小説『とあるバカとテストと超電磁砲 文月学園物語』
作者:御坂 秀吉()

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バカとクラスと召喚戦争 〜これより・・・異端審問会を始める〜




気が付いたらなんか暗い所にいる。
あれ?西村先生と別れてからの記憶がない。
どうしたっけ?

『気が付いたようだな。』
黒服でマスクをしている男に話しかけられた。
『諸君、ここはどこだ?』
「「「最後の審判を下す法廷だ!」」」
『異端者には?』
「「「死の鉄槌を!」」
『男とは?』
「「「愛を捨て、哀に生きる者!」」」
『宜しい。これより2−F…異端審問会を始める。罪状を読みあげたまえ』

2−F?じゃこいつら、クラスメート?まずい、いきなりすぎて、わからない。

「ハッ、まずは一人目から申し上げます。
被告人、吉井明久(以後この者を甲とする)は本日昼休み、姫路瑞希(以後この者を乙とする)の愛妻弁当を食べただけでなく、島田美波(以後この者をぺったんことする)から抱擁を何度も受けていたようであります。したがって、甲の厳重な罰と乙やぺったんこの監視をし、再発防止を『簡単に述べたまえ』」
「吉井が女子にモテモテなのがうらやましいであります!!」
『判決、死刑』
「ねぇ、ちょっと待ってよ!てかなにここ?」
吉井も動揺している。この法廷が初めてらしい。

「次に二人目であります。
被告人、大濱元輝(以後この者を元とする)は、甲と同様に乙の愛妻弁当を食べただけでなく、登校中にAクラス、木下優子(以後この者を優とする)と『簡単に言うと?』」
「大濱がAクラスの木下さんと仲良くしていたのがうらやましいのであります!」
『判決、死刑』
あ、絶対判決は死刑になるな。
元輝は明久のほうを見た。すると、明久がアイコンタクトを送っていた。
ええっとなに、(ナワヲホドイテ、スガワクンヲケリトバシテ、ニゲヨウ)
うんわかった。この怪盗キッドをなめるなよ!
『それでは、被告人の処刑の準備を始める「「せ−の」」なに?ごはぁ』
二人で、一緒に須川君を蹴り飛ばした。

「こっちだよ、大濱君」
明久についていくと、屋上への非常階段になっていた。
「はぁ、はぁ、でどうするの吉井君?」
「そんな、はぁ、吉井君だなんて。明久でいいよ。僕も元輝って呼ぶから」
「わかった、はぁ、で明久、どうするの?」
明久はあるものを指差した。それは、
「・・・放送器具」
そう、明久は全校放送でFクラスを鎮めようとしているのだ。
「よし、わかった。」
というと元輝は放送器具で1階〜3階までかかるようにした。
「いくぞ。」
『ピンポンパンポン  船越先生、船越先生、Fクラスの覆面を被ったやつらが、船越先生と恋愛について大事なことを話したいそうです。ご迷惑をおかけしますが、廊下をうろついている覆面を被った、2−F生徒に会いましたら、お声をおかけください。Fクラス代表、坂本より連絡でした。』


船越教諭 45歳独身
婚期を逃し、ついには単位を盾に生徒に交際を迫る様になった女性教師。


「「「ギャー、やだやだ、ギャー」」」

下の悲鳴はスルーしとくか。
「元輝、君は一体・・・」

「大濱元輝、高校生探偵ですよ」




異端審問会は船越教諭の参加により壊滅された。
雄二の明日のBクラス戦の作戦会議も終わって、秀吉と元輝は一緒に帰っていた。
「しかしのう、あやつらがとうとうそこまでいってしまったか。これじゃと明久は不運が続くじゃろうな・・・上条と同じように。」
「かもな・・・秀吉を女としてみていないか心配なんだが。」
「それなら大丈夫じゃろう。わしはどこからどう見ても『女だな』・・・」
「・・・やはり、見た目じゃ女に見えてしまうじゃろうか・・・」
秀吉の顔は少しさびしそうだった。

「あら、元輝君、秀吉、今帰り?」
後ろから、聞き覚えのある声がした。
「こんなところで何してるんだ、優子?もう殆どの生徒は帰ってる時間なのに」
「職員室で明日配る資料の整理を高橋先生に頼まれたのよ。それより、昨日の試召戦争はどうだった?の」

新学期早々行われた試験召喚戦争は、当然話題にもなる。

「あーうん、えーと」
「?どうしたの」
「姉上、じつは、坂本ではない坂本が、姉上のクラスの御坂というやつの能力を使ってみんなを巻き込んでかったのじゃ・・・・」

「・・・不思議ね」
「どうやら教師の間では誰かはわかっているようなのじゃが、こちらには情報が来てないのじゃ」

えっ?教師の間ではわかってるの?

