ようやく、会えたね、でも…………
「さて、準備も整ったし、行くか?」
俺の問いかけに三者三様の返事帰ってきて、俺たちはそのお化けが出るという森に向かった。
サイトSIDE
そうか、ユイか……
でももう一人の子は一体だれなんだ……?
俺の知る原作では、ユイしかいないし、そもそもアスハだって存在していない。
やっぱり、イレギュラーな存在てある俺のせいで……
本来の歴史とは別の方向に……
ふと、思い出した、
そういえば神の奴が言ってたな……
「この世界はソードアートオンラインであって、そうでない。歴史は些細なことで変わる。それはすべてあなたの行動次第……((微笑み」とかなんとか、その時は気にしていなかったが、今になってその意味がわかった気がする。
だんだんと自分の知らない方向に歴史が進んでいることを……
表情を曇らせながら歩いていると、
「………イト君、サイト君…?」
「ああ。アスハか、どうかしたか?」
まだ、目的の森までもうすこし距離があった。俺たちはハイキングも兼ねて向かっていた。
「もう!どうかした?じゃないわよ!さっきから表情曇らせてなに考えてたのよ?」
「い、いや、なんでも、ない。大丈夫だ。」
「ほんと、なの?」
「ああ。心配かけてすまない。さあ、行こうぜ。」
そういって、俺はアスハをお姫様抱っこして走り出した。
「ちょっ、え〜〜〜〜〜////」
今はまだ、このままでいい……今はまだ……
いつか、話そう……真実を……
サイトSIDEOUT
あれからしばらくして、11時前に森に到着した。
「さーてと、お化け探しといきますか!」
「「お、お化けとか、言わないで‼」
と女性陣から猛反発を受けてしまった……
「しかし、探すといってもどこを探すんだ?」
「まあ、しらみつぶしに探すしかないだろうな…」
「そうね、せめてもの救いがこの辺りにはモンスター
もあまり姿を表せないし、プレイヤーも滅多にこないからね。」
「だな。索敵スキルをフルに使えばなんとかなるかもしれないな、念のために武器だけ装備しておこう。」
それぞれ、愛刀をストレージからとりだし装備した。
いつなに起こるか分からないこの世界で死んだら即ゲームオーバーなので用心に越したことにないというのが4人の結論だ。
〜しばらくして〜
「み、みんな……あそこ。」
アスナが掠れた声で呟いた。
その声に俺、キリト、アスハが駆け寄っていく…
少女たちは動かない。
私たちから数m離れた場所に立ち、じっとこちらを見ていた。
すると2人の体が、ふらりとゆれる。
ネジのきれた人形のように、地面に崩れ落ちていく。それをアスナは手を延ばして受け止めた。
キリトたちが駆けて来る。
『……この子たちは幽霊じゃないぞ、キリト。』
「みたいだな……」
とうやらキリトにもこの子たちが、幽霊ではないことはとっくに気づいているらしい。
「「だ、大丈夫なの?」」
2人の姉妹が揃って心配する声が聞こえた
「うーん……たぶん……」
サイトは口を濁らせた……
「消滅してないってことは、命に別状はないと思うけど……」
「ああ。だが、これは……相当妙だぞ……」
「妙って?」
『アスハ。この子たちは幽霊ではないよ。こうして触れるからな。
ーーただ、気づかないか?さっきからこの子たちカーソルが出ていないんだ……』
「あ……。」
アスハも気付いたようで、思わず声が漏れた。
「何かのバクだと思うか?」
キリトがサイトを見る。
「そうだろうね。普通ならGMを呼ばなきゃいけないだろうけど、此処にはそれが居ないし。
それに変なのはカーソルだけじゃない。
プレイヤーにしてはこの子たちはちょっと若すぎる。ナーヴギアは13歳以下の子供の使用は禁じられて居るはずだからな。」
アスナはそっと手を延ばし、少年の額に触れた。
「どうして……こんな小さな子が、SAOの中に……」
