23
「ミナ、パンひとつとって!」
「ほら、余所見してるとこぼすよ!」
「あーっ、先生ー!ジンが目玉焼きとったー!」
「かわりにニンジンやったろー!」
「これはまた……」
「すごいな……」
「そうだね……」
「ええ………」
今サイトたちの目の前で繰り広げられているのは、教会に暮らしている子どもたちによる朝食の風景だ。しかし人数が多い為か戦場のようになっている……
そこには、巨大な長テーブルに子どもたちが20人ほどで所狭しと並べられた料理を楽しんでいた。
その光景は騒がしい中にもなにか微笑ましく温かいものを感じるものだ。
サイトはそんな光景を眺めながら、口許にコップを運んだ。
「すいません。騒がしくていつも静かにって言ってるんですけど……」
「いいえ、そんな……」
「気にしないでください。それに食事はみんなで賑やかにとった方がたのしいだろ?」
サイトの一言にサーシャも顔を頬を緩ませた。
「それにしてもサーシャさんは子どもがお好きなんですね………」
アスナが言うと、照れたように言った。
「向こうでは、大学で教職課程取ってたんです。
ほら、学級崩壊とか長いこと問題になってたじゃないですか。
子供たちを私が導いてあげるんだーって、燃えてて。
でもここに来て、あの子たちと暮らし始めたら、何もかも見ると聞くとは大違いで……。
むしろ私が頼って、支えられてる部分のほうが大きいと思います。
でも、それでいいって言うか……。
それが自然なことに思えるんです。」
「なんとなくですけど、解ります。」
話を聞いていたアスナが口精一杯開けてパンを食べようとしているユイの頭を撫でてながらいった。
でも……結末を知っているのはサイトだけだ。
もどかしい、どうにかしたい、そんな思いが頭をよぎっている。
昨日発作を起こした子どもたちが心配になり、余り動かしたり、転移門は使わない方がいいと話し合い宿をとろうかとしていたが、サーシャの好意によりこの教会に一泊させてもらったのだ。
今朝になり、二人とも元気になりどうにか両夫婦は安心し、現状に至るのだ。
微かに戻ったというユイたちの記憶によると、はじまりの街には来たことはなく、保護者と暮らしていた記憶もないとのことだった。
そうなると、子供たちの記憶障害や幼児退行といった症状の原因もまるで解らなくなる。
キリトたちも、これ以上何をしていいのか解らないようだった。
ーーーーーけど、俺たちはきちんと事実がわかるまで子どもたちと別れるつもりはないが………
「サーシャさん………。」
「はい?」
キリトはある疑問を問いかけた。その疑問はサイトたち全員が思っていたことだ。
「……軍のことなんですが。
俺が知ってる限りじゃ、あの連中は専横が過ぎることはあっても治安維持には熱心だった。
でも昨日見た奴等はまるで犯罪者だった……。
いつから、ああなんです?」
サーシャは口許を引き締めると、ゆっくりと口を開いた。
「方針が変更された感じがしたのは、半年くらい前ですね……。
徴税と称して恐喝まがいの行為を始めた人たちと、それを逆に取り締まる人たちもいて。
軍のメンバー同士で対立してる場面も何度も見ました。」
「なるほどな……」
「なにがなるほどなんだ?」
サイトの頷きに理解ができなかったキリトが尋ねた。
「つまりだな、軍の中で考え方の違いかなにかでもめて派閥争いが起きているということだ……。」
「でもこのことあの人は知ってるのかな?…」
アスハの言っているあの人とは、血盟騎士団団長ヒースクリフのことだ。
「どうだろうな……?まあ、どちらにしろ今の俺たちにはどうしようもないことだ。」
キリトが、不意に顔を上げて教会の入り口の方を見やる。
キリトも気付いたか……。
「誰か来るぞ。1人……」
「え……。またお客様かしら……」
サイトは短剣を腰に携えて入り口に行こうとしたサーシャを
「念の為俺もついて行こう。昨日の軍の連中かもしれないからな。アスハたちは一応警戒だけしていてくれ。」
「わかったわ。気をつけて……。」
「行くぞキリト」
「ああ。アスナも頼むぞ。」
「ええ。キリト君も気をつけて……」
ー後書きー
みなさん、初めまして作者です…
いつも読んでくれる方にたまたま見た方もありがとうございます。
いままでいつもいつも後書き書こう‼と思ってもなかなか書くのを忘れてしまう作者ですがこれからもよろしくです!
ご意見ご要望等ございましたら遠慮なく申し上げてください‼
勉強になるのでよろしくお願いします。
では次回でお会いしましょう〜!