「ふーん。それより、あなたたち、まだほかのクラスと戦うの?」
ここは、最終的にはAクラス、とは言わないほうがいいだろう。
「まだ考え中だ」
「ふーん。でも、ほかのクラスでは開戦しないかって声が広まってるみたいよ。」
「まあ最低クラスがいきなり2つ上のDを破ったって事は、大きな波紋になるだろうからな」
「全く、余計な騒動の火種を作ってくれたものね。まあ学校からしてみれば、好都合なのでしょうけど」
元々学力低下の解決の為のシステムが、試験召喚システム。
テストの点数こそが全てであり、優等生こそが正義が文月学園の理である。
だから現状に甘え、ぬくぬくと過ごしていれば寝首を掻かれる。
そのいい教訓になるだろう。

「そういう意味では、俺達の決起も無意味じゃない訳だ」
「ふーん。ま、そんなことも言ってられるのは、時間の問題ね!Fクラスは学力が低いんだからいくらなんでもA,Bクラスには勝てるはずないもの。」
「それは最もだけど、立場と扱いは人を変えるって言うし、明日からは違うかもしれないだろ?」

優子はAクラスに所属する才女なのだから当然なことだろう。
少なくとも、Fクラスのバカ共とは全然違うという事は。

「私も、もっと頑張らないと」
「ならまずは、家の中を下着姿でうろつくのはやめたほうが、あっ、姉上っ、違っ! その関節は、そっちに曲がらな……」

市街地に、断末魔が響き渡った。

「痛いのじゃ……復活に時間がかかるまでやることないじゃろ姉上」
「うるさいわね、私の評判に傷がついたらどうする気よ!?」
「その前に弟とはいえ、堂々と同級生に暴力をふるう時点でおかしくないか?」

怒りのオーラを纏い、先ほどやられた個所を摩る秀吉を睨みつける優子。
実は彼女、学園では模範的優等生である事で有名だが、プライベートでは・・・だった。

「ん?元輝よ、あれは明久ではないか?」
秀吉の視線の先には、とぼとぼと歩いている明久の姿。
流石に暴力的な姿を見られるのは勘弁なのか、優子もそれを聞いて殺気を納めた。
「よっ、明久、どうした?」
「ん?ああ、新一に……あれ、秀吉? どうして女子の制服着てるの?」
「まて、確かに高校生探偵とは言ったが、名前が新一とは言ってないぞ。」
「ワシはこっちじゃ。それはワシの姉上じゃ」
「姉上って、じゃあもしかして木下優子さん? へえっ、確かに秀吉そっくりの美少女だね」
「ワシを基準にするでない」
「しかも俺は無視か!」
秀吉とは仲が良くても、優子とは縁の薄い明久。
基本遊ぶのは明久の家である事が多い為、彼女とは面識がなかった
「彼が“観察処分者”の吉井明久君? へえっ、どんな極悪人かと思ったら、意外とまともそうね」
「極悪人って……ねえ、僕の評判って一体どうなってるの?」
学園1のバカと呼ばれているのだから、そういわれるのも無理もない。

「それより、どうしたんだ明久? 偉く落ち込んでるようだけど?」
「あっ、うん。ちょっとショックなことがあってね」
「ショック? ……何があった?」
元輝がかけより、明久と向き合う。
それを優子が、顔を赤くしてそれを凝視し始める。
「……」
「フムッ、そういえば、姉上の部屋に元輝のあっ、姉上っ、違っ! その関節は、そっちに曲がらな……」

訂正、優子が秀吉に関節技をかけつつ、その光景を凝視し始める。

「姫路さんに、好きな人が居るって話を聞いてね」
「ああ、なんだその事か」
「あいたたた……なんじゃ、随分と面白そうな話ではないか?」
「姫路さんって、あの姫路さん?」
恋の話ともあって、木下姉妹(?)もそれに駆け寄った。
秀吉は先ほどやられた関節技の痛みで、よろよろと遅れての到着。

