小説『ソードアートオンライン~1人の転生者』
作者:saito()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

56

俺たちは一目散に街の入り口を目指して走っている。

この一本道ももう終わる。


そして、俺たちはその先に広がる地底湖に出た。

道は湖を貫く橋に繋がり、それを渡抜けば鉱山都市ルグルーの門に飛び込むことができる。

中立都市の圏内ならばアタック不可能な為、いかに敵の数が多くても何もすることはできない。


まぁ、今回は渡り切る前に妨害されるだろうが。


だが、トレーサーにつけられていたということは、道中ではあり得ない。

何故ならユイのサーチ能力がある為、そんな隙など皆無だからだ。


ならば、スイルベーンの所だろうな……属性が火であろうと、シルフが覚えられないわけではない。

習得に苦労するだけだしな。

だが、あのコウモリは目標を追跡するトレーサーと、隠蔽を暴くサーチャーの機能を兼ね備えていた。

あれを使うにはかなり高度な火魔法スキルをマスターしなくてはならない。シルフには些か至難の技だろう。

「『スイルベーンにサラマンダーが入り込んでいた(か)……(?)』」


リーファも同じ結論に達したらしく、俺と視線を合わせた。


スイルベーンは比較的他種族の旅行者に対し、開かれた街ではあるが敵対するサラマンダーに関しては別だ。

強力なNPCガーディアンがそれを見つけ次第、斬り倒すことになっているし、それをかいくぐるには……内部の手引きが必要になる。


それを手引きしたのは恐らく……

あいつだろう。

前を見るとゴツゴツした通路はすぐ先で石畳に変わり、その向こうに開けた空間が見えた。

青黒い湖水が仄かに光っている。

湖の中央を石造りの橋が一直線に貫くその彼方には、空洞の天井までまで繋がる巨大な城門が聳え立っていた。


あれが、鉱山都市ルグルーの門だ。


少しばかり安堵したリーファが後方を振り返る。

追手の灯す赤い光とはまだ距離があったようで、此方に視線を戻した。


橋に入ると周囲の温度が僅かに下がり、ひんやりと水の香りがする空気を切り裂きながら俺たちは疾駆する。


「どうやら逃げ切れそうだな。」

『油断はするな。まだ逃げ切れたとは限らない。』

「そうよ。水中に大型のモンスターだっているんだから、落っこちないでね。」

短く言葉を交わしながら、橋の中央に設けられた円形の展望台に差し掛かった。

がしかし!その時だった、


頭上の暗闇を、背後から2つの光点が高速で通過した。


特徴的なその輝きと効果音は、魔法の起動弾だが、照準が此方ではない。

だとするとこれは……土魔法の障壁だ!


