幼い子ども
〜翌朝〜
朝の日差しがサイトの顔に差し込んできて、艶やかなメロディーが流れる。
起床のアラームだ。
そして、そのメロディーに合わせて、微かなハミングが聞こえてきた、
俺は意識を覚醒させて、そのハミングの聞こえるほうを見てみると、俺とアスハのあいだで寝ていた男の子が目を覚まし、俺の目覚ましにあわせて一拍のズレもないハミングを奏でていた。
まあ、こうなることは予想できていたのでそこまで驚かない。
一応アスハにも、伝えたほうがいいと思い、アスハを起こした。
「おい、アスハ。」
アスハを揺らしながら起こすと眠そうなまぶたをこすった。
「おはよ〜う。サイト君。どうしたのこんな早くに?」
普段サイトはアスハより早く起きてみんなの朝食をつくっているのである。
なのでアスハを起こすことはまずない。
「いや、だって見てみろよ。」
そう言われアスハが横を見ると昨日連れてきた男の子が目を覚ましなにやらハミングを奏でているのが分かる。
「これって、いったい……?」
「さあ…。俺にもよくわからない。それにこのハミングは驚くことに俺のアラームに一拍のズレもなく奏でられているんだ。」
「うそ……。普通アラームって人には聞こえないはずじゃ…」
「だから、なおさら不思議なんだよ。」
2人が夢中になって会話をしていると男の子が不思議そうにこっちを見つめていて、始めて男の子に気がついた。
「ご、ごめん。君、自分の、名前言える?」
「な…まえ……レイ……。」
「レイ……君かぁ。どこから来たの?お父さんはお母さんは?」
「…わから……ない。わから、ない」
「そうか、とにかくレイって呼んでもいいか?」
「うん………。」
「よし!レイ、俺はサイト。こっちはアスハだ。分かるか?」
「……ちゃ…い…と…、あ……う…は…」
「う〜む、言いにくそうだな…….、俺たちのことは、好きに呼んでくれ。アスハ、構わないよな?」
「ええ。私は構わないわよ。」
「ちゃ…い…と…は、パパ。あうははママ。」
それを聞いた瞬間アスハは涙を堪えながらレイに抱きついた。
「そうだよ!ママだよ!」
こういったところは姉妹似ているんだな、とサイトは半ば感心していた。
などと、サイトが1人で思っているとアスハが部屋を出て行こうとした。
「アスハ、どうするんだ?」
「どうって、とりあえずこの子にご飯作ってあげるのよ。」
「ア、アスハが?!」
声を裏返しサイトは言った。
無理もない、アスハも料理スキルをあげているとはいえ、結婚してからはサイトが料理を担当していたから
「いーの!私がやるの!」
「そ、そうか、ならたのむ。」
リビングに行くと、キリトたちも起きてきた。どうやら少女のほうもレイと同じことらしい。
少女の名前はユイ。
今日の朝食はアスハとアスナが作ってくれた。
ちなみにメニューは原作と同じだ。
子どもたちにはフルーツタルトを焼いたのだが…
「ユイも…パパと、同じが…いい。」
「レイも……」
「これはな、とてもから〜いんだぞ。」
「それでもいいんなら、俺は止めない。何事も経験だからな。なあキリト?」
「ああ。そのとおりだ。」
そういって、おれたちはユイとレイにマスタードたっぷりのサンドイッチを渡した。
2人は一個ずつ受け取って、ジーと見てからかぷりとかぶりついた。
一口飲み込んで、
「おい、しい。」
「か、からい、」
ユイは笑顔にレイは涙目になった。
サイトはレイをよしよしとだいてやり、フルーツタルトを一緒に食べよーなと言ってやると、笑顔になった。
ユイのほうはキリトに根性のあるやつだ、と頭を撫でられていた。まあ調子に乗って夜は激辛フルコースにとか言ってたらアスナにそんなのつくんないからねと釘をさされていた。
6人でいつより賑やかな朝食を取り、すこしの間だが本当の家族のようになった。
食事を終えて、肝心の話題に入った。
「これからどうする?」
「そうだな、とりあえず第一層、はじまりの町にいってこの子のことを知っている人を探そう。あてはあまりないが、なにもしないよりましだろう。」
「そう、ね。そうしましょう。」
「私もそれでいいわ」
キリト、サイト、アスハ、アスナの順に意見をいい、結論がでた。
「あそこは、今や軍のテリトリーだ、全員念のため武器を頼む。」
「「「わかった((わ))」」」
俺たちは装備を整えといってもアイテムストレージに格納しただけなのだが……
「「さて、2人ともお出かけするわよ。」」
「おで、かけ……?」
「そうよ、ユイとレイのお友達を探しに行こうね!」
「と…もだち?」
「そうよ、こうやって、手を振ってごらん、 」
アスナはお手本を見せるように、右手を振った。
しかし、2人のウィンドウは開かない……
「……やっぱり、何かシステムがバグってるね。」
「だが、ステータスを開けないってのは致命的過ぎるぞ……。これじゃ、何もできない。」
「そうだ、今度は左手でやってごらん。」
「サイト、ウィンドウは右手でだすんだぞ。そんなことも覚えてないのか?」
キリトが若干馬鹿にしながら、言うが俺はそれを聞き流し子供たちにうながした。
すると、途端に手の下に紫に光るウインドウが表示される。
「でた!」
「でたよ、ママ!」
「なっ?だから言ったろ?試してみろって…」
俺はしてやったりといった顔でキリトをみながら言った。
そして、俺はウィンドウが表示されて、喜んでいる子どもたちの頭を撫でてやる。
「えらいぞ!悪いけど2人のウィンドウみせてくれないかな?」
そういって俺は子供たちに可視化ボタンの場所を教えてウィンドウを覗き込んだ。
俺は知っていたが、3人はあっけに取られていた。
「な……なにこれ!?」
アスナが驚きの声をあげて、キリトとアスハも驚きの表情を隠せないようだ。
2人のウインドウにはHPバーもEXPバーも、レベル表示すら存在せず、僅かに存在するのはとと名前だけだった。
ユイの方には
レイの方には
とウインドウの最上部に書いてある。
装備フィギュアはあるものの、コマンドボタンは通常に比べて大幅に少なかった。
子供たちはウインドウの異常など居に介していないようで、不思議そうに大人組を見上げている。
「これも……システムのバグなのかな……?」
「何だか……バクというよりは、元々こういうデザインのようにも見えるけど……。」
「くそ、今日くらいGMが居ないのを歯痒く思ったことはないぜ。」
『まあ、ないものを今考えてもしょうがないだろう?
優先すべきは先ず、この子たちに服を着させることだ。』
そう今外出のために子供たちに服を着せようとしていた。
〜20分後〜
レイはアスハに、ユイはアスナによって着替えさせられて、すっかり装いを改めていた。
「さて、行こうか、」
「パパ…抱っこ……」
屈託のない眩しい笑顔でユイはキリトにお願いした。
キリトは少し照れながらもユイを持ち上げて抱っこした。
レイがその様子を羨ましそうな瞳で見ていたのに、気づき俺もレイに声をかけた
「レイおいで。」
レイは顔は花が咲いたように明るくなり、サイトに駆け寄って行った。
「レイは男の子だから、抱っこより肩車の方がいいかな?」
サイトの問いかけにうん!と満面の笑みで答えてくれた。
その姿にアスナもアスハも思わず顔をほころばせた。
転移門に到着し、俺たちは久しぶりにアインクラッド第1層はじまりのまちにおりたったのであった……