小説『ソードアートオンライン~1人の転生者』
作者:saito()

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21

光の発生とともに、俺たちはアインクラッド第1層
始まりの町に降りた立った。

この町に来るのは本当に久しぶりだ……
そして、いろいろな思い出もある。

サイトがアスハと出会ったのもこの町だ。

「さて、2人とも見たことある建物とかある?」

「うー……」
「んー……」

2人は難しい顔で広場や周囲に連なる石造りの建造物を眺めていたが、やがて首を横に振った。

「わかん、ない………」
「ぼくも………………」

「まあ、はじまりの街はおそろしく広いからな。」

「色んなものも沢山あるしね。」

2人は子供たちの頭を撫でながら呟いた。

『あちこち歩いていればそのうち思い出すさ。ゆっくり気長に行こう。』

「確かに。焦っても仕方ないしな。」

「そうね。とりあえず、中央市場に行ってみましょ。」

「そうだね。何か手がかりがあるかもしれないし。」

俺たちは頷き合い、南に見える大通りに向かった。


それにしても……以前より人が少なくなってやしないか?

はじまりの街のゲート広場は、2年前の正式サービス時、1万人を収容する程の広さを誇っていた。

それにここは案外綺麗で、こんな天気のいい午後には人で賑わっていてもおかしくはないのに。

見える人影は皆一様にゲートか、広場の出口に向かって移動して行くばかりで、立ち止まって話したり、ベンチを利用しているものはほとんどいないと言っていいだろう。

他の層にある街はもっと賑わっていたはずなんだが。

『なあ、キリト。』

「ん?どうしたサイト?」


『ここってプレイヤーは何人くらい居るか覚えてるか?』

「確か……2千人弱ってとこじゃないか。

今生き残ってるのが、約6千だろ?その中の3割くらいが(軍を含めて)はじまりの街に残ってるはずだからな。」

『……その割には人が少なくないか?』

「言われてみると……そうだな。」

「もしかしてマーケットの方に集まってるんじゃないか?」


しかし、広場から大通りに入り、店舗と屋台が立ち並ぶ市場エリアに差し掛かっても、依然として人は増えず、街は閑散としていた。

やたらと元気のいいNPC商人の呼び込む声だけが通りを虚しく響き渡っていく。

しばらく歩いて、大きな木があるところに出た。そこで1人のプレイヤーを見つけたのだ。

キリトが声をかけたが、男は話すのが面倒そうな趣で口を開いた。

「なんだよ。」

「なあ、この辺りで迷子を探しているプレイヤーはいなかったか?それか、迷子に関する情報の得られる施設でもなんでもいい、知っていたら教えてくれ。」

キリトは、淡々と述べた、が男はなにやら集中していたところを邪魔された上、キリトの訪ね方がよくなかったのか男は顔色を悪くした。

まずいと、思ったサイトが割ってはいりどうにかその場を取り繕おうと男に話しかけた。

「先ほどのご無礼は申し訳ありません。実は自分たちはこの子たちを見つけたのですが、どうにも不可思議な点が多くて……それで親か兄弟などを探し求めてここに参ったしだいなのです。」

サイトの突然の執事口調に全員が目を丸くした。

サイトの丁寧な対応に機嫌を直したのか、男は知っていることを教えてくれた。

「迷子か、珍しいな。その子に関係するかどうかはわからないが、この先の川辺の教会に子供のプレイヤーがたくさんいるところがあるから行ってみな。」

「どうもありがとうございます。これはほんの気持ちです。」

サイトはそういって1万コルほど入った革袋を男に手渡した。

3人はサイトの交渉術に相変わらず目を丸くしていた。

男と離れたところで、3人が話しかけてきた。

「ちょっとあれは一体なんなの?」

「そうよ、なんか交渉術でもみにつけてるの?!」

そう、この世界には商人が身につけているスキルの中に交渉スキルというのがある。これは熟練度があがるにつれてNPCやプレイヤーの時に有利に取引ができるというのだ、しかし商人の絶対数が少ないのと、スキル自体の知名度が低いのもあって見につけいる人はほとんどいない。

