小説『とあるバカとテストと超電磁砲 文月学園物語』
作者:御坂 秀吉()

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バカと姫路と学園祭 〜きーさーまーらー!!!〜

桜色の花びらが坂道から徐々に姿をけし、代わりに新緑が芽生え始めたこの季節
僕たちが通う文月学園は、新学期最初の行事である『清涼祭』の準備が始まりつつあった。
色々な出し物の準備をすすめているクラスがほとんどである。

そして、我らがFクラスはというと──

「吉井!こいっ!」

「勝負だ、須川君!」

Fクラスメンバーの大半が準備もせずに野球をしていた。
教室では秀吉や姫路、島田の3名がゆっくりと読書をしていたりと自由にしていた。


俺、大濱元輝はもちろん・・・

「須川ゎ!ホームランだぁ!」

もちろん参加していた。



雄二は明久になにやら指示を送っている。えーとなになに?

(次の球は)

うんうん

(カーブを)

あ、カーブか

(バッターの頭に)

「「それって反則じゃない(の)!?」」

明久も同じタイミングで反応した。

確かにそれならホームランを打たれる心配はそっちにはないけど何か違うよな!?

明久が雄二を無視してボールを投げようとした時、
「貴様ら、学園祭の準備をサボって何をしているか!」
「ヤバい! 鉄人だ!」

Fクラス担任で補習担当である西村先生(通称 鉄人)が走ってきた。

「吉井!貴様がサボりの主犯か!」
「ち、違います! 雄二です!雄二が提案したんです!」

しかし全力で逃げている明久に信用性は全くない

「ともかく全員教室へ戻れ! この時期になっても出し物が決まっていないのはうちのクラスだけだぞ!!」






「まったくお前達は……少しはまじめにやったらどうだ。」

「いや、実際この教室で何ができるんですか?」
ところどころに蜘蛛の巣ができている教室を指差す上条に鉄人は答えた。

「この教室だと少し・・・いや大分無理があるな」

「ですよねwてつ・・・西村先生さすがわかってます!」
あのおだて方からして明久がなにやら思いついたようだ。

「ん?吉井どうした急に?」

「実はいい提案があるんです!」
明久の言葉で全員の視線が明久にあつまる。

「というと?」
雄二も興味を持ったようだ。

明久は深呼吸をして答えた。
「今年、僕たちのクラスはAクラスと合同でに出し物をする!!!」



「「「「「何ぃいいいい!?」」」」」



Fクラス全員から驚きの声が上がる。

「どういうことだ?」

「さすがにこの教室にお客を入れて商売するのはまずいでしょう?
だからAクラスと一緒に出し物をすればいいんじゃないかなーって」

明久にしてはいい考えだ。

元輝が感心しているさなか雄二は異様に食らいついている。

「理由はわかったが、何故Aクラスなんだ?」

「だって、Aクラスが一番頼めそうでしょ?」

「まあそうだが・・・ほかにもDクラスとかもいるじゃないか?」

「だめだめ。それじゃウチが倒れちゃう!」
美波が一生懸命訴えてきた。それほど清水のストーカーがいやなんだろう。
あっそうだ!よし・・・

「しかしなぁ、急にそんなことAクラスに言ったってOKになるわけ・・・」

「本当か、優子?そうかよしわかった。あとでな」
元輝は電話を切った。
「どうしたの、元輝?」

「Aクラスの許可がとれた。OKだそうだ」

「なんと、お主は仕事が早いのう」

いろいろ説得できるからな。霧島とか…………久保とか

「あーそれでなんでAクラスは許可したんだ?」

「いや、当麻。考えてみろ。雄二がいるんだぞ」

「ああそうか」

「それで通じるなよ!!」
クラス代表は大声をあげていた。

「いいじゃんか。俺このクラスの学園祭実行委員だし。それに皆もいいと思うんだけどな〜。
これを理由にAクラスの女子と会話できたりするんだし、
もしかしたら一緒に休憩して仲を深めることだできるかもしれないしな。
皆にとっても悪くは無いと思うけどどうかな?」

