小説『死神転生』
作者:nobu()

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俺が転生してから、3年が経った。


そうだ、この辺で俺の自己紹介をしておこう。

転生先の俺の名前は、神崎圭 家族構成は、父さん母さん、俺と猫のイベの3人と1匹暮らしだ。


母さんの名前は神崎巴(ともえ)。母さんの家系は代々巫女をやってきたらしい。
現在は巫女を引退して、専業主婦である。


父さんの名前は神崎裕也(ゆうや)。父さんの家系は…特に特徴はないらしく、
父さんは大工の棟梁をやっている。


イベは俺が生まれる前に、怪我しているところを父さんが見つけ、手当したら懐いてしまったとか。


そして、喋ることや、普通に歩くことができるようになった3歳の俺はあることを計画、実行しようとしていた。

(ていうか、3年も経ったのに…この世界がどこなのか分かってないなんて、これはマズイ…)


何がマズイかって?それは作者の都合g…いや何でもない。
とりあえず、俺は近くの公園に遊びに行きたいという、最もらしい理由を付け、外にこの世界のヒントを探すために、母さんのお許しを頂こうとしていたのだが…


「公園に遊びに行きたいの?じゃあお母さんと一緒に行きましょうか」


おいおい、それじゃあ俺の真の目的である探検ができないじゃないか…


「違うのお母さん。僕ね、ひとりであそびに行ってみたいの!」


俺がこの3年間で習得した無邪気スマイルを振りまいてみるが、


「ダメよ、圭ちゃん。お外は危ないんだから、ひとりじゃお母さん心配なの。」


何という障壁… 黙って出ていくのはバレたらあとあと面倒だしなぁ…。
どうしたものか…。

その日は作戦を練りつつ、今では俺の愛犬ならぬ愛猫となったイべと遊びながら考えることにした。


(何かいい作戦は…………ん?)


すっかり夜になってしまい、俺は夜ごはんを食べ終わりイベと遊んでいたのだが、ふと、ついているテレビの方に意識をやると…『ドーレミファーソーラシードー♪ドーシーラーソーファーミーレード♪』
なんと、皆もよく知るあの番組がやっているではないか。
そう、小さな子供が初めてのお使いに出かけるという…


(これだぁ!!)


なぜこの世界でもこの番組をやっているのかって?そんなこと気にしてる場合じゃない。

そして、思いついた作戦を実行するために、俺はソファーで座ってこの番組を見ている父さんと母さんのもとに行く。


「ねぇ!お父さんとお母さん!僕、ひとりでお使いしてみたい!」


突然のことで唖然とする二人。
しばし何かを考えているようだったが、その顔を上げると、


「ふむ、圭も、もうそんな年頃になったのか…。」

「まぁまぁ、圭ちゃんも頼れる男の子になったものね。」


父さんと母さんはこの年頃の子が、テレビの中の子どもを見て、対抗心を抱いたのだろうか?と思って
いるようで。


「少し心配ではありますが、どうしましょうか、あなた?」

「むう、圭が行きたいと言っているのだから、俺は行かせてやりたいと思うのだが…」


よし、ナイスだ父よ!
俺は心の中で父さんに称賛の拍手を送っていたが、


「だが、圭。すぐに帰ってくるんだぞ?あぁ、でも道に迷ったらどうしよう…なんなら俺が
 影からこっそr「それじゃあ意味がありませんよ?」そうか…」


母さんの注意を受け、父さんは考え込んでしまった。


「大丈夫だよ、僕ちゃんと帰ってこれるもん!」

「そうか、圭ももう3歳になったんだもんなぁ…まぁ、いいか。な?母さん?」

「はぁ、しょうがないですねー…」


少し心配そうだが、しぶしぶOKをくれたのだった。






次の日、ようやく俺の冒険が始まった。
が…


(やはり親バカ、というべきか。………店近すぎだろ!)


俺のことを心配してくれたからだろうか。朝母さんが俺に持たせてくれた買い物のメモと、手書きの地図。店までの距離は………5分もあれば着いてしまうような距離だった。

これでは冒険の意味が皆無になってしまう。
早急に買い物を終わらせて、少しの時間冒険するか…

なんて考えていると、目の前に何か白いものが………?


(あれ、これって………!?)


やばい、非常にまずい。俺の目の前には、白い――――――――――虚がいた。
まさかいきなり出会ってしまうとは……
だが、これで確定した。俺のいる世界は、BLEACHだということが。


そして、目の前にいる虚は、俺のことを見て、怯えてしまって動けない俺を――――――――――――








無視して歩いて行った。

(って、ええ!?)

運が…よかったのか…?あの虚はまだ成り立てなのだろうか…?

成り立ての虚は、まず最も親しかった人、愛していた人の魂魄を襲うんだったか…。
逆に、既にその人を殺している虚は、他の人の魂魄も襲うようになる、と。


(とりあえず、助かったのかな…?)


どうしようか…あ、まずは買い物を済ませないと…

我に返った俺はとりあえず、歩いて5分程度の店まで行き、買い物を済ませた。
お店のおばちゃんに、「買い物かい?えらいねぇ。」と褒めてもらったが、まともに相手をしている余裕はなかった。「えへへ」と、とりあえず営業スマイルを振りまいておく。


(さて、この後はどうするか…)


選択肢としては、
1、叱られるのを覚悟して冒険へ
2、そのまま帰宅


3、目の前の猫を追いかける


3だ。絶対に3だ。

店を出たところ、猫が通りかかったので、俺は少しの間なら…と、そう思って猫を追いかけて行った。







…………………で、ここはどこだ?
やっちまった。夢中になりすぎた。少しなら、なんて考えは甘かった。これじゃお説教確定だ…


(携帯もないしなぁ…全く、不便だ…)


前はこんなことが起きれば、携帯一つで解決だったのになぁ…。

さて、交番でも探すか。 最終手段としてはその辺の家に駆け込めば問題ないだろう。


しばらく歩いていたが、その場の空気が変わった気がした。


(何だか寒気がする。気味が悪い…。早く誰かに交番の位置でも聞こう…)


しかし、その行動はあるものの登場で遮られてしまう。


(おいおい!?また会うなんてどういうことだよ!?)


