小説『ソードアートオンライン~1人の転生者』
作者:saito()

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その時だった。

凍りついたように動きを止めていたプレイヤーの1人がゆっくりと立ち上がったのだ。

そのプレイヤーはKoBの幹部を務めている男で、朴訥そうなその細い目には凄惨な苦悩の色が宿っている。

「貴様……貴様が……。

俺たちの忠誠ーー希望を……よくも……よくも……」


まずい!


男が巨大なハルバートを握り締めた。


「よくもーーーーーーッ!!」


「やめろ!」

サイトはものすごいスピードで動き男を止めた。

「邪魔をするなー!」

男は我を忘れて飛びかかろうとしている。

「落ち着け!奴はこの世界の管理者なんだぞ。今お前が飛びかかったところで敵う相手ではない。
大方システムの力で動きを止められるのがオチだ。」

サイトの言葉に男は悔しながらも動きを止めた。

「さて、ここで証拠隠滅の為全員殺すか?」

サイトは食ったような聞き方をした。

「まさか、そんな理不尽なことはしない。予定は早まったが最上層の(紅玉宮)にて君たちの訪れを待とうかと思っていたのだが……。
私の正体を看破した報償を与えなければならないな。」

茅場が右手の剣を軽く床の黒曜石に突き立てると、高く澄んだ金属音が周囲の空気を切り裂く。


「チャンスをあげよう。

無論不死属性は解除する。

私に勝てばゲームクリアされ、全プレイヤーがこの世界からログアウトできる。」

キリトが剣を抜こうとした時にサイトが前へ出た。

「悪いなキリト。俺がやる。
俺にはお前たちいや生き残った全プレイヤーを元の世界に返す義務がある。」

サイトはキリトに言い刀に手をかけた。

「サイト君、絶対に死なないで!」

「サイト君、アスハを悲しませたら私絶対に許さないからね!」

「サイト、お前死ぬなよ。」

「みんな。安心しろ。そう簡単にはくたばるつもりはない。」

「サイトーー!」

「サイトーー!」

クラインとエギルだ。

「2人ともいろいろと世話になったな。」

「馬鹿野郎!なに死ぬ奴のセリフいってんだよ!」

「向こうに戻ったら店のメニューなんでもおごってやる。だから死ぬなよ。」

「ああ。次はリアルで、だな。」


俺は茅場に目を戻し一言だけ言った。

「……悪いが、1つだけ頼みがある。」

「何かな?」

「負けるつもりはないが、もし俺が死んだらしばらくでいい、アスハたちが自殺できないようにして欲しい。」

茅場は意外そうに片眉をぴくりと動かしたが、無造作に頷いた。

「良かろう。彼女らは22層の君らの家から出られないように設定する。」

「感謝する。」

「どうして?!私君がいないなら生きていても意味、ないよ」

アスハが叫ぶように言った。

「俺は君に生きていてほしい。それに俺は君からたくさんのものをもらった。
人を愛する美しさ。
人と一緒にいるたのしさ。
絆の強さ。
家族の温かさ。
これらは全て君から教えてもらった。1人絶望と現実に葛藤していた俺に光をくれた。それだけで十分だ。
約束しただろ?どんなことをしても君たちを元の世界に返すって。」

それだけ言うとアスハ涙ながらにサイトに駆け寄り抱きついて言った。

「死んじゃやだからね。4人で帰るんだからね…」

「ああ。」

サイトはアスハを抱きしめ頷いた。

そしてアスハが離れた。

「またせたな。さあ始めよう!」

茅場はウインドウを開き俺と自分以外の人間を麻痺にした。

「邪魔が入っては困るのでね。」

そして茅場が左手のウインドウを操作し、私たちと己のHPバーを同じ長さに調整した。

次いで、茅場の頭上に【changed into mortal objekt】ーー不死属性を解除したシステムメッセージが表示される。

茅場はそこでウインドウを消去すると、床に突き立てた長剣を抜き、十字盾の後ろに構えた。

「行くぞ茅場&#8252;」

サイトは腰から刀を抜いた。

錆び刀が一振りの太刀に変化する。

サイトは地面蹴り飛ぶように走りだした。

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