「「「「「意義なし!!」」」」」

「というわけで、俺たちは特別にAクラスと合同で出し物をする。いいですか西村先生?」

「元輝!おまえおかしいだろ」

「教員代行者の決定だ。俺は構わないぞ」
一人はほっといて教師の許可をもらったことだし、

「じゃあAクラスで決まった出し物を発表する」

「もう決まっておるのか!?」

「ウチのクラスがモタモタしているからだろ。」

「で、何をするの?」

「確か・・・メイド・執事喫茶だったな」

『メイドだと!?』

『最高だな』
ところどころでうれしい雄叫びとまだ文句をいってる雄叫びが聞こえる。

「で、もう時間が無いからこっちでだいたいの役割とか決めたからな。
ちなみに、この中の男子で料理が作れる奴は挙手してもらっていいか?」

元輝が尋ねると、約10名ぐらいの男子が手を上げた

「今手を上げた男子は全員厨房担当で、
その他の男子はホール担当で、明久と雄二と俺は両方とも担当でよろしく!」

「「「「「了解」」」」」

「ちょっと待て。何で俺が両方なんだ?」

雄二が反抗してきたが

「……やってくれたら翔子対策してやろう」

「喜んでやろう」

一瞬で俺についてくれた

「あと上条は皿とか運ぶなよ壊れるから」

「そりゃわかってますよ。はぁー不幸だ・・・」

「で、女子は姫路と島田はホール担当で良いかな」

「わかったわ」
島田は快く聞いてくれたが、

「あの私も料理のお手伝いできますけど…」
姫路はそうこなかった。

「いや…姫路も島田もかわいいからホールオンリーで頼みたいんだ」
爆弾発言してきたのでやんわりと断りを入れた。

そこで明久達から『ナイス』というアイコンタクトが目に入った。よくわかってるな。

「それと、秀吉も両方で頼む」

「なぜじゃ?」

「正直メイド服姿の秀吉を名前も知らないような男達に見せたくない!!
・・・と優子が言ってたからな」

俺はきっぱりと宣言した

「・・・姉上にはもう殺されたくないのう。わかったいいじゃろう」
優子に変装した時の仕打ちはまだ覚えているだろう

「と言う事で、姫路はホール専門でどうかよろしく頼む」

「はい、そういう事なら」

「じゃあ今からひとまずAクラスと合流するから、
男性陣は装飾などの力仕事よろしく。ここで良い所見せてこい。そしたら好感度が上がるかもしれないからな。
女性陣は優子の指示に従ってくれ。
で、明久と雄二と当麻は俺のサポートで、ムッツリーニは衣装についてよろしく頼む」

俺はそう言うと雄二と明久と当麻を連れて学園長室に向かった
この間行ったFクラスの不備について言いつもりだ。



俺達は学園長室へと向かうと


『……賞品の……として隠し……』

『……こそ……勝手に……如月ハイランド……』


学園長室前まで来ると、部屋から誰かが言い争っている声が聞こえてきたが
あまり関係なさそうなので気にしないことにした。

「「失礼しまーす!」」

明久と雄二がドアをノックして学園長室に入っていく。

「本当に失礼なガキどもだねぇ。普通は返事を待つものだと思うんだよ」

俺と当麻もずっと廊下に立っている訳にもいかないので中に入る。

「やれやれ。取り込み中だというのに、とんだ来客ですね。
これでは話を続けることもできません……まさか、貴女の差し金ですか?」

そう言ったのは教頭の竹原先生だ。
鋭い目つきに眼鏡をしていて、
クールな態度で一部の女子生徒に人気が高いらしいが俺はコイツの事が嫌いだ。
コイツの目は俺たちを見下しているような感じがするからだ。

