小説『死神転生』
作者:nobu()

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部屋に戻ってきた俺。そこへある来訪者があった。


「神崎さんちーっす!」

「…何だ、お前か…」

「ちょ!何その顔!?俺たち親友でしょ!?」


俺がものすごく疲れた顔で言うと、焦ってあたふたしている。全く、面白い奴だ。
こいつは風見勝平(かざみしょうへい)。
十三番隊の中で、俺が最も親しくしている奴だ。ちなみに皆からは勝(しょう)と呼ばれている。
俺らはいつもこんな感じで仲良くやっている。


「ふっふっふ…。しかしだね神崎君。君がそんな態度をとっていられるのも今のうちだよ?」

「おい勝…何をする気だ…?」


勝平が後ろへ手を伸ばすと…。
そこから紙袋が2つ出てきた。


「…紙袋?」

「甘いね、神崎君。これはだね…十三番隊からのキミへのプレゼントなのだよ!」


ジャーン!という効果音がなりそうな雰囲気と共に、紙袋から取り出したのは紙の束。…プレゼント?


「それがプレゼントだって?」

「あぁ、そう。まあ、報告書っていうか始末書っていうか。はい!頑張って書いてね!」


…マジかよ…。こんだけの分厚さって俺そんなやばいことしたのか?


あ、そうだ!と言って勝平は紙袋からもう1枚かみを取り出す。


「えーっと、これはお前へのお手紙…ってのは冗談だ。まぁ、簡単にいえばお前が今回起こした問題の内容と、それに対する処罰が書いてある。

なになに…?命令外での勝手な戦闘、及び家屋の破壊、その修復にかかった費用、うわぁ、まだあるよ…。他には…「分かった、もういい。」分かった分かった、これ以上読まないからそう怒るなって。」


…最初は分かったけど、他のやつは何だ?ポデーラの奴、俺の知らないところでいったい何をしたんだ?
これも後で聞いておかないとな…


「まあ、処罰の方は、マシな方だぜ?しばらく任務に行くことが禁止されただけだからな。…確か2ヶ月だったかな?色々処理してやったのもうちの隊だったんだ。特に隊長と副隊長はお前の処罰を軽くしてもらうためにスゲェ抗議してたみたいよ?とりあえず回復したら礼に行けよー。」

「そうか、みんなそこまでしてくれてたのか…。」

「ま、そゆこと。じゃ、俺は仕事に戻るから!しっかり休めよ!」

「おう、いろいろサンキューな。」

「感謝するのは退院してからにしろよ、じゃな!」


そう言って勝は去って行った。
一人部屋に残された俺はため息をついて呟く。


「はぁ…これって、謹慎処分ってことだよな…しかも2ヶ月…。」


2ヶ月なんてのは俺が現世で仕事してた長さと同じじゃん…。
これから何しようかな…

とりあえず始解は会得しておきたいよな。…後は―――――


そんなことを考えながらその日は終わった。


















そして退院の日、4番隊隊舎の入口で、俺と卯ノ花さんが向かい合っている。


「それでは、今回もお世話になりました。」

「もう、これ以上お世話にならないことを願いたいものですね。」

「ははは、そうですねー」(まぁ、無理だろうな!)


今、俺の内の声が聞かれたら俺はきっとまた入院する破目になるだろうからやめておく。


「ですが神崎さん。これから2ヶ月ほどお仕事には出られないのでしょう?
これから一体どうするおつもりですか?」

と卯ノ花さんが質問してきた。まぁ、普通はどうするか疑問になるだろうしな。


「とりあえずやりたい事が2つ3つ決まっているので、この期間でそれをやってしまおうかと思っています。」

「そうですか、くれぐれも無理だけはなさらないでくださいね。これ以上ここに運び込まれるようなら、あなたに何らかの処置を考えねばなりませんので。」


ちょ、卯ノ花さん!笑顔でそんなこと言わないで!後ろから何か黒いオーラ見えてるから!!

「は、ははは、そうですねー」
内心焦りつつも、俺も笑顔で返す。…棒読みなのが自分でも分かる。

「それじゃ、そろそろ行きます。今までありがとうございました!」

「はい、お体には気を付けてくださいね。」


はーい、と返事をして、俺は四番隊舎を後にした。








「さて、と。」

十三番隊に赴いて報告やら礼やらを言ったあと、再び俺は瀞霊廷(せいれいてい)の中を歩いていた。
今は俺は先ほど言ったやりたい事の内の一つをするために、ある場所へ向かっている最中だ。


