小説『とあるバカとテストと超電磁砲 文月学園物語』
作者:御坂 秀吉()

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バカとクラスと召喚戦争 〜男とは、無力だ・・・〜



視聴覚室の扉が開かれ、Fクラスの集団が押し寄せる。

「3対2で、Aクラスの勝利です」

それに構う事なく、高橋女史は宣言。
そのそばでは、座りこむ雄二とその傍で雄二を見下ろす翔子。

「……雄二、私の勝ち」
「……殺せ」
「いい度胸だ、殺してやる! 歯をくいしばれ!!」
「吉井君、落ち着いてください!」

瑞希が明久を制し、雄二から引きはがそうとした。

「大体、53点って何!? 0点なら名前の書き忘れとかも考えられるのに、この点数じゃ……」
「いかにも、俺の全力だ」
「ただの雑魚じゃないかこのゴリラ!!」

須川は殴りかかろうとしたが、美波によって阻まれる。

「アキ、須川、落ち着きなさい! アンタ達だったら、30点も取れないでしょうが!」
「「それについては否定しない!」」

明久と須川の声が、寸分の狂いもなく合わさった。

「それなら、坂本君を責めちゃダメですっ!」
「くっ、3人とも何故止めるんだ!? このゴリラには喉笛を引き裂くと言う体罰が必要なのに!!」
「それって体罰じゃなく処刑です!」

瑞希に引き留められ明久は大人しく(?)引き下がる事に。

「……でも、危なかった。雄二が所詮小学校の問題だと油断していなければ、負けていた」
「言い訳はしねえ」
「潔いのはいいが、情けなさすぎるぞ? 小学生問題だからって手を抜くなんて」
「……ところで、約束」
「…………!(カチャカチャカチャ!)」

翔子の言い放った言葉で、ムッツリーニと明久が突如撮影準備を始めた。
その場にいなかったFクラスのギャラリーは疑問符を浮かべる

「え? どういう事?」
「霧島さんの提案で、負けた方は何でも言う事を聞くって約束をしたの」
「……成程ね」

元輝は明久とムッツリーニの思惑をなんとなく理解して、ため息をついた。
翔子に視線を戻すと、瑞希に視線をやった後に雄二に視線を戻した翔子が……

「……雄二、私と付き合って」

と、言い放った。

「「「……へ?」」」

Fクラスの面々どころかAクラスの面々も面食らった。

それもそのはず、霧島翔子は同性愛主義者だと言う噂が、誰もがそれを疑わない程有力となっていた。

だからこそ、男性である雄二に冗談や酔狂とは思えない表情で告白する姿は、正直意外その物だろう。

「やっぱりな。お前、まだ諦めてなかったのか?」
「……私は諦めない。ずっと、雄二の事が好き」
「その話は何度も断っただろ? 他の男と付き合う気はないのか?」
「……私には、雄二しかいない。他の人なんて興味ない」

その姿を見て、全員が噂の真実を確信した。

つまりは霧島翔子についての噂は、一途に雄二を想っていたが故である事に。

「拒否権は?」
「雄二、んなもんある訳ないだろ」
「……その通り。約束だから、今からデートに行く」

と、雄二の首根っこをつかむ。

「ぐぁっ! 離せ! やっぱこの約束はなかった事に……」

と、雄二は抵抗するも何故かびくともしない。
そのまま教室を出て行こうと……できなかった

「霧島さん、待ってくれ」
「……何?」

須川が霧島に頼んだ。……覆面を被って。

「須川……すまん、恩に着る!」
「こいつを裁判にかけてからでもいいかね?」

と、霧島に問いただした。

「…それは、ダメ。早くいきたいから。でも、明日以降になら何回でもいい」
「ちょっと待て!!こいつらは本気だぞ!?明日以降これなくなるだろうが!!」
「わかった。では行ってよい。被告人坂本、待っているぞ」
「待っているぞ、じゃねえ!須川、テメ覚えてやがれ! 生きてたらぶっ殺してやる!!」

再度雄二の首根っこをつかみ、2人は遠くへと去って行った。

「「「「……………………」」」」

去って行ったあとも、場の沈黙は今だ空間を支配していた。

「さて、Fクラスの諸君、お遊びの時間は終わりだ」

それを破ったのは、とある教師の声。

「あれ? ……西村先生?補習室ならここじゃないですよ?」
「さすがにそれくらいわかっている。今日はお前らに用がある」
「どういうことですか?」

姫路も疑問符を浮かべている。

            ・・
「諸君、今から敗戦した、我がFクラスに補習について説明しようと思ってな」

 ・・
(我がFクラス?)