「馬鹿を言わないでおくれ。どうしてこのアタシがそんなセコい手を使わなきゃいけないのさ。
負い目があるというわけでもないのに」

「それはどうだか。学園長は隠し事がお得意のようですから」

「さっきから言っているように隠し事なんて無いね。アンタの見当違いだよ」

「……そうですか。そこまで否定されるならこの場はそういうことにしておきましょう」

そういって、竹原先生は部屋の隅を一瞬見た。

「それでは、この場は失礼させて頂きます」



「んで、ガキども。アンタらは何の用だい?」

「今日は学園長にお話があって来ました」

流石の雄二もここは敬語なんだな、ま、当たり前か。
さっきの雄二の態度なら思いっきりタメ口だと思ったんだけど。

「私はそれどころじゃないんでね。学園の経営に関することなら教頭の竹原に言いな。
それと、まずは名前を名乗るのが社会の礼儀ってモンだ。覚えておきな」


「俺は2年F組代表の坂本雄二。それでこちらにいるのが大濱元輝と上条当麻。
   最後に紹介するのは―――」

雄二は名前を名乗ってから明久を示して紹介する。


「―――2年生を代表するバカです」


「ほぅ……そうかい。アンタとアンタがFクラスの坂本と吉井で
風紀委員と幻想殺しかい」

「ちょっと待って学園長! 僕はまだ名前を言ってませんよね!?」

明久が少し涙目だ。

「気が変わったよ。話を聞いてやろうじゃないか」

「ありがとうございます」

「礼なんか言う暇があったらさっさと話しな、ウスノロ」

「わかりました」

この人の性格は前から知ってたから特に気にしないが、
それよりも初見のひとにこれだけ罵倒されているのに落ち着いている雄二に驚いている。

「Fクラスの設備について改善を要求しにきました」

「そうかい。それは暇そうで羨ましいことだね」

「今のFクラスの教室は、まるで学園長の脳みそのように穴だらけで、
隙間風が吹き込んでくるような酷い状態です」

あっ、言動が少し綻びだした

「学園長のように戦国時代から生きている老いぼれならともかく、
今の普通の高校生にこの状態は危険です。健康に害を及ぼす可能性が非常高いと思われます」

(結構きれてるな)
上条はいきなり殴りださないか雄二が心配になってきた。

「要するに、隙間風の吹き込むような教室のせいで体調を崩す生徒が出てくるから、
さっさと直せクソババァ、というワケです」

雄二。もう丁寧語ですらないぞ・・・

「……ふむ、丁度いいタイミングさね……」

ん?何か言った?丁度いい?

「よしよし。お前たちの言いたいことはよくわかった」

「え? それじゃ、直してもらえるんですね!」

「却下だね」

「雄二、このババァをコンクリに詰めて海に捨ててこよう」

「明久何を言ってるんだ。そんなことしたら地球に悪いだろ少し考えろよ」

上条も我慢に疲れたらしい
俺は自前のポーカーフェイスでまだ我慢できるが、これ以上言われると安全は保障できない。

「まったく、このバカ共が失礼しました。
どうか理由をお聞かせ願えますか? ババァ」

「そうですね。教えて下さい、ババァ」

「理由を教えてください ババァ」

「お願いします ババァ」

「お前たちは本当に聞かせてもらいたいと思っているのかい?」

学園長も呆れているが知った事ではない

「理由も何も、設備に差をつけるのはこの学園の教育方針だからね。
ガタガタ抜かすんじゃないよ、なまっちょろいガキども」

「それは困ります! そうなると、僕らはともかく身体の弱い子が倒れて」
一生懸命明久が説明しようとしたが

「―――と、いつもなら言っているんだけどね。可愛い生徒の頼みだ。
こちらの頼みも聞くなら、相談に乗ってやろうじゃないか」

学園長が驚き発言をした。さっきの呟きからしてこうなるのは想定内だが
あの学園長が俺たちを可愛い生徒とよぶとは・・・何かあるんだろう。

「その条件とはなんですか?」

黙っている雄二は気にせずに話を進めた。

「清涼祭で行われる召喚大会は知ってるかい?」

「なんだそれ?」

「幻想殺しくんはまだ知らなかったね……まあ清涼祭で単体戦と2人1組のタッグマッチ戦の
召喚大会が行われるんさね」

「そうなんですか」

「じゃ、その優勝賞品は知ってるかい?」

「え? 優勝賞品?」
明久もそれは初耳のようだ

「優勝者には正賞に賞状とトロフィーで優勝者には『黒金の腕輪』と『白金の腕輪』の2つの腕輪に
『如月ハイランド プレオープンプレミアムペアチケット』を渡すつもりさね」