「お、ここだな。」
俺が見上げた先にあるのは、十一番隊の隊舎だった。


「たのもー!」

ちょっと場違いな言葉を言いながら中へ入っていくと、案の定、十一番隊のみなさまに睨みつけられました。

「あ゛ぁ!?んだテメェ!」「ここが十一番隊の稽古場だと分かってんのか!?」「どこの隊だゴルァ!!」

ガラの悪そうな人たちが次々と俺に向かって声をかけてくる。というか叫んでいる。
すげー歓迎されてんなー、俺。

ここは十一番隊のの稽古場。そう、俺はこれから2ヶ月間、復帰するまでここで稽古を付けてもらおうとしているのである。


「ゴルァ!無視すんなや!!」「ちょ、テメェ!どこ行くつもりだ!?」「だからどこの隊だゴルァ!」

次々と声をかけてくる奴らを無視して奥へと進む。そしてある人の目の前で止まり、正座した。

「十三番隊所属、神崎圭と申します。ぜひ、これから2ヶ月ほど、ここの稽古に参加させていただけないでしょうか?」

「あぁ?面倒だ、よそに行きな。」


そう言ったのはここ十一番隊の隊長、更木剣八。


「まぁ、そう言われると思ってました。」

「ならさっさと失せろ。見ての通り今は稽古の途中だ。テメェのせいで中断しちまってるがな。」

「それについては申し訳ありません。ですが、ここで下がるわけにも行きませんので…」

「テメェ…」


一向にあきらめない俺に、徐々に剣八がイラついてくる。
流石にちょっとヤバいと思った俺は、仕方なく切り札を出す。


「…じゃあこういうのはどうですか?更木隊長、あなたが指名した人と俺が戦います。
俺がその人の攻撃を5分間避け切ったら合格。一撃でも決められたら不合格。
もちろん俺からは手を出さないものとします。」

「…ほう?」


よし、興味を持ってくれたみたいだ。

「ねー剣ちゃん、面白そうだしやってみようよー!」


そう言って剣八の背中からひょっこり顔を出したのは草鹿やちる。十一番隊の副隊長だ。
それが最後のひと押しとなって、完全にやる気になってくれたみたいだった。

「いいだろう。ただし時間は10分間だ。いいな?」 「…はい。」


後は誰と戦うかだな。できれば一角とかじゃなければいいんd「一角、お前が行け。」…マジすか?

しかし、当の本人は乗り気ではないみたいだ。

「隊長!こいつの話に乗るんですか!?」


むー、中々手強い奴だな…。しかたない、ここは…


「じゃあ、目隠しも付けてやる、でどうでしょう?」

「テメェ!なめたこと言いやがって…!」
俺がそう提案すると、馬鹿にされていると思ったのだろう。一角が激怒した。

「おもしれぇ!いいじゃねぇか!!」
剣八さん大喜び。

部下に手ぬぐいを持って来させ、俺はそれを付ける。

「後悔すんじゃねーぞ…!」

一角は完全にやる気になったようだ。
「始めろ」
剣八の合図とともに、10分間の戦いが始まった。



「うおらぁ!」

剣八の合図とほぼ同時のタイミングで一角が斬りかかってきた。もちろん持っているのは斬魄刀ではなく木刀だが、当たれば当然ただでは済まない。
そんなことを考えつつその攻撃を軽々避けた。

「んな…!?」

予想通り驚いているようだ。だが、そこは流石剣八に選ばれただけはある。すぐに気を取り直してこちらへと向かってくる。
しかし、このくらいの攻撃なら避けるのもそう難しくはない。一角は激怒していて攻撃が単調になっている。そして、それをかわす。更に怒る。

「くそっ!何であたんねぇんだよ!!」

これなら10分はすぐに終わるだろう。と、思っていたのだが…


「ちょっと一角。」

「あぁ!?何だ、邪魔すんじゃねぇ!」


なんとまぁ、綾瀬川さんじゃないの。まさかここで介入してくるとは…。


「今の君の戦いは見ていて楽しくないよ、いつもの戦いを楽しむ君はどこに行ったんだい?」

「…。」

「当たってないんじゃなくて、君の攻撃が読まれてるんだ。いつもの君ならそんなことはないはずだよ?」


あーあ、余計なこと言ってくれちゃって…。

一角は無言でこそあるものの、今まであった怒気はもう伝わって来ない。
これは俺も真面目にやらないとマズイかな…?