「いや、俺のはスキルじゃなくて、素でやっただけだ。」

「その割にはすごく様になってたけど?!」

「ま、まあ、それはまた説明するから……今は目的の場所に急ごうぜ。」

「まあ、いいわ。あとできっちり説明してもらいますからね!」

さすがのサイトもアスハには頭が上がらないようた…

ユイと、レイはぽかーんとしてサイトとアスハのやり取り見ていた。

〜15分後〜

しばらく、歩くとそこには綺麗な小川のそばに教会が立っていった。

「ここみたいだな…。」

一向の目の前には小川に沿って立つ、綺麗な教会が目に映る。

扉をガチャリと開けて中に入ったが……なぜか人の気配いない。

辺りを見回して見ると、どうやら隠れているらしい。

索敵スキルによって見破った四人は声をかけた。

すると、奥から1人の女性プレイヤーがやってきた。

「貴方がたは?」

「俺たちは22層からプレイヤーだ。」

「で、では軍の人間では…ないんですね?」

「あ、ああ。軍とは無関係だ。」

ちなみに全て会話をしているサイトだ。

「そ、そうですか、」

サイトたちが軍とは無関係だということが分かったらしく、態度がやさしくなった。


「あ、すいません。こんなところで……奥にどうぞ。」

そういって、サイトたちは教会の奥に案内された。

ユイとレイはすでに眠ってしまっていまっている……

一行は奥の小部屋に案内された。

「こちらにどうぞ。今お茶の準備をしますので。」

「あ、すいません。」

〜5分後〜

女性プレイヤーがお茶を持って席についた。

「さて、って自己紹介がまだでしたね、私はサーシャです。」

「俺はサイト。隣にいるのがアスハ。そしてこの子がレイ。」

「私はアスナ。こっちはキリト君
そしてこの子がユイちゃん。」

お互いに簡単に自己紹介をして、アスナは本題に入った。

『……この子たちは、22層の森の中で迷子になっているのを見つけました。

ーーーただ……』

アスナが小さく俯き言葉を濁すと、キリトがぎゅっとアスナの手を握り、そして、アスハが代わりに口を開いた。

「……記憶を……なくしてるみたいで……」

「まあ……」

サーシャの深緑の瞳が、眼鏡の奥で大きく見開かれる。


「装備も、服以外には何も所持していなくて、上層で暮らしていたとは思えませんでした。

ですから、はじまりの街に保護者……又は、知っている人がいるのではないかと、探しに来たんです。」

『……それで、此方の教会に子供たちが集まって暮らしていると、人から聞いたものですから……』

「そうだったんですか……」

サーシャは両手でカップを包み込むと、視線をテーブルに落とした。

「……この教会には、いま、小学生から中学生くらいの子供たちが20人くらい暮らしています。

多分、現在この街にいる子供プレイヤーのほぼ全員だと思います。

このゲームが始まった時……」

声は細かったが、しっかりした口調で彼女は話し始めた。

「それくらいの子供たちのほとんどは、パニックを起こして多かれ少なかれ精神的に問題を来していました。

勿論ゲームに適応して、街を出て行った子供もいるんですが、それは例外的なことだと思います。」

そういえば、

当時はそんな子供たちも多かったいや子どもだけでなく大人にも現実を受け入れられず、壊れていく……そんな人たちが。

そういえば、2年位前にはじめてアスハに会った時も、無茶な攻略をしていたしな。

サイトはふと昔を回想した。


「当然ですよね、まだまだ親に甘えたい盛りに、いきなりここから出られない、ひょっとしたら二度と現実に戻れない、なんて言われたんですから……。

そんな子供たちは大抵虚脱状態になって、中には何人か……そのまま回線切断してしまった子もいたようです。」

サーシャの口許が強張った。

「私、ゲーム開始から1ヶ月くらいは、ゲームクリアを目指そうと思ってフィールドでレベル上げしてたんですけど……ある日、そんな子供たちの1人を街角で見かけて、どうしても放っておけなくて、連れてきて宿屋で一緒に暮らし始めたんです。

それで、そんな子供たちが他にもいると思ったら居ても立ってもいられなくなって、街中を回っては独りぼっちの子供に声をかけるようなことを始めて。

気付いたら、こんなことになってたんです。

だから、なんだか……あなた方みたいに、上層で戦ってらっしゃる方もいるのに、私はドロップアウトしたのが、申し訳なくて」

「そんなことはない!あなたは…サーシャさんは立派に戦ってる……俺なんかよりも、ずっと。俺たちはただモンスターと戦っているだけだ。しかしあなたは子どもたちを助けその子たちを守ろうとしている。それだけでも、俺たちより立派だ。」

「ありがとうございます。そんな風に言っていただけてうれしいです。

でも、義務感でやってるわけじゃないんですよ。

子供たちと暮らすのはとっても楽しいです。」

ニコリと笑い、サーシャは眠るユイたちを心配そうに見つめた。

「だから……私たち、2年間ずっと、毎日1エリアずつ全ての建物を見て回って、困ってる子供がいないか調べてるんです。

そんな小さい子たちが残されていれば、絶対気付いたはずです。

残念ですけど……はじまりの街で暮らしてた子じゃあ、ないと思います。」

「そうですか。」

アスナはユイをぎゅっと抱きしめた。

そして、気を取り直すように、サーシャを見る。

「あの、立ち入ったことを聞くようですけど、毎日の生活費とか、どうしてるんですか?」

「あ、それは、私の他にも、ここを守ろうとしてくれてる年長の子が何人かいて……彼らは街周辺のフィールドなら絶対大丈夫なレベルになっていますので、食事代くらいはなんとかなっています。

贅沢はできませんけどね」

「へぇ、それは凄いな……。」

「うん。さっき街で話しを聞いたんですけど、フィールドでモンスターを狩るなんて常識外の自殺行為だって言ってました。」


「基本的に、今始まりの街に残ってるプレイヤーは全員そういう考えだと思います。

それが悪いとは言いません、死の危険を考えれば仕方のないことなのかもしれないんですが……。


でも、ですか私たちは相対的に、この街の平均的プレイヤーよりお金を稼いでいることになるんです。」


なるほどな。

この教会に部屋を借りるには1日あたり大体100コルは必要だろう。

さっきあった男の収入を大きく上回る額だ。

それに目を付けた奴がいると。


「だから、最近目を付けられちゃって……」

「……誰に、です?」

アスナが問い掛けると、サーシャの穏やかな眼が一瞬厳しくなった。

言葉を続けようと口を開いた、その時ーー。



「先生!サーシャ先生!大変だ!!」



突然部屋のドアがバンと開き、数人の子供たちが雪崩れ込んできたのだ。


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