光点が10m先に落下し、ゴゴーン!と重々しい轟音とともに、橋の表面から巨大な岩壁が高くせり上がる。

そして、完全に行く手を塞いだ。


リーファが顔をしかめ、毒づく。


「やばっ……」

「な……」


キリトも一瞬目を丸くしたが、走る勢いは緩めることはなかった。


『キリト!待て!!』


制止の声は届かず、背の愛刀を鈍い金属音と共に抜き放つと、それと一体になって岩壁へと突進していく。


「キリト君!」


リーファもキリトに声をかけるが、キリトは聞こえていないようで、愛刀を思い切り岩に打ち込んだ。


ガツーン!という衝撃音と共に、弾き返されて橋に尻餅をつく。


褐色の岩肌には傷ひとつ付いていなかった。


『無駄だ、キリト。』


そばまで、かけより説明する。

「もっと早く言ってくれ……」

『ちゃんと聞かないキリトが悪い。』


じとりとキリトを見ると、リーファも同意してくれた。


「そうだよ。

それに、これは土魔法の障壁だから物理攻撃じゃ破れないわ。」

『破るには攻撃魔法を数発撃ち込むのが、一般のやり方だ。が……』


ちらりと背後を見た。キリトたちもそれに気づいたらしく、


「その余裕はなさそうだな……」


そう呟いたキリトと同時に、並んで背後を振り返る。

丁度、血の色に輝く鎧を纏った集団の先頭が橋のたもとに差し掛かるところだった。


「飛んで回り込む……のは無理なのか。

湖に飛び込むのはアリ?」

『さっきもリーファが言った通り、水中には高レベルの水竜型モンスターが棲んでる。』

「ウィンディーネの援護なしじゃ、水中戦は無理よ。」

「じゃあ戦うしかないわけか。」


愛刀をがしゃりと構え直したキリトに、俺たちは頷く。


『それしかないだろうな。』

「でも、ちょっとヤバいかも……。

サラマンダーがこんな高位の土魔法を使えるってことは、よっぽど手練れのメイジが混ざってるんだわ……」


橋の幅は狭いので、多数の敵に包囲されて全滅というのはまずないだろう。

ただ、このダンジョン内ではリーファは飛ぶことができない。

リーファが得意とする空中での乱戦、それに持ち込むことができないのだ。

となると、地上戦か、、、

「なんとか、乗り切るぞ!」


重い金属音を響かせて接近してくる敵の一団はもうはっきりと目視できていた。


先頭の横一列に並んだ巨漢のサラマンダー3人は、先日のサラマンダーたちより一回り分厚いアーマーに身を固めいる。その左手にはメイスなどの片手武器、そして右手には巨大な金属盾を携えていた。

「リーファ、悪いが今回は回復に専念してくれないか?、
決して君の腕を信じてないわけではないが、」

「たしかにな、この狭い橋の上で乱戦をするのは危険だな。俺とキリトで前をやる。後ろを頼むぞ!」

「え、ええ。わかったわ。」

戸惑いながらも、2人言われ、リーファもそれがいいと踏んだのであろう、了承してくれた。」


リーファは軽く地を蹴り、橋を遮る岩壁ぎりぎりの場所まで退いた。



キリトが腰を落とすと体を捻り、愛刀を体の後ろ一杯に引き絞った。

津波のような重圧で3人のサラマンダーが迫る。

キリトの大きいとはいえない体が、ぎりぎりと音がしそうな程に捻転していき、蓄積されたエネルギーの揺らぎが眼に見えてくる。


そして、両者の距離は見る見るうちに縮まり、やがてーーー


「ーーーセイッ!!」


気合一閃、キリトは左足をずしんと一歩踏み出すと、青いアタックエフェクトに包まれた剣を、サラマンダーたちに向かって横薙ぎに叩きつけた。


空気を断ち割る唸り、橋を揺るがす振動、かつてない程の威力を秘めた斬撃。


だが、三人のサラマンダーは武器を振りかぶることもせず、ぎゅっと密集すると右手にある盾を前に突き出して、その影に身を隠した。


「えっ……!?」


横に居るリーファの唖然とした声が耳に入る。

ガァーン!!という大音響を轟かせ、キリトの剣が並んだタワーシールドの表面を一文字に薙いだ。


ビリビリと空気が震え、湖面に波紋が広がる。


しかしサラマンダーたちは僅かに後方に押し動かされただけで、キリトの攻撃を耐え切った。


相手のHPを確認する。


3人揃って1割以上減少しているが、それは直ぐに背後にいる数人のサラマンダーから立て続けのヒールスペル詠唱と共に水色の光に包まれ回復する。


そして、その直後。


鋼鉄の城壁にも似た大型シールドの後方から、オレンジ色に光る火球が次々に発射され、大空洞の天井に無数の弧を引いてキリトに降り注ぎ、炸裂した。


湖面を真っ赤に染めるほどの爆風が巻き起こり、彼の姿を飲み込んでいく。


『………っ!!』

「キリト君!!」


リーファの悲鳴にも似た叫び声と共にキリトのHPバーが急減少し、一瞬でイエロー域へと突入した。


普通ならば初撃で即死してもおかしくない密度の多重魔法攻撃だ。


奴らは間違いなくキリトの凄まじい物理攻撃力を知った上で作戦を練ってきている。

前衛3人は一切攻撃に参加せず、ひたすら分厚いシールドで身を守り、残る9人は恐らく全員メイジで、一部が前衛をヒールで回復させ、残りの者が曲線弾道の火炎魔法で攻撃する。