「けッ、余計なこと言いやがって…」

そう呟いた瞬間、一角は再び斬りかかってくる。
しかし俺もそれをギリギリのところで避ける。

…さっきよりも振りが小さくなって無駄が無くなったかな…。

避けたところから、すぐさま次の斬撃が来る。今までの戦いとは明らかに動きが違う。
今までの無駄な動きで随分と体力を使ってたと思うんだけどなぁ…。
流石は剣八さんが選んだことはある。

そんなことを考えつつまた来た斬撃を避ける。

「たく、面倒だ…」

そう一角が言うと、今度は大振りの一撃を繰り出す。…大振りなのに速い。反則でしょ…。

それをバックステップでかわす。だが、一角はその行動を読んでいたのか、大きめにバックステップをした俺に打突を繰り出してきた。


「へぇ、考えた、ねっ!」

大きくバックステップをしてしまったために、打突を避ける余裕がなかった。

(でも当たるわけにもいかないんだよね!)

俺は着地してすぐに、突っ込んできた一角の方へと突っ込む。
驚いた一角には少しの隙ができてしまった。
その隙を突いて、一角の脇へと入りこみ、そのまますり抜けていった。

「ちくしょう!もう少しだったのによ!!」


そう言ってもう一度斬りかかろうとした瞬間、目の前に剣八が立った。

「!?ちょ、たいty―――!!―――!」

抗議の声を上げようとした一角の口をふさいで、無理やり後ろへと下がらせる。
一角は何をするのか分かっていたが、渋々下がっていった。


しかし、何が起こっているのか全く分からない圭。
急に静かになり何が起こるのかと身構えていた。

(もう10分経ったか…?いや、多分まだだな…。)


そう考えていると、不意にチリン、と音がした。

次の瞬間、いきなり恐ろしいほどの殺気と刀を振るう音がした。

「…ッ!?」
咄嗟に体をひねったが、右の頬を刀がかすった。


…て、え!?刀!?

俺が動揺していると、声をかけられた。

「10分だ、目を開けろ。」

手ぬぐいを外して目を開けると、斬魄刀を持った剣八が前に立っていた。

「合格だ。今日からここで好きなだけ修行しな。」

しかし、俺は何故か後ろに下がっている一角が気になってしょうがなかった。


「えっと、最後の一発って、お前の…?」

「ちげぇよ、…隊長のだ。」


それを聞いた瞬間全身の血の気が引いた気がした。

「は、はは、じょ、冗談きついよ…?」

「嘘じゃねぇ、最後のは俺だ。」


横から剣八が言ってくる。

………い、生きてて良かったぁぁぁぁ!!!!!


全身で生きてる喜びを感じた圭だった。














無事に?十一番隊で稽古をつけてもらう約束をした俺は、とりあえず十三番隊の隊舎に戻ろうとしていた。
任務には出れなくてもあそこで寝泊まりしてるからな…。あぁ、これからやることないなー…。
いや、雑用ならいくらでもあるか…。

そんなことを考えながら歩いていると、不意に後ろから声がした。

「おーい!君!ちょっといいかなー?」


…どこかで聞いたことある声?一体誰だろ…う………

後ろを振り返った直後、俺の体は固まった。


「ふぅ、君、神崎君だよね?十三番隊の。」

「え、えぇ、そうですけど。お、俺なんかに何か用ですか?………藍染隊長。」


後ろから走ってきたのは、こともあろうが、あの藍染隊長だった。
やべぇ、何がヤバいかわからないけどとにかくヤバい。
体の硬直が治らない。だって、俺は今、ラスボスと言っても過言ではない人の目の前にいるんだもの…


「はぁ、はぁ、ちょっと待ってね、今息を整えるから。」


そう言って、すーはーすーはーと息を吸って吐いている。
…こんなことしなくてもスタミナ十分にあると思うんだけどな、恐ろしい子!

さっきから俺が硬直していることに気がついた藍染は声をかける。


「あ、ごめんごめん、いきなり声を掛けられてビックリしてるよね?
実は君とは少し前から話をしたかったんだ。でも現世の方に行ってるって聞いね。
この間帰ってきたって浮竹隊長に聞いたものだから、よければ君と話をしてみたいなぁって。」


…俺とお話がしたいだって?冗談もほどほどにしてくれよ、怖いよ!
と、とりあえず、ここは何か返事をしないと…!でも何言えば…?!


「あ、藍染隊長とお話ができるなんて、光栄です!」

と、思ってもいないことを言ってしまった。あーあ、何してんだ、俺。

「そうか、僕も君と話ができて嬉しいよ!こんなところで立ち話も何だから、移動しようか?」


そうして、されるがままに連れて行かれる俺。…どうなっちゃうんだろう…。

でも。


ちょっと楽しくなって来たかな。


ここで藍染と親しく…は、なれないだろうけど、もしかして今後を変える、何かの分岐になるんじゃないかな?

やっぱり、昔の藍染は親しみやすいキャラしてるなー。…演技なんだけど。

だけど、演技してない藍染とお話ししてみたいなー。なんて思っている俺だった。

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