「おめでとう。お前らは戦争に負けたおかげで(もともとだったが)、福原先生から補習授業担当のこの俺に担任が変わるそうだ。これから1年、死に物狂いで勉強できるぞ」

「「「なにぃっ!!?」」」

クラスの男子全員が悲鳴を上げた。

「いいか。確かにお前たちはよくやった。Fクラスがここまで来るとは、正直思わなかった。でもな、いくら“学力が全てではない”と言っても、人生を渡っていく上では強力な武器の一つなんだ。全てじゃないからと言って、蔑にしていい物じゃない」

負け方が負け方だけに、グゥの音も出なかった。

「吉井と坂本は特に念入りに監視してやる。何せ開校以来初の“観察処分者”と“A級戦犯”だからな」
「そうはいきませんよ! 何としても監視の目を掻い潜って、今まで通り楽しい学園生活を過ごして見せます!」

「……お前には、悔い改めるという発想はないのか?」

彼には、その気は一切なかった。

「とりあえず明日から、授業とは別に補習の時間を2時間設けてやろう」
「うぇっ!? ……学園都市から小萌先生の補習には散々引っかかってたし、まあいいか。やっても」

当麻は納得したようだ。

「うーん……そうだね。まあ、3ヶ月後に鉄人の魔の手から逃れるって目標が新しく出来たから、やってみようか」
「やる気が出たのはうれしいが、もうちょっとマシな理由はないのか?」
「ありません!」

呆れるように言う鉄人に、明久は堂々と言い放った

「それじゃ今日はもう終わりだし、買い物してから帰るか」
「そうだね。帰って何しようかな?」
(お前にも苦悩を味わってもらおう)

元輝は心の奥で笑っていたことには誰も気づかないだろう。

「なあ、明久。おまえ生活に困ってるんだよな?」
「うん、そうだけど。どうしたのいきなり?」
「実は、商店街のくじで映画無料券を3枚もらったんだけど、
(瑞希や美波を誘って)映画にでも行って得したらいいんじゃないか。これやるから、ほれっ」

と、元輝は映画のチケットを明久に手渡した。

「え? でも……」
「良いから、良いから」

と、押しつけるようにチケットを手渡した。

「うん…ありがとう…」
「ねっ、ねえアキ!そのチケットの映画、ウチ観たかったのよ!」
「わっ私も、その映画観たかったんです!一緒に行きませんか!?」

「え?なになに!?どうして2人して殺気立ってるの!?」

と、それを見るなり瑞希と美波が、我先にと明久に詰め寄った。
                 
それを見て、元輝は笑みを浮かべる。

・・・・・
計画どおり


「鉄人先生、やっぱり補習今からやりましょう!思い立ったが仏滅ですよ!」
「吉日だバカ。まあお前がやる気なのはうれしいが……まあ無理をする事はない。
(にやにや)先生は大いに応援してやるぞ」

普通に考えれば、ある意味男女交際を応援する様な事。
だが2人には地獄へ突き落される様なことこの上ない。

「おのれ鉄人! 僕が苦境にあると知った上での狼藉だな!? こうなったら卒業式の日に、伝説の木の下で釘バットをもって貴様を待つ!!」

「斬新な告白だな、おい」

鉄人に詰め寄ろうとしたところを、明久は美波にネクタイをつかまれ引っ張られる。

「逃げようったってそうはいかないわよ、アキ。さあ、帰り道にパフェでもおごってね♪」
「えっ!?それは週末じゃ…」

 ・・ ・・ ・・ ・・
「それはそれ。これはこれ」

明久のほうに瑞希も加わり、左腕を抱きかかえるように引っ張り始める。

「ちょっと待って姫路さん! なんで雄二の事をほっといて、僕と映画を観たがるの!?」
「坂本君? 何のことですか?」
「え!? だって……もしかして、違うの!? じゃあ誰が」
「無駄口叩いてないできなさい!」
「ぐぶっ! ちょっ、ぐるじ美波……」

美波が引っ張る力を強め、ネクタイが首を締め付ける。
瑞希もそれに構わず、ただ引っ張る事に必死になっていた。

とりあえずだが、明久と雄二には幸せそうで不幸なひと時が待っていた。






(明後日、月曜日、あの二人を暗殺する。桜田門外の変ならぬ、
 ・・・・ ・
 文月門外の変だ)

怪しい暗殺計画があるがそこは気にしない。








映画館。
そこは数々のドラマが存在する。

明久は瑞希と美波を伴って、映画館へときていた。

「チケット代、コーラ、ポップコーン……映画館、何と恐ろしい場所!?」

明久は普段を水と塩で過ごすだけあって、その値段に驚愕していた。

「よし、僕も男だ! 初めてのデートなんだし、これ位の出費や痛手を負う価値はあるじゃないか!」
「ほうっ、随分と引き締まった顔になったじゃないか明久」

そこへ突如、割り込む声。

「……俺も今回ばかりは、負けを認めざるを得ないぜ」

そこには、交際をする事になった、霧島翔子と坂本雄二。
ただし、雄二には手枷が付けられており、逃げられない状態だった。

「……雄二、どれがみたい?」
「早く自由になりたい」
「じゃあ、これ」

と、雄二の言い分を無視して、映画の紹介表示を指差した。

「おい待て! それ3時間24分もあるぞ!?」
「2回見る」
「1日の授業より長いじゃねえか!!」
                ・ ・ ・ ・ ・
「授業の間、雄二に会えない分の、う・め・あ・わ・せ♪」

