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俺たちは彼女のあとを追うべくメニューを開きログアウトボタンを押した。
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目を開くとそこは先ほどと同じ天井がある。
俺は体を起こしジャージの上を羽織って廊下に出た。
どうしたらいいんだろう………
こうなることを知っていたとはいえ、やはりどうしたらいいか分からない………
仕方がないので、彼女の部屋の前に立ちノックをした。
「直葉………」
何を話しかければいいか分からなかったが先に直葉がドア越しに切り出してきた。
「……本当はね、お兄ちゃんが本当のお兄ちゃんじゃないって知ってたんだ。
お母さんにね、教えてもらったの……」
「ああ。」
「お兄ちゃんが眠り続けてるの見てるのが辛くて、でも目を覚ました時はすごく嬉しかった。
そして、もう一人彩斗さんっていう新しい家族も増えて嬉しかった。
すっごく、嬉しかった………」
俺は直葉の言った【家族】という言葉に胸がドクンとなるのを覚えた。
「そうか………」
「でも、まさかあっちの世界で、あんなに身近に2人がいるとは思ってなくて……びっくりしたんだと思う。
気づいたらあたし……ログアウトボタンを押して、逃げてた。」
「ああ……」
今の俺にはだまって聞くくらいしかできない………
「あたし、あたしね、サイトくんも、キリトくんも大好きだったの。すごく、好きだったの。
もちろん、彩斗さんとお兄ちゃんも大好きだよ。
でも、でもね……あたしっ……すごく、辛かった……2人に嘘つかれてたみたいで……今までのことが、全部……嘘のような気がしてすごく、苦しかった……。
彩斗さん……あたし、あたしっ……もう、どうしていいのかわかんないよ……!」
「なあ、家族っていったいなんなんだろうな。」
俺は唐突に話し始めた。
「そりゃ、いつも一緒にいる身近な存在……??」
直葉もすこし困ったように聞き返してきた。
「今言ったよな?直葉と和人は本当の兄妹ではないって。
けど、大事なことってそこか?
世間には実の兄弟や親子でも憎しみあってる人もいれば、赤の他人でも仲良く暮らしてる人もいる。
俺はさっき直葉に家族って言ってもらえて嬉しかったんだ。
俺は今桐ヶ谷家の人間として認められていると。
心はいつも繋がっている。和人はこんなことでお前を避けたりなんかしない。
だから、会ってこい。
和人からの伝言だ、
[アルンの北側テラスで待ってる]だ。」
「私、大丈夫、かな……?」
「心配するな。」
ありがとう……。
部屋の中からポツリと聞こえてきた声に俺はドアをコツンとならし応えた。
「和人、アルンの北側テラスだ。そこで、彼女ーー直葉と会うぞ。」
和人も分かった。とだけ言い俺たちは再び仮想世界に落ちていった。