小説『死神転生』
作者:nobu()

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藍染とのお話





「神崎君、そこに座ってください」

「あ、は、はい!」


今俺は近くの食事亭に連れて来られて藍染隊長と向かい合って座っている。


「あ、すみませーん」


藍染隊長はお店の人を呼んで何やら注文をしている。



「神崎君は何か食べるかい?僕に付き合ってもらうお礼に何かおごるよ。」

「え!?そ、そんなの悪いですよ!」

「いいのいいの。気にしないで。…じゃあ、僕と同じものでいいかい?」

「あー…すみません。ありがとうございます。」

「だから気にしないでって。 じゃあ、これでお願いします。」



かしこまりました。と言って、店員は席を離れて行った。



「えっと、藍染隊長、俺と話がしたいっていうのは…?」

「あぁ、大した話じゃないよ。ただの世間話がしたいんだ。
 神崎君、死神の仕事には慣れたかい?」



本当にただの世間話を…?怪しい…。


でも疑ってもしょうがないしなー…



「えぇ、だいぶ慣れてきました。十三番隊の皆さんにも良くしてもらってますし。」

「そうか、それは良かった。…神崎君みたいな子が僕の隊だったらよかったんだけどね。」



え?と俺はよく分からない、という振りをした。

つまりは、この先俺が邪魔になりそうな存在だから、さっさと自分の駒にしておきたいという意味だろう。

まぁ、本音だね。超オブラートに包まれた。



「あぁ、気にしなくてもいいよ。ただそうだったら面白そうだなーと思っただけさ。」

「そ、そうですか…。」


面白そう、ね…


「えーと、藍染隊長、僕のどこがいいんですか?」

「ん?どこがいいって、そうだなー…」


そう言って俺をじっと見つめてくる。
何か品定めをするような…。


「まだまだ強くなりそうで、育てがいのありそうなところかな?」

「育てがい…」

「それと、何か秘めてる、そんな感じがするから。」


そう言って、目を細めてふっと藍染隊長は笑った。
普通に見てれば、ただの笑顔だが、何故か俺には薄気味悪い笑顔にしか見えなかった。


もしかして、ばれてる…?
まあ、藍染隊長なら知ってても不思議じゃないし

ここは、俺から仕掛けるしかないか。


「藍染隊長は、俺の右目と、左腕のことをどう思いますか…?」


それを聞いたとき、藍染は少しだけ驚いたように見えた。


「どうして、僕にそのことを聞くのかな?」

「どうしてって…周りからどう思われてるのか、ずっと気になっていて…。でも、周りにそんなことを気軽に相談できる人もいなくて…。こういう言い方は変ですけど、藍染隊長は信頼できそうな人ですし、勇気をもって聞いてみようかな、って…。」


もちろんほとんどが嘘です。はい。藍染隊長は信頼できそうってとこは本当だけどね。
…味方であれば。


「…最初はかわいそうだと思っていた。あんな事件に遭ってしまってね。でも今は…」

「今は…?」

「羨ましいと思うよ。」

「それってどういう…?」


今のは本音?それとも…


「あぁ、気に障ったらごめんね。…でも、そのおかげで君は死神になる決心ができた。違うかい?」

「確かに…」

「それが無かったらたとえ死神になってもうまく行かなかったんじゃないかな。」


この人にしてはいいこと言う…。でも…


羨ましいって、絶対この身体のこと言ってる気がする…。
ここは、はっきりさせるべきか…


「藍染隊長は、俺の身体をどこまで知っているんですか?」

「あ、ご、ごめんね!怒らせるつもりはなかったんだよ!」


俺が何も知らないくせに…と思ってると勘違いしてるんだろうか、それともこれも演技か。


「いえ、怒ってませんよ。大丈夫です。ただ、単純に藍染隊長がどこまで知ってるのかなって思って…」

「…右目は失明。左腕は傷跡がすごい…。だからその眼帯と手袋があるんだね。」

「えぇ。そうです。…表向きは。」


まさか、ここで俺が語るとは思わなかったのだろう。
分からない程度だが、ほんの一瞬だが、顔をしかめたのが分かった。


「それはどういうことだい?」


あくまで向こうも演技をしてくるようだ。まさか、この人が知らないということはありえないだろう。


「いえ、演技はいいんです。知っているんですよね?僕の身体のこと。」









「ふふ、ふふふ。いつから気付いていたんだい?」


若干本性を現したみたいだ。

お前が母ちゃんの腹の中にいたころから、ってここで言ったら殺されそうな気がする。
言ってみたかったけどな…(笑)


「まぁ、藍染隊長ならきっと知っていると思いまして。で、興味があるんですよね?」

「そうだね、とても興味があるよ。虚との一体化は、僕の研究の内の一つだからね。」

「ですが、俺にそんな事を話してもいいのですか?もしかしたら誰かに話すかもしれないですよ?」


まぁ、実際に言うわけはないが。そしたら一瞬で消されるしね。…今の俺なら。


「僕が君の秘密を知っていることに気づいていたんだ。簡単に話したりなんてしたらどうなるか、君なら分かっているだろう?」

「えぇ、まあ。」


全勢力を使った口封じ…なんてしなくても、俺の狂言ってことで終わるだろうな。
虚に取りつかれていた、とか言って。俺が討伐対象になって…。あとは想像がつくだろう。

だが、下手なことをしないで、興味を持たせておけば、手を出されるなんてことはないと思うんだよな。

「で、俺をどうしますか?」

「さっきも言ったように、君が羨ましいよ。ぜひ、僕のお手伝いをしてくれたら嬉しいんだけどね。」

「あー、それまた今度でいいですか?しばらくは、普通に過ごしたいんで。」


まぁ、仲間になる前に逃げるが。


「僕が何をしようとしてるか知ってるのかい?」

「んー、よくは分からないけど、なんとなく想像できるくらいです。」

「どうやら僕が想像していたよりも頭の回転が良いみたいだね。ますます欲しくなった」

「お手伝いはしても仲間になるのは勘弁してほしいですねー…
今日おごって頂いた分のお手伝いならしてもいいですよ。あ、でも体の解剖とかは却下で」


下手に体なんて触らせたらどうなるか分かったもんじゃない。
それは残念、と言ってしばらく沈黙が流れた。


「お待たせいたしましたー」

「お、ようやく来たみたいだね」


その場の雰囲気とは不釣り合いな間延びした店員の声がし、注文したものを持って来た。
さっさと食べて帰りたい。


「じゃあ、頂きます。」

「どうぞ。」


そう言って俺は注文したものを食べ始める。
その後も少し話をした。だが、俺の話ではなく、最近の尸魂界の話とか、今までどんな仕事をやって来たかとか。

そうこうしている内に、大分時間が経っていた。


「おや、もうこんな時間だ。今日は付き合わせてしまって悪かったね。」

「いえ、俺の方こそ、おごっていただいて、ありがとうございました。このお礼はいつか。」


先程ちょっとだけ本性を表したが、もう今は元に戻っている。
では、と、藍染と別れて帰って行く。
焦りすぎたかな?でも、言わなくてもばれてたし…

そんな事を考えながら帰って行った。

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