・・ア〜レ〜?」
素早く首根っこを掴まれ、ズルズルと熊に引きずられていった
◆
(ほ〜う、これがセンセーのねぇ・・・なかなかいい趣味しとるなぁ、センセーは)
「え〜と、センセーって誰、そしてアンタはなぜ俺を知ってんの!?」
外見は先程の熊とはそれほど変わらないが、頭に花の飾りを付けた大熊がいた
(ん?そりゃ聞くのは無粋ってもんよ)
手を振り、近所のオバハンらしいポーズを取った
「って、んなことはどうでもいい。アンタ、ここ最近魔物関係に変化があったりしたか?知っている限りでいい、頼む、教えてくれ」
これは大袈裟に言うとフロニャルド全土に関わることだ。 それを天秤にかけるならプライドやこの命だって捨てる覚悟はある
(センセーのお人やし、まぁええか・・・いくらか前にどっかの土地神が暴れたって話を聞いた。 原因は不明、しかもその土地神が失踪らしい・・・・・・風の噂なんやけど、どうやら妖刀が絡んでるらしいで)
妖刀・・・殆ど封印したと思っていたが、未だ残っているとは・・・万が一、それが土地神に刺さっているとなれば・・・一筋縄ではいかんな
「そか・・・ありがとう、後で酒持ってくるから、一緒に飲もうな!」
(その前に、カタをつけてからな〜 楽しみにして待っとるよ〜)
おかんの熊が手を振る姿を確認し、走り出した
◆
「土地神、失踪、それに妖刀・・・情報は聞けたが、整理すんのは難しいな・・・」
おかんの熊からは聞き出せたが、まだ確定するには量が少ない・・・よし!
「気分転換に明日、勇者の所行ってこよ!」
煮詰まったときは気分転換、ついでに勇者と手合わせしてみたいしな・・・