クリスマスの奇跡2
「ふわぁーあ、おはようアスハ。」
時間は午前7時すぎたばかりだ、朝起きるのが苦手なサイトにとっては午前7時といえどおきるのには辛い時間だ。
一方アスハは朝起きるのがさほど苦ではないのか、朝から元気だ。
アスハは重い瞼をこすりながら起きあがった俺に対して、
「おはよう。もうしっかりしてよ!今日からクリスマスのクエストやるわよ!」
「ははは。朝から元気だな〜アスハは」
俺は呆れながらもそんなアスハの姿に笑った。
アスハはこの1ヶ月=サイトと出会ったてから大きく変わった。それまでは絶望から一刻も早いゲーム攻略に気持ちが焦り無茶なレベあげもしていた。
しかし、今は【ここで一日を生きていけばいい!1人が辛ければ俺が一緒に背負ってやる。】この一言でそれまでのアスハではなくなった。
そして、サイトに恋するうら若き乙女となった。
もちろん、色恋沙汰には前世でも鈍かったので当然アスハの気持ちには気づいないのだが…………
サイトとアスハは泊まっている宿でNPCの作るの簡単な朝食をとり、街にでていった。
「俺たちが受注したのは、第10層だったよな?ってことはこの層のどこかにいるんじゃないのか?」
「そうね……多分森とか洞窟とかそういったエリアにいるのじゃないかしら?」
ちなみに各層によって地形は異なるが大まかなところは同じだった。
サイトは第10層の全体図を見ながら、針葉樹林の森をさした。
「針葉樹といえばクリスマスツリーの基本だろ?だからこの森の奥にいるんじゃないのか?」
「いい考えね。行ってみましょう。」
俺とアスハは必要な消費アイテムを買い揃えてからフィールドダンジョン樹氷の樹林へと向かった。
道中、あまりモンスターと遭遇することもなく樹氷の樹林の入り口についた。
このエリアは季節によってその風景を変える珍しいダンジョンだった。
春には桜が咲く。
夏には昆虫系のモンスターが多く出現し、夜にはアストラル系のモンスターが出没するらしい。
秋は鮮やかな紅葉となる。
冬は雪景色一色となり、物寂しい雰囲気になる。
「さて、行こうか。」
そう言って俺たちはフィールドダンジョン樹氷の樹林に歩を進めた。
さすがに、雪の世界だけ合って出てくるモンスターは氷系のモンスターが多かった。
「スイッチ!はぁぁぁ、せやっ!」
パリーン、ポリゴンの破片を飛び散らせながらウルフ系モンスターの亜種スノーウルフが砕け散った。
ここのダンジョンじたいフィールドダンジョンというだけあって、そこまでモンスターも強くはない。
2人とも2割ほど、HPを削られていたので、ポーションを飲んで回復をした。
さらに、奥に進むとある異変に気がついた。
「ねえ、なにかへんじゃない?」
「変って、なにがだ…?」サイトは特に何も気づいてはいないみたいだ。
「だって……さっきから出没するモンスターがスノーウルフだけになってない……?」
アスハに言われて俺もそう言われてみればそうだなと思った。たしかに妙だ………
このダンジョンに入ってからスノーウルフ以外のモンスターと戦闘をしていない……
そう思っていたらひときわ大きな遠吠えが聞こえてきた。
【アォーーーン】
そして、その声の主がこちらに走ってきた。
それは、他のスノーウルフとは違い体がでかい。それにボスなのか群れのリーダーなのか他のスノーウルフたちを従えてやってきたのだ。
その数は5頭。こっちはサイトとアスハ2人だ。
数において圧倒的に不利。
たかが五頭と思うがボスによって統率された獣の群はとても恐ろしい。数もこちらの倍もいるのだからなおさらだ。
背を向けてはいけない。
獣と対峙するときに大切なのは目をそらさずじっと睨んで牽制することだ。
もし背を向けると相手に隙をみせ獣は自分よりも弱いものだと判断一斉に襲いかかってくる。
サイトはじっと獣たちを睨んだ。
しかし、雪に足を取られてしまった……
その隙をスノーウルフは見逃さない。サイトの1番近くにいたスノーウルフが飛びかかってきた。
「うわぁ、」とっさに腰の妖刀を抜きスノーウルフを切りつけた。幸運なことに攻撃はクリティカルヒットし、サイトに襲いかかってきたスノーウルフはポリゴンが消滅して砕け散った。
それでもまだ相手は4匹だ。そして、手下の3体のスノーウルフが一斉に襲いかかってきた。
俺とアスハはなんとか攻撃を退けて、倒した。残りはボスだけである。
「俺がボスを牽制する。その隙に回復しろ!」
アスハの残りのHPは4割ほどだ、イエローに差しかかっていた。
サイトはまだ8割ほど残していたため先にアスハに回復させることにしたのだ。
回復し終えたアスハは
「スイッチ!サイト君回復して。」
「 俺は大丈夫だ。スキルと装備が回復してくれる。」
サイトは戦闘時回復と龍の衣によりHPを自動回復していっている。もう満タンに近い。
巨大スノーウルフをHPを7割りにまで減らしたところでスノーウルフに変化が起きた………
なんと、頭が二つになったのだ。
動きも早くなり、ブレスを吹くようになった。
これは、かなりまずい………