「それが誰かっていうのが、わかっちゃったから」
「おっ、そうなんだ」

元輝はにやにやとし始め、優子と秀吉はその様子を見て元輝の考えに感づいた。

(姫路さんって、まさか吉井君の事を?)
(うむっ、明久に話しかけられ動揺しておったり、お弁当を作ろうかと提案したりとかの)
(そうなんだ。彼も“観察処分者”なんて言われてる割には、意外とやるわね)

勘づいてからは、2人してこそこそと内緒話。
美人姉妹の内緒話と言うのも絵になる光景だが、そこは割愛。
「でも意外だったな……まさか姫路さんが、雄二の事が好きだなんて」
「ああ、そりゃ確かに…………「「はい?」」」

元輝と秀吉、優子が明久の口から出た答えに、素っ頓狂な声を揃えてあげた。

「ちょっと待て。今なんつった?」
「だから、雄二だよ。驚くのも無理ないかもしれないけど」
「一体なぜ、そのような答えに至ったのじゃ?」
「さあ? でも、姫路さんも雄二と話してる時一生懸命だったし、あそこまでだったらクラスメイトとして、応援してあげないとね」
と、明久は自分の家の方向へと走り去ってしまった。
その場に残された人間は……
「あれって多分、坂本君に吉井君の事を相談してた場面に出くわした……そう考えても良いのよね?」
「うむっ、確実にの……姫路も気の毒にのう。自身の行動が、これ以上ない程裏目に出るなどとは」
「明日は違う意味でも、大きな波紋が起きそうだな」


3人は思い思いに家に帰った。


次の日の朝

優子は朝文月学園につくと、Fクラスに行った。

通りすがりの平賀源二が優子を言いながらボソッと漏らした。
「もしかして、木下さんってFクラスの誰かとと付き合ってるって言う噂、本当なのかな?」
「どうしたの、代表?」
「いや、何でもない。それより、テストの勉強しないと」

事なきを得たとはいえ、Fクラスに負けた敗残勢力であることには変わりはない。
なので来るべき次に備え、勉学に励むようになったという。


そして、旧校舎にて。

「なっ……何ここ? Fクラスって、こんなに酷いの?」

教室に出向くなり、優子はその光景に顔を顰めた。
設備に差がある事や、それによりFクラスは最低である事は知っていた……が。

開け放たれている扉から見える光景は、Aクラスである優子には衝撃的なものだった。
確かにこれでは、今すぐ変えたくなっても無理もないかもしれない。

「怪しい……何で、この設備を取り換えなかったの?」

キノコの生えた腐食畳、脚の折れた卓袱台、ぼろぼろの座布団。
中には卓袱台を木工ボンドで修理していれば、窓をビニールとセロテープで修繕している生徒の姿も。

「ん? 姉上、何故ここに?」

その中の弟である秀吉が気付いて駆け寄った
それを聞いて、元輝も同様に。

「どうした優子、Aクラスの一員様がFクラスに何の用だ?」
「何の用だじゃないわよ。一体どういう事? 折角だからって顔出してみたら、設備を入れ替えていないなんて」
「あ、言ってなかったっけ?代表の意向でかえてねんだ。詳しくは俺も知らん」
詳しく言うとちょっとこれからの戦争に支障が出るかもしれないから、伏せておいた。

しかしその言葉に、優子は引っかかりを感じた。
・・・が、所詮はよそのクラスである自分に、ばらす訳がないとあきらめる事に。

「「「うあ〜……」」」
「あの、み、みなさん、大丈夫ですか?」
「「「あっ、ああ……貞操は守る事が出来て、良かった」」」

ふと、卓袱台に突っ伏して唸り声をあげているほぼすべての男子と、それに心配そうに見守る2人の女子の姿が目に入った。

「ん? あの人たち、どうしたの? テスト疲れってだけじゃなさそうだけど」
「昨日の放送について」
「ああっ、船越先生に大勢の男子が男女の会合の呼び出しをしたって話よね?」

全校放送であった為、優子も例の放送は聞き及んでいた。

「あやつらも災難じゃったのう。まあ、それの引き金はあやつらだし、自業自得かのう。」
「ああ。須川は近所のお兄さん(37歳独身)を紹介して、事なきを得たらしいけど、後の奴らはどうなったんだか」
「Fクラスにも色々あるのね……それより」