これは、物理攻撃に秀でたボスモンスターに使うフォーメーションだ。

「大丈夫か?!俺が、前の三人を吹っ飛ばす!すこしだけ耐えてくれ!」

俺は闘鬼神を抜き胸元で横に傾け妖気をためる。

「がはっ!」

その間にもキリトはダメージ受けているが、リーファの回復のおかげでなんとか持ちこたえているようだ。

普段はためることのない剣気だが、蒼竜破の最大攻撃はためなくてはならない。

サイトの周りを地面から4本の雷の柱が包み込む。

「今だ!キリト!後ろに思いっきり下がれ!」

俺の声と共にキリトが大きく後ろに飛んだ。

これで、俺とサラマンダーの前衛3人との間に邪魔者はいない。

「くらえ!蒼竜破!」

俺は剣を振りかざした!

激しい空色の竜が竜巻を横にしたように円を描きながら進んで行った。

「「「う、うわぁぁぁー!」」」

3人のサラマンダーは情けない断末魔と共に消え去った。

さすがのサラマンダー部隊も慌てているようだ。

絶対に破られないと思っていた、前衛が消し飛んだからな。

「キリトいけ!今だ!」

キリトは走りながら何かをつぶやいた。

そして、光の収束が彼を包み込んだ。

あれか!

キリトは魔物に姿を変えていた。

スプリガンの幻惑魔法だ。

その姿はまさに、かつてアインクラッドでの第74層で戦った、グリームアイズそっくりだ。

斬馬刀は持っていないがな。

そのまま、メイジ隊の真ん中に走っていく。

リーダーの男は「ヒッ!」と喉を詰まらせたような悲鳴を上げ、右手をぶんぶん振り回す。


「た、退却!たいきゃーー」


だが、その言葉が終わらない内に、悪魔は一瞬身を縮めると大きく跳躍した。

ズシンと橋を揺るがして着地したのは、集団の真っ只中だった。


それからはもう、戦闘と呼べるものではなかった。


悪魔の鉤爪が唸るたびに、その軌跡にエンドフレイムが飛び散っていく。


中には健気に杖で肉弾戦を挑もうとする者もいたが、武器を振り下ろす間もなく頭から牙に呑まれ、絶命した。


暴風圏から起用に逃げ回っていたリーダーが、最早これまでと見てか、橋から身を躍らせ、水柱を上げて湖面に飛び込んでしまった。

奴はそのまま猛烈なスピードで彼方の岸目指して泳いでいく。


この世界では水に落ちても、装備重量が一定値以下なら沈むことはない。

リーダーはメイジの軽装が幸いしてか、見る見るうちに橋から遠ざかっていった。

しかし、水面下から影が忍ばよってきて、パクリと人のみにされてしまった。

キリト悪魔は敵リーダーの末路に興味を示さなかったようで、とうとう最後の1人となった不運なメイジを両手で高々と持ち上げる。

「おい!そいつは生かしとけ!聞きたいことがある!」

俺の言葉をキリトも理解したらしく、そいつ手につかんだままこちらに戻ってきた。

すごかったですね〜と、呑気な感想を述べるユイとレイを肩に乗せたまま、歩き出した。

キリトも元の姿に戻り、リーファが右手の長刀を男の足の間に突き立てる。

「さあ、誰の命令とかあれこれ吐いてもらうわよ!!」


リーファがドスの聞いた声で叫んだが、男は逆にショックから醒めたらしく、顔面蒼白ながらも首を横に振った。


「こ、殺すなら殺しやがれ!」

「もちろん、後で殺す。」

「ちょ、サイト君、いきなり……」

「なんなら、催眠魔法や拷問で無理矢理吐かせてやろか?

