小説『死神転生』
作者:nobu()

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目を覚ますとそこは知らない場所だった。
あれ、なんか前にもこんなくだりがあった気が…
まぁ、いいや。

天井が見える。ここはどこかの家の中らしい。


(どうやら転生は成功したみたいだな…
 さて、とりあえず起き上がって状況確認を………あれ?)


立てない。というか、うまく動けない。

そこで俺はようやく気がついた。


「あぶあぶあぶばぁ!(俺赤ちゃんじゃん!)」


そういえば、神様が寿命をリセットとかいってたけど… こういうことだったのか…。


「まぁ!あなた!圭が何か話してますよ!!」

「おう!さすが俺達の息子だ!天才だ!!」


ということは、この二人が俺の両親だな。
俺は圭というのか… 生前とあまり変わらない名前でよかった…。
実際俺のことをあだ名として[圭]と呼ぶ人は少なくはなかった。


(まあ、これなら混乱もしないだろう。よかった、ヘタな名前を付ける親じゃなくて。)


最近は悪魔ちゃんだの天使ちゃんだの、リアルでそんな名前を付ける親もいるからな。
この世界でもそんな奴がいるのかはわからんけど。


(あ、そういえば、ここってどの世界なんだろう…?)


そうだ、行く世界は3つに絞れたものの、どの世界についたのか、まだ俺は分からないのだ。
その世界の特徴だったりと、判断できるものに俺はまだ出会っていない。


(この家のつくりからして…NARUTOはまずないな。ということは残りのどちらかか…)


家の中は俺のいた世界とほとんど変わらない。ここはリビングだろうか?
ここからはテーブルとキッチンが見える。それ以外には……………猫!?


「ばぶぁ!(猫だ!)」


そう、俺は猫好きなのだ。犬より猫派だ。犬も可愛いとは思うが、猫のほうが大好きだ。


「ん?なんだ、圭?……あぁ、イべか。イべ、おいで!」


そういうとイべという名前の黒猫がこっちに寄ってくる。


「よーし、待ってろよー…ほら!」


そう言って父さんは俺のベットにイベを乗っけてくれた。


「あぶばばー!(可愛いー!)」


そういって俺は寄ってきたイベの頭をなでてやる。
イベは『ニャァー…』と気持ちよさそうな声を出して、俺の手に頭をグリグリしてくる。


「ははは!見ろ母さん!もう圭のやつはイべと仲良くなってるぞ!」

「まぁ!流石私たちの息子ね!天才だわ!!」


………思ったがこの二人はもしかして親バカなのだろうか?いや、親なんてのは皆こんなもんなの
かもしれないな。

まあ、俺には親ってものが早くからいなかったから、この感じがとても懐かしい。








俺の親は二人とも俺を残して死んでいってしまった。母は俺が5歳の時に事故で。
父は俺が11歳の時に病死してしまった。
両親二人とも、俺には甘く、ときには厳しく、だがやっぱり甘く。
俺は二人が大好きだった。

母が事故に会い、いなくなってしまったときに、まだ死というものを理解していない子どもの
俺は、父さんに、「お母さんは、どこに行ったの?」と、聞いた。


「…圭太。母さんはな、ほら、見ろ。あのお星さまの、一つにな、なったん…だ…。」


もうすぐ夜が明けそうな空の、一番輝いた星を、俺に指差して見せてくれた。

だんだん父さんの声が小さく掠れていくのがわかった。


「お父さん大丈夫?どこか痛いの?」俺はお父さんのお腹が痛いのかと思って、父さんの
お腹ををさすって言った。

「圭太、ありがとう。お前は…優しい子、だな…」


涙を溜めた父さんは俺のほうを向き。しゃがんで俺を抱きしめてくれた。強く。強く。





父さんは母さんが死んでしまった後も、変わらずに俺のことを愛してくれた。

だが、5年後。10歳になった数日後。俺に、父さんはあることを伝えた。


「圭太。話があるんだが、いいか?」

「なーに、お父さん?」


どこか不安そうな父さん。そして、何か決意をしたのか、その口を開いた。


「圭太。父さんは、病気なんだ。」











そうして1年後、父さんはこの世を去った。原因はガンだった。
最後まで、俺のことを気にかけてくれていた。


「圭太、ごめんなぁ。お前だけ置いていくことになっちまってよぉ…。」

「いや、お父さん。僕は大丈夫だよ。」


母さんの死から5年も経っている。幼いなりに俺も死というものがなんなのか、理解していた。


「それより、お父さん、あったかくしないと風邪ひいちゃうよ? ね?おふとんかけよ?」

「あぁ、そうだな。圭太、お前は、優しい子、だな…」


5年前の、母さんの死んでしまった日と、同じ言葉だ。


「うん。僕は、優しい子に、なるから。絶対。だから、大丈夫だから。」

「そうか…。父さん、眠くなってきたなぁ…。おいで圭太…」


そう言って父さんは俺の頭を撫でてくれた。父さんの手は、優しく、大きかった。


「お父さん…」


ダメだ、泣いちゃダメだ。父さんの前では、最後まで泣かないって決めていたのに…。



「眠くなっちゃった…?じゃあ、おやすみなさい。」


「あぁ、おやすみ圭太。………"またな"」


それが父さんの最後の言葉だった。




「うん…………またね。」




父さんがゆっくりと目を閉じると、横の機械から音が鳴り始めた。
その途端、病院の中が騒がしくなる。
看護師さんの一人が、俺の背中に手を当て、部屋の外へと移動するよう促した。
部屋の外に出た俺は、泣いた。 生まれて初めてだ、こんな大泣きをしたのは。


その日は一晩中泣き続けた。


まるで今まで溜まっていたものを全て流しだすように。



父さんは俺のために、その後のいろいろをちゃんと手配してくれていた。
俺は父さんの弟さんに引き取られ、そこでその後の人生を過ごした。
父さんの弟さん、成二さんと、その妻の春香さんは、11歳で両親をなくした俺に、
優しくしてくれた。
甘やかし過ぎもせず、厳しすぎもせず。いい人達だった。




(思えば、急に死んじまって、あの二人には悪いことをしたな…)

未練がないなんて思っていたが、そんなことはなかったなぁ…
今頃むこうの世界では、あの二人はどんな風に思っているだろうか。
あまり悲しんでくれてないといいな…


そんなことを考えていたら、眠くなってきた…。


「あら、あなた、圭が眠たそうにしてますよ?イベをベットから降ろしてやってください。」

「ん?あぁ、そうだな。遊んだから疲れたんだろう。ふふっ、流石我が息子。眠たそうな顔も
実に可愛い!」

「確かに圭は可愛いですけど、そんな大きな声だしたら起きちゃいますよ。」


俺は確信した。彼らは立派な親バカなのだろうと。


「おっと、そうだな、よし、イベ、こっちにおいでー」


そう言って父さんはイベを抱きかかえる。『ニャー』と間の抜けた声を出し、イベはベットから
去って行った。 そして俺は、心地よい眠りに落ちて行った。





まだ圭は知らない。この世界がどこなのか。

そして、なぜ自分の名前があまり変わっていなかったのか。

前世の両親が、"圭太"に何を残していったのかも。

-2-
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