優子は少し視線をずらし、明久の席の隣の席に座る瑞希にピントを合わせた。
幸せオーラに身を包みながら、ほかの人たちより明久を微笑ましく見守る姿を見て一言。

「確かに、見ればわかるわね? 同じ女性として、羨ましい程に」
「そうじゃのう。何故あれで坂本に好意があると、断定できるんじゃろうか?」
「わからない。けど明久の場合、言える事はただ1つ」

コホンっと咳ばらいをし、一言。

「鈍感な人間と言うのは、総じて自信を持っていない人間の事だと思う」
「なるほどのう。可能性を考えつく事は出来ても、自信の無さ故に否定してしまうと言った処じゃろうか? 確かにそれでは、上手くいく訳がないわい」
「見た目はそれなりにまともだから、傍から見ればお似合いなのにもったいない」

はぁっ、と3人そろってため息をついた。

「というか、お主はやはり探偵じゃのう。恋話でも本領発揮じゃな」
「べつにそこまでじゃないぞ」
「へぇー、本当の探偵なんだ・・・」
優子も尊敬のまなざしを向けている。だから、そこまでじゃないって・・・




お昼休み

「おまえら、疲れているとこ悪いが、昨日行ったように作戦を実行する。」
昨日作戦練っといて正解だった。今じゃみんな話し合う気ないもんな。
「明久、Bクラスに宣戦布告して来い」
「断る! 雄二が行けばいいだろ」
「やれやれ、それじゃジャンケンで……」
「ちょっと待った!!」

2人の間に入ったのは、不幸少年 上条当麻だった。
その姿に、若干2人どころか、瑞希をはじめとする他のメンバーも気迫を感じた。

「俺が行こう。Bクラスの代表、根本っていうあぶないやつって聞いたから」
「根本だと!?」

根本恭二

とにかく評判が悪い男で、目的のために手段を選ばない事で有名。
“カンニング常習犯”“ケンカで刃物はデフォ装備”“球技大会で一服盛った”とまで言われる程。

「そうだとしたら、妙な事をされないように牽制した方が良い」
「そうか。確かに明久じゃ、インパクトに欠けるな……」
「だったら雄二が行けばいいだろ。でも、それじゃ上条君1人っていうのも……」
「じゃ、明久いけ。」
元輝が明久を無理やり立たせた。

「……また、僕は危険人物として知れ渡るのかな? 365度どう見ても美少年なのに」
「バカとしてなら知れ渡ってるぞ? ちなみに5度多い」
「うむっ。実質5度じゃな」
「元輝も秀吉も嫌いだ!」


そして放課後。

「それで、明日の午後からかの?」
「ああ。根本恭二の姿もきっちり確認したし、上条も堂々と宣戦布告したからまず問題ない……と信じたいな」
「うむっ。でもあの根本じゃ。卑怯な手を使われると言うのもあるから警戒しないといけないのう。」

Fクラスでトップたちの会議がおこなわれていた。
議題は、明日からの試召戦争と……敵側の代表である根本の卑怯な手段への警戒について、話し合っていた。

「まず狙われるとしたら、姫路じゃな」
「姫路さんは心配だな……ん?」

ふと、明久が目を向けた先には……

「……あれは」
「ん? どうし……」
「しっ!」

明久をひっつかんで、物陰に隠れる元輝。
皆も段ボールの陰に隠れた。
口をふさぎつつ、もう片方の手で目標に指差した。

「改めて、警戒した方がよさそうだな」
「うむっ。事によっては、の」

と、こっそりとその場を後にしようとした所で……

「元輝、明久! おまえ達何やってるんだ!?」
「え? 雄二?」
「なにが?」
「何でおまえ達が抱き合ってるかなんだが・・・」

ふと、元輝と明久は自分達の現状を省みる。
“ある物”から隠れる為に、秀吉を抱き寄せる形で……。

「おまえら、そういう関係か『ちがう、これは誤解だ!』」
「そんな・・・吉井君は男の子が好きなんですか・・・」
「でも所為で木下優子が元輝と付き合ってるって、噂が流れてるんだけどな・・・」
「その話くわしく聞かせ・・・あ、須川君着替えないで・・・すまん、帰る!!」

こうして、Bクラス戦の準備は整ったのであった。(?)

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