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現在俺たちはスイルベーンにむけて飛行中だ。
「俺たちはスイルベーンで用事を済ませたら世界樹の麓の街、アルンに行くつもりだ。」
キリトが言い終わる前にリーファが驚きの声をあげた。
「世界樹攻略っ!?」
「そうだけど?何か問題あるのか?」
「いや、驚かれるのも無理はない。普通考えないからな。」
「どうしてだ?!」
キリトはすこし興奮気味だ。
「落ち着け。世界樹攻略は全種族に与えられたグランドクエストというもので、世界樹を攻略した種族は頂上で妖精王オベイロンに謁見するというものなんだ。
そしてその世界樹をしたんだが惨敗というのが現状だ。」
「なるほど………」
「サイト君が言ったとおりなの……」
「だが、心配するな。俺が必ず……
やめだやめだ。
場が暗くなる」
気がつくと、前方で森が切れていた。
その向こうに色とりどりの光点の群が姿を見せる。
中央から一際明るい光のタワーが伸びているそこは、シルフ領の首都とそのシンボルであるだ。
街はぐんぐん近付き、すぐに大きな目抜通りと、そこを行き交う大勢のプレイヤーまでもが見て取れるようになってくる。
「お、見えてきたな!」
風切り音の中、それに負けないように大きな声でキリトがそう叫ぶ。
「真中の塔の根元に着陸するわよ!」
『ちょっと待て、
キリトにライティングのやり方教えてないぞ。』
すでに、視界の半分以上が巨大な塔に占められている。
「えーと……ゴメン、もう遅いや。幸運を祈るよ。」
リーファはにへへと笑うと、1人だけ急減速に入った。
「そ……そんなバカなああぁぁぁーーーー」
キリトが絶叫しながら塔の外壁目掛けて突っ込む。
外壁に足をついて正面衝突を避け、ゆっくり翅を震わせたまま降下して行った。
びたーん!!と大きな音がなり、慌ててそちらに降りるとキリトに駆け寄った。
『大丈夫か?!キリト!!』
キリトが顔面を抑えて起き上がり、
此方に来たリーファにキリトは恨みがましい顔で言った。
「うっうっ、ひどいよリーファ……飛行恐怖症になるよ……」
「眼がまわりました〜」
ユイもキリトの胸から顔をし、ふらふらしながら肩に移動した。
リーファは両手を腰に当てて笑いを噛み殺しながら答える。
「キミが調子に乗りすぎなんだよ〜。
それにしてもよく生きてたねぇ。絶対死んだと思った。」
「うわっ、そりゃあんまりだ。」
「とにかくここで一旦別れよう。俺は用事を済ませてくる。」
サイトは苦笑いしながら言った。
「リーファ、キリトのお守り頼んだぞ。」
「はい!」
リーファはあちこち見せて回るつもりのようだ。
「それと、お詫びにヒール(回復)してあげるから。」
リーファは右手をキリトに向けて翳すと、回復スペルを唱えた。
青く光る雫が掌から放たれ、キリトに降りかかる。
「お、すごい。これが魔法か」
興味津々にキリトが顔を上げ、自分の体を見回す。
「高位の治癒魔法はウインディーネじゃないと使えないんだけどね。」
『必須スペルだから、キリトも覚えた方がいいぞ。』
「へぇ、種族によって魔法の得手不得手があるのか。
因みにスプリガンてのは何が得意なんだ?」
『確か、トレジャーハント関連と幻惑魔法だったか?』
「うん。どっちも戦闘には不向きで不人気種族No.1なんだよね。」
「うへ、やっぱり下調べは大事だな。」
確かキリトは黒を基調とした初期装備が気に入ったから、スプリガンにしたんだったな。
全く相変わらず奴だ……
サイトは苦笑いをした。
キリトは大きくひとつ伸びをして、周囲にぐるりと視線を向ける。
「おお、ここがシルフの街かぁ。
綺麗な所だなぁ。」
「でしょ!」
『俺も初めてきたが美しい街だ。』
サイトは転成する前にアニメで見た場所に自分がいるそれだけでなにか感慨深いものがこみ上げてきた。
そして俺たちはリーファのホームタウンを眺めた。
スイルベーンは、別名と呼ばれている。
華奢な尖塔群が空中回廊で複雑に繋がり合って構成されているその街並みは、色合いの差こそあれ、皆艶やかなジェイドグリーンに輝き、それらが闇夜の中に浮かび上がる様は幻想的だ。
また、風の塔の裏手に広がるはとても壮麗だ
4人が声もなく光の街を行き交う人々に見入っていると、不意に右手からリーファに声が掛かった。