雄二は翔子の手に持たれた鎖をひったくった後、そそくさと出口へと向かう。
が、ある物を取り出す。

「今日は、帰さない」

映画館に悲鳴が響き渡った。

霧島の手には握られていた。スタンガンが。

「気の毒に…」

明久は内心、対抗心を燃やしつつ冷静に死者を見送った。

雄二達を見送った後に、映画を見る事に。
明久が用意したポップコーンとコーラを手に、瑞希と美波は今か今かと楽しみにしていた。
二人とも目が輝いている。










映画終了

「面白かったね」
「はい。明久君のセンスが良くて、幸運でした」
「うん。アキのことだからお子ちゃま向けかと思ってたけど、意外とデート向きだったわね?」

2人とも、満足の様子。

「少しおなかが減ってきたし、そこのカフェでも行きましょっ。アキのおごりで」
「僕の生活費が・・・」

明久は自分の未来を創造しつつも今を楽しむしかないと心に決めた。

「(ガラン)…いらっしゃませ♪」

店内は意外とシンプルでさまざまなお客でにぎわっていた。

…その中にある二人が混ざっていた

「ねぇ、あれって小山さんと元輝じゃない?」

「ホントだ、何してるんだろう?」

二人は和やかなムードで話している。明久は明日、須川に密告すると決意した。

「ちょっと行ってみない?」
「でも元輝君いい感じですし・・・それに『おねーさまー!!』えっ!?」

そこへ、突如乱入者。

「探しましたおねーさま!」
「みっ、美春!?」

突如現れたのは、髪を縦ロールにした文月学園の制服を纏う少女、清水美春。

「誰?」
「知り合いよ」
「違います、おねーさまの恋人です!」

その言葉を聞いて、全員の視線が美波に集中。

「お前、そんな趣味があったのか?」
「ないわよ!うちは普通に男の人が好きなんだから!!」
「いけませんお姉さま、男などという愚劣なブタなどにそのような事を!!」

その次に、明久を見据えて射殺す様な視線をぶつけ、コンパスやカッターなどを取り出した。

遠くから騒ぎに気づいた元輝は異様な殺気を感じ取り、ボールを取り出す。

「この薄汚いブタ共は、今美春が処分いたします!」
「ええっ!? なっ何でいきなり?」
「問答無用、おねーさまと映画を見たその罪、死んで償いなさい!!」
「やっ、やめなさい美春!」

美波の制止も聞かず、明久めがけてカッターを投擲。
だがそれは、元輝のシュートによって阻まれた。

「いきなり出てきて攻撃とは、穏やかじゃないな」
「あなたは、工藤新一…まだ、人間でいられる唯一の存在…」
「…そうなんだ」

判断基準がよくわからない

「それよりブタの分際でお姉さまに近づくなど、万死に値します」
「ちょっと待ってよ、えーと、清水さん?だっけ」
「黙りなさい!!ブタ!!」

両手にカッターを構え、明久に襲いかかる美春。
だが、トランプ銃によって飛ばされた。

「…さすがですね、工藤新一。(ボソッ)…やはり私が認めただけあります…」
「えっ、なに?」

聞き返そうとしたとき、交番のおまわりさんがやってきてしまった。


「さて、逃げるか」
「え? あっ、そっか。こんな場所で騒ぎ起こしたから……」
「当然、問題になるわよね」

と、一目散に駆け出した。


それから、少し離れた地点にて。

「もうっ、どうしてわたしまで……」
「あの場合、他にどうするんだよ?」

友香は不満気に文句を漏らす。

「はぁっ……はぁっ……」
「大丈夫? 姫路さん」
「ごめん、ウチの所為で……」

その片方では、疲れ切った瑞希に明久と美波が心配そうに寄り添っている。

「気にするなよ美波。あんなのに絡まれてる訳だから、むしろ同情する」
「ありがとう……美春ったらもう」
「……まあ、わたしも悪かったわ。それで、これからどうする?」


『おねーさまー』

「しまった。もう追いついたか!」
「ううん、ちがうみたい。あれみて」
美波が指差した先には御坂美琴とツインテールで腕章をつけた女の子がいた。

『おねーさまー、ここずっとおねーさまにあってなかったので心配しましたわ』
『バカ、離れなさい黒子』
『いやですわ、おねーさま。これは黒子を一人ぼっちにしている罰ですわ』

みんなは唖然としてその光景を見ていた。

「・・・美春みたいな子はいっぱいいるんだ」












そのあと先程みたいな襲撃があるかもしれないと考えると、そのまま続ける気にもならないので、

今日はこのままお開きになった。






明日の三人の運命は絶望であることを知らずに…



















〜学園都市〜

「…通行が……に行った……という報……ます」
「早く……を探……せ。そして……もだ」







日曜日の午後は厚い雲に覆われていた

-12-
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