ペアチケットで雄二が反応していた。

「はぁ・・・。それと交換条件に何の関係が」

「話は最後まで聞きな。慌てるナントカは貰いが少ないって言葉を知らないのかい?」

「知りません」

「威張って言うことじゃないぞ明久」
ちょっと突っ込んでやった

「まあいいさ、この副賞のペアチケットなんだけど、
ちょっと良からぬ噂を聞いてね。できれば回収したいのさ」

「回収? それなら、賞品に出さなければいいじゃないのか」

「そうできるならしているさ。けど、この話は教頭が進めたとは言え、
文月学園として如月グループと行った正式な契約だ。今更覆すわけにはいかないんさね」

確かに学園長は召喚システムの開発に手一杯だから
経営に関しては教頭に一任しているみたいだったな。

「契約する前に気付けよ。学園長だろ」
そういえば上条がほとんど敬語を使っていない。

「うるさいガキだね。黒金の腕輪と白金の腕輪で手一杯だったんだよ。
それに、悪い噂を聞いたのは最近だしね」
学園長が眉をしかめる

口調はともかく、責任は感じているようだ。

「それで、悪い噂ってのは何ですか?」

「つまらない内容なんだが、
如月グループは如月ハイランドに一つのジンクスを作ろうとしているさね。
『ここを訪れたカップルは幸せになれる』っていうジンクスをね」

「それのどこが悪い噂なんだ? 良い話じゃないか」

「そのジンクスを作る為に、プレミアムチケットを使ってやって来たカップルを
結婚までコーディネイトするつもりらしい。企業として、多少強引な手段を用いてもね」

「な、なんだと!?」

今まで黙っていた雄二が大声を上げた。

「どうしたのさ、雄二。そんなに慌てて」

「慌てるに決まっているだろう! 今ババアが言ったことは、
『プレオープンプレミアムチケットでやってきたカップルを如月グループの力で強引に結婚させる』
ってことだぞ!?」

「いや、言い直さなくてもわかっているんだけど」

「そのカップルを出す候補が、我が文月学園ってわけさ」

「クソっ!うちの学校は何故か美人揃いだし、試験召喚システムという話題性もたっぷりだからな。
学生から結婚までいけばジンクスとしては申し分ないし、如月グループが目をつけるのも当然ってことか」

「ふむ。流石は神童と呼ばれているだけはあるね。頭の回転はまずまずじゃないか」

学園長だからか、やたらこいつらに詳しいな。
試召戦争とかで有名になったからか?

「雄二とりあえず落ち着きなよ。如月グループの計画は別にそこまで悪いことでもないし、
第一、僕らはその話を知っているんだから、行かなければ済む話じゃないか」

「…絶対にアイツは参加して、優勝を狙ってくる……行けば結婚、
行かなくても『約束破ったから』と結婚……。俺の、将来は……」

雄二は何を約束したんだ?

「ま、そんなワケで、本人の意思を無視して、
うちの可愛い生徒の将来を決定しようって計画が気に入らないのさ」

うそだな。これはあとで本当の理由を聞くか。

「つまり交換条件って言うのは―――」

「そうさね。『召喚大会の賞品』と交換。それができるなら、教室の改修くらいしてやろうじゃないか」

「無論、優勝者、準優勝者から強奪なんて真似はするんじゃないよ。
譲ってもらうのも不可だ。私はお前たちに優勝をしろ、と言ってるんだからね」

出るからには優勝したいしな

「僕たちが優勝か準優勝したら、教室の改修と設備の向上を約束してくれるんですね?」

「何を言ってるんだい。やってやるのは教室の改修だけ。
    設備についてはうちの教育方針だ。変える気はないよ」

「明久。それは流石に欲張りすぎだ。」
雄二は安全第一でいきたいらしい。

「ただし、清涼祭で得た利益でなんとかしようっていうなら話は別だよ。
特別に今回だけは勝手に設備を変更することに目を瞑ってやってもいい」

「わかりました。この話引き受けます」

「そうかい。それなら交渉成立だね」

「ただし、こちらからも提案がある」

話がまとまったから教室に戻ろうとしたら雄二が学園長に話しかけていた。

学園長「なんだい? 言ってみな」

「召喚大会は形式はトーナメント制で、1回戦が数学だと2回戦は化学
といった具合に進めていくと聞いている」

「それがどうかしたかい?」

「対戦表が決まったら、その科目の指定を俺にやらせてもらいたい」

「ふむ…いいだろう。点数の水増しとかだったら一蹴していたけど、
それくらいなら協力しようじゃないか」

「……ありがとうございます」

雄二には何か考えがあるんだろうな

「さて。そこまで協力するんだ。当然召喚大会で、優勝できるんだろうね?」

「無論だ。俺たちを誰だと思っている?」

2年の最低クラスの代表とバカ代表と実質LEVEL5と幻想殺しだぞ

雄二はやる気全開のようだな。

「アンタら4人のうちどっちかが勝てばいいからね」

「絶対に優勝して見せます。そっちこそ、約束を忘れないように!」

「やるからには優勝を狙わないとな」

「それじゃ、任せたよ」

「「「「おうっ!」」」」

そういって俺達は学園長室を後にしてAクラスへと向かって行った。






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「……おねーさま、なぜ、飛び級など…わたくしだって…
…風紀委員の力を使えば……」



   ・・・
「……あの人に会うって、ミサカはミサカは……」





あるところでは怪しげな影がうずめいていた

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