結局、無理矢理喋らすことはできるが、お前は地獄の苦しみをあじわうんだぞ?」

その時、上空から様子を見下ろしていた悪魔が、黒い霧を撒き散らしながらゆっくりとその巨躯を消滅させ始めた。

顔を上げると、宙に溶けていく霧の中央から小さな人影が飛び出し、すとんと橋に着地した。


「いやあ、暴れた暴れた。」

呑気な声が聞こえてきた。

「まったく、お前は……、すこしは空気をよんだらどうだ?」

俺の言葉にも耳を傾けず、あははと笑っていた。

「さあ、どうする?」

サイトの迫力に負けたのか、おとなしく話し始めた。



「ーー今日の夕方かなあ、ジータクスさん、あ、さっきのメイジ隊リーダーなんだけどさ、あの人から携帯メールで呼び出されてさ、オレ飯食ってたから断ろうとしたら強制招集だっつうのよ。

入ってみたら3人を十何人で狩る作戦だっつうじゃん、イジメかよオイって思ったんだけどさ、昨日カゲムネさんをやった相手だっつうからなるほどなって……」

「そのカゲムネってのは誰だ?」

「ランス隊の隊長だよ。

シルフ狩りの名人なんだけどさ、昨日珍しくコテンパンにやられて逃げ帰ってきたんだよね。

あんたがやったんだろ?」


シルフ狩りという言葉にリーファは顔を顰めた

そして、キリトと俺、リーファは視線を交わす。


恐らくは昨夜俺とキリトが撃退したサラマンダー部隊のリーダーのことだろう。


「……で、そのジークタスさんはなんであたしたちを狙ったの?」

「ジークタスさんよりもっと上の命令だったみたいだぜ。

なんか、(作戦)の邪魔になるとか……」

『作戦ってのは?』

「マンダーの上のほうでなんか動いてるっぽいんだよね。

俺みたいな下っぱには教えてくれないんだけどさ、相当でかいこと狙ってるみたいだぜ。

今日入ったとき、すげぇ人数の軍隊が北に飛んでくのを見たよ。」


『北……』


……やはり、手を引いていたか。

手引きしたの大方シグルドだろう。恐らくはシルフとケットシーの調印式を阻止する気だな。

サクヤの話しでは、調印式を行う場所は蝶の谷の内陸側の出口だったはずだ。


「……世界樹の攻略に挑戦する気なの?」



まぁ、確かに、リーファがそう思うのも頷ける。

サラマンダー領の首都(ガタン)から真っ直ぐ北に飛べば、俺たちがいる環状山脈にぶつかるし、そこから西に回ればルグルー回廊がある。東に行けば山脈の切れ目のひとつ(竜の谷)があって、どちらを通過するにせよ、その先にあるのは央都アルンと世界樹だからな。


しかし、リーファの問いに男はぶんぶんと首を横に振った。


「まさか。さすがに前の全滅で懲りたらしくて、最低でも全軍にエンシエントウエポン(古代武器級)の装備が必要だってんでユルド貯めてるとこだぜ。

おかげでノルマがきつくてさ……。

でもまだ目標の半分も貯まってないらしいよ。」

「ふうん……」

「そうか、説明ご苦労だったな。」

俺は剣を振り下ろしそいつのHPバーを零にした。

男も急なことで、さぞかしビビっているだろう。

「サイトも相変わらずだな。」

「ふっ、生かしておいて後で背中からってのも困るしな」

「まあ、もともと向こうもね……」

リーファも言葉を濁らせながら言った。

「あ、ねえ!さっきのってキリト君、だよね?」

「あれか〜、多分……」

「た、多分って……」

「さっきのはサイトとユイに魔法教わって試してみたら、なんか急におっきなって……」


「ぼりぼり齧ったりもしでしたよ〜」

「ああ、そう言えば。

モンスター気分が味わえてなかなか楽しい体験だったぜ」

得意げにキリトが話している。


「あのさ、その……味とか、したの?