『アスナ達は……女の子の方をお願いできるか?』
こくりと頷いたアスナに俺は女の子を預け、男の子をアスハに預けた。
『取り敢えず、このまま放ってはおけない。
目を覚ませば色々判るだろうし、このまま家まで連れて帰らないかい?念のため護衛は俺とキリトがやる。」
「ああ、そうだな……そうしたほうがいい。」
キリトは小さく頷き、辺りに子供たちの持ち物が落ちてないかを確認すると、俺たちはほとんど駆け足で来た道を戻った。
森を抜け、家に辿り着いても子供たちの意識は戻らず、アスハとアスナは俺たちの寝室に2人を横たえ、毛布を掛けた。
4人は向かい側のソファに腰掛ける。
しばし沈黙が周囲を包み、しばらくすると、キリトがほつりと口を開いた。
「まず、1つでけ確かなのは、此処まで移動できたんだから、NPCじゃないってことだよな。」
『そう、だな……』
NPCは存在出来る範囲があらかじめ決められており、プレイヤーの意思で移動させることが出来ない。
手で触れたり、抱きついたりした場合、ほんの数秒でハラスメント警告の窓が開き、吹き飛ばされるのだ。
「それに、何らかのクエスト開始イベントでもないね。
もしそうなら、接触した時点でクエストのログ窓が更新される筈だ。」
『……だとすれば、この子たちはやはりプレイヤーで、迷子。ってことだね。』
この子たちは、プレイヤーでもNPCでもない。
「クリスタルを持っていない、あるいは転移の方法を知らないとしたら、ログインしてから今までずっと、はじまりの街にいたと思うのよね。
なんでこんなところまで来たのかは判らないけど、はじまりの街にならこの子たちのことを知ってるプレイヤーがいるんじゃないかな?例えば……親とか、保護者みたいな。」
『確かに、俺もそう思うよ。こんなに小さい子供たちが1人でログインするなんて考えられないからね。家族か誰か一緒に来てるはずだよ。
……まぁ、無事かどうかは判らないけど、ね……』
不安を覚えたのか、アスナがキリトを見た。
「ね、意識、戻るよね。」
「ああ。まだ消えてないって事は、ナーヴギアとの間に信号のやり取りはあるってことだからな。
睡眠状態に近いと思う。
だから、きっと近い内に目を覚ます。」
キリトはアスナの頭を撫でながら不安そうな彼女を諭した。
「それにしてもこの子たちは……10歳はいってないよな……。8歳くらいか。」
『それくらいだろうな。年齢からしてもやはり妙だな……』
「まあこれ以上話してもらちがあかなさそうなので
俺たちもお昼にしよう。この子たちが目を覚ましたら事情を聞くことにして。」
昼食を食べ終わり、夕日が沈む時間になっても、子供たちは目を覚まさなかった。
リビングのカーテンを引き、アスナとアスハは壁にかけられたランプを灯していると、村まで出かけていたサイトたちが戻ってきた。2人は無言で首を振り、子供たちに関する手がかりはなかったことを告げる。
仕方がないので俺たちは夕食を取ることにした……。普段なら賑やかで楽しいはずの夕食が今日はそうではなかった……
俺たちは手早く食事を終え、俺とキリトが買ってきた情報誌に目を通した。
そう、この子たちに関する情報がなにかないか探したのである。
もしかしたら、この子たちの親や兄弟が子どもたちの行方を探すために………
しかし、手がかりはなに一つ見つからなかった………
しばらくして、何度も見返したがそれでも、やはり見つからなかった……
夜もふけってきた……
4人は今日はここまでにして、就寝することにした。
「アスハ、そのベットに2人はキツイでしょ?女の子のほうは、私たちのほうで預かるわ。」
「うん…。お願い……」
アスハは子どもたちが目を覚まさないのが心配なのか、声にいつもの元気がない。
「大丈夫だ。明日になればきっと目を覚ますよ。きっと……」
そういって、サイトも男の子を抱えアスハとともに寝室に入っていった………