（う〜ん・・・この・・・人?何なんだろう?さっきからあの3人ジッと見て・・・）
魁は目の前にいる黒ウサギについて考えていた。もちろん本人は初対面であり、尚且つ此処は異世界なのである。ウサ耳生やした胸元開けた服を着ていたりガーターがエロさを引き立てているミニスカを着た生物が、ジッと見ているなんて怪しさ満点である。しかし、魁は他の人よりも好奇心が旺盛（過ぎ）なのだ。元の世界ではそのせいで少しばかり痛い目に合っていたりする。
（うわぁ、あのウサ耳本物なんだぁ・・・。いいなぁいいなぁ、触りたいなぁ・・・）
等とそんな事を魁が思っている時、黒ウサギは個性的すぎる3人たちにどうファーストコンタクトを取ればいいのかを真剣に考えており、背後から迫る脅威に気が付いていなかった。
「ていっ」
「フギャ!」
魁は黒ウサギのウサ耳を掴み目を輝かせながら弄り始めた。突然自分の耳を掴まれた挙句、好き勝手に弄られ始めた黒ウサギは隠れていたのにも関わらず悲鳴を上げ茂みから飛び出す。それが、更に自分を苦しめることになるとも知らずに・・・。
「な、何!?」
「・・・・・・ウサギ?・・・と女の子?」
「・・・へぇ」
思わず飛び出した黒ウサギは目の前にいる3人を見て滝のように汗を出した。背中には今も目を輝かせながらウサ耳を弄る魁。目の前には先程まで不平不満をぶちまけ、現在は怖い顔で怪しく笑う問題児たち。3人はゆっくりと黒ウサギに歩み寄って行く。・・・そして今日2回目となる黒ウサギの悲鳴が響き渡った。
「―――あ、あり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いてもらうために小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはきっとこのような状況を言うに違いないデス」
「いいからさっさと進めろ」
半ば本気の涙を浮かべながらも黒ウサギは話を聞いてもらえる状況を作ることに成功した。3人は黒ウサギの眼の前の岸辺に座り『まぁ話は聞いてやろう』的な雰囲気で耳を傾けていた。残りの1人の魁は3人とは違い『早く話さないとまたウサ耳弄るぞコラ』的な雰囲気で目をキラキラさせていた。黒ウサギは一度咳ばらいをし両手を広げ
「それでは定例文で言いますよ?言いますよ?さあ、言います! ようこそ"箱庭の世界"ヘ!我々は皆様にギフトを与えられた者たちだけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚いたしました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです!既に気づいていらっしゃるでしょうが、皆様は普通の人間では御座いません!その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその"恩恵"を用いて競い合うためのゲーム。そしてこの箱庭の世界は強大な力を持つギフト保持者が、オモシロオカシク生活出来る為に造られたステージなのでございますよ!」
両手を広げ箱庭をアピールする黒ウサギ。そこに飛鳥は質問するために挙手をした。
「まず初歩的な質問からしていい?貴女の言う"我々"とは貴女を含めた誰かなの?」
「YES!異世界から呼びだされたギフト保持者は箱庭で生活するにあたって数多とある"コミュニティ"に必ず属していただきます♪」
「嫌だね」
「属していただきます!!そして『ギフトゲーム』の勝者はゲームの"主催者"が提示した賞品をゲットできるというとってもシンプルな構造となっています」
・・・・・・と黒ウサギを中心にこの世界についての説明を受けている中、魁はコッソリと十六夜に近づき黒ウサギたちに聞かれない様に話しかけた。
「ねぇねぇ、あのウサギの太腿からお尻にかけたラインってエロくない?」
「ほぅ・・・。ガキのくせに良く分かってんじゃねぇか」
「むっ。失礼だね。これでも俺は中学は卒業してるんだけど?」
「ハッ。そいつは失礼。で、それだけを話しに来た訳じゃねぇンだろ?」
「話が早くて助かるよ。あのさ・・・黒ウサギの話が終わったら一緒に"世界の果て"見に行かない?」
それを聞いた十六夜はオッと驚くがすぐにニヤリと笑みを浮かべ
「実は俺も同じことを考えてたんだ。いいねぇ・・・お前とは何かと気が合いそうだ。・・・そう言えば、名前を聞いていなかったな。俺の名前は『逆廻十六夜』。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子揃った駄目人間だから用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれ」
「プッ。なにそれ。取り説とかあるの?・・・まぁいいや。俺の名前は『金剛魁』。ロマンと未知が大好物の非凡系"男子"の魔術師、かな? これから宜しくね、十六夜」
そう言って魁と十六夜は互いに笑顔を浮かべ固く握手をした。