サラマンダーの……」

「……ちょっと焦げかけの焼肉の風味と歯ごたえが……」

「わっ、やっぱいい、言わないで!」


キリトに向かってリーファがぶんぶんと手を振る。と、キリトは何を思ったのか、不意に彼女の手を掴み、

「がおう」

一声唸るとキリトは大きく口を開け、指先をぱくりと咥えた。

「キャァァァーーー!」


リーファの悲鳴と、それに続くばちこーんと、ゴンッ!という音が地底湖の水面を僅かに揺らした。

「うう、いててて……」


リーファに思い切り張られた頬っぺたをさすりながらキリトがとぼとぼと歩く。

「さっきのはパパが悪いです!」

「ほんとだわよ。失礼しちゃうわ。」

『自業自得だぞ、キリト。』


リーファとユイが口々に言うと、キリトは叱られた子供のような顔で抗弁した。


「殺伐とした戦闘のあとの空気を和ませようというウィットに満ちたジョークじゃないか……」


「次やったらぶった斬るからね。」


リーファは瞼を閉じてツンと顔をそらす。

そして、歩調を速めた。



眼前には、巨大な石造りのゲートが遥か地下空洞の天井まで聳え立っている。


鉱山都市ルーグルの城門だ。


補給と情報整理も兼ねて、この街で一泊することにした。

先ほどの大規模な戦闘で時間を取られ、リアルではもう既に深夜0時に近い。


ALOが本格的に賑わい始めるのはこれからだが、俺たちはともかく、リーファは学生だ。

どんなに遅くても、1時には帰さなくてはならないだろう。


3人並んで城門をくぐると、BGM代わりのNPC楽団の陽気な演奏と、幾つもの槌音が私たちを出迎える。


街の規模自体はそう大きくはないが、中央の目抜通りを挟むように聳える岩壁に、武器防具や各種の素材、酒や料理などを商う店やら工房やらが積層構造を成して密集している様は見事なものだ。


プレイヤーの数も多く、普段あまり出会うことの少ない音楽妖精族のプーカや、鍛治妖精族のレプラコーンといった種族のパーティーが談笑しながら行き交っている。


「へええー、ここがルグルーかぁー」


リーファが初めて眼にする地底都市の賑わいに思わずといった感じで歓声を上げる。

そして、早速手近な商店の店先に足を向ける彼女を微笑ましく思いながら2人で後をついて行った。


そこは武器屋のようで、店先の陳列棚には数々の剣が並んでいる。


「そう言えばさあー」


銀造りの長剣を手に取って眺めているリーファに、キリトがのんびりした口調で言った。


「ん?」

『何かあったか?』

「いやさ、サラマンダーに襲われる前、なんかメッセージ届いてなかった?あれは何だったの?」

「……あ。」


リーファは口をあんぐりと開けると、こちらを振り返った。


「忘れてた」


慌てた様子でウインドウを開き、履歴を確認する彼女を見る。

メッセージの謎は解けなかったようで直接メッセージを打とうとしたみたいだが、どうやらオフラインらしい。


「何よ、寝ちゃったのかな。」

『一応向こうで連絡とってみたらどうだ?』


リーファは少し考え込むが、直ぐに結論が出たらしく俺たちを見た。


「じゃあ、ちょっとだけ落ちて確認してくるから、サイト君とキリト君は待ってて。

あたしの体、よろしく。

ーーあ、ユイちゃん、サイト君、レイちゃん。」


リーファが俺とレイとユイを見ると、最後に付け加える。


「「はい?」」

『なんだ?』

「パパがあたしにイタズラしないように監視しててね。」

「「りょーかいです!」」

『大丈夫だ。その時は容赦しないから。』

「あ、あのなあ!!」


心外だという風に首を振るキリトに、クスクスと笑い合うとリーファは手近なベンチに座り、左手を振ってログアウトボタンを押した。


それを見届けた俺はリーファの隣に腰掛ける。


『キリト。ここは俺が見てるから、お腹空いてたら屋台を見てきてもいいぞ?

ついでに、リーファが帰ってくる前に必要な物もひと通り揃えてしまった方が良いだろうしな。』

「分かった、後で交代する。」

多分、リーファが帰ってきたら買い物に行く暇なんてないだろうから。

先にキリトたちが、その後にはサイトたちが、買い物に出かけた。

2人が準備を整えた頃にリーファは戻ってきたのであった。

-56-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




ソードアート・オンライン4コマ公式アンソロジー (電撃コミックス EX 178-1)
新品 \714
中古 \131
(参考価格:\714)