前を見ると、俺の30メートルほど前に、さっき出会った虚がいた。
しかも、今回はしっかり俺のことを見据え、こちらに近寄ってくる。


(やばい、俺は何の抵抗もできないじゃないか…!)


死神でも何でもなければ、俺はただの一般人なのである。
なんて冷静に説明してる場合じゃない。逃げないと…!

俺はとっさに後ろへ振り返り、走り出す。


(チッ、この体、走りにくい!!!)


所詮は3歳児の体。走ったところではたから見れば大したスピードではない。

振り返ると、虚も俺の後追って走ってきた。


(何で追ってくるんだァァァァァァァァァァ!!!)


そりゃ、答えは一つ。俺を捕食するために決まってるだろう。


(このままじゃ追いつかれる………うぉ!?)


俺は足が絡まって転んじまった。…終わった。


「ぃってぇ…」


大分派手に膝をすりむいた。

顔を上げると、虚がもう目の前にいた。


(ああ、もうここまでか。そういえば、虚に殺されたらどうなるんだっけな…)


そんなことを考えていると、虚が口を開いた。


『大丈夫か小僧?』


はて?こいつは今何て言ったかの?ちょっと耳が遠くなったみたいじゃ。
………大丈夫だって?何考えてんだ、お前の方こそ大丈夫かよ?


『全く、俺はお前と話ししたかっただけなのによぉ。いきなり逃げ出すんだからなぁ』


………話がしたかっただけ?何かおかしくないか?普通俺は殺されるはずじゃ?


「な、なんだよぉ…」


膝をすりむいた痛みでちょっと涙声になっていた。


『ん?なんだ、膝を怪我したのか。ちょっと待ってろ、今治してやる。』


そう言って虚は俺の膝に手を当てると、次の瞬間、傷はなくなっていた。痛みも消えていた。
虚には再生能力なんてのがあったが、他人にも応用できるのか?

って待て待て、意味が分からん。なんで俺は虚に助けられているんだ?


「…何なの?」


俺は虚に聞いてみる。


『ん?んなことより、お前こそ何者だよ、さっき会った時も思ったが、俺が見えるなんて、霊感の高い人間にしちゃぁ、どこか変なんだよなー…なんて言うんだ?まるで何かに包まれてるみたいな…』


言っている意味が分からない。こいつはホントに何なんだよ…


『ていうか、俺の姿見ても怖がらないなんて。…お前は死神か?』


死神、という言葉にわずかに反応するが、分からない、といった感じで首をかしげる。


『まぁ、こんな餓鬼が死神なわけないか。
 …何だか、お前のこと襲う気になれないんだよなぁ…』


こいつ大丈夫か?絶対まともな虚じゃない…


「あ、母さん待たせてるんだった!」


そこで俺はようやく思い出した。流石に心配してるかも。探してるかな?
ちなみに、うちの母さんは怒ると怖い。


『ん?その袋…何だ買い物の途中だったのか。追いかけて悪かった。じゃあな』


そう言って虚は走り去ろうとするが、



「待って!」


俺は虚を呼びとめた。


『ん?なんだ?俺に用でもあんのか?』


虚にこんなこと頼むのもおかしいかもしれないが…


「えっとね………迷子なの。」


くそ、迷子なんて言葉を今更使うなんて!


『はぁ?迷子?………しょうがないな、連れてってやるよ。ほら、上に乗りな』


そして虚は俺を背中に乗せると、高くジャンプした。


『ちゃんと&#25681;まってろよ?……よっと!』


よく見ると、犬みたいだなこいつ…
この虚はでかくて気づかなかったが、犬見たいな形で、頭からみたいな角が生えている。
…まぁ、そんなことはどうでもいい。
上から町が見渡せる。

………あ、あれは俺が買い物した店じゃないか?


『どの辺りだ?』

「あ、あそこのお店の近くでいいよ」


そうして俺は店の裏の方に降ろしてもらった。


『ふう、ここまでだな、俺も人間助けるなんてどうかしてるよなぁ…』


なんてぶつぶつ言っている。
うん。お前は完全に異常者だよ。助けてくれたことには感謝してるけどな。


「おりがとう!じゃね!」


まあ、深く考えても仕方ないので、俺は虚に別れを告げて家へと走っていく。

しかし、本当に何だったんだあいつは…





…しかし、家の前では、俺を必死に探しまわっていた母さんが待ち構えていた。


「圭!一体どこ行ってたのよ!!」


想像通り、いや、想像以上だ。これは本気で怒っている。


「ごめんなさい…」


俺は半分泣きそうな顔をして謝る。


「全く!心配したんだからっ!!」


そう言って母さんは俺のことを抱きしめる。
なんて言ったらいいんだろうなぁ…虚と会ってました?んなバカな。
深く反省したと、判断したのだろうか、母さんがは俺を家の中へと連れていく。


だが、これで終わったわけではなかった。
家の中には、俺が帰ってこないことを心配した母さんが、連絡して帰ってきた父さんがいたのだ。


「圭、そこに座りなさい。」


こんな父さんは見たことがない。妙な威圧感がある。


「はい…。」


俺は観念して、父さんの前に正座するのだった。


「今まで何をしていたんだ?」


そう言う父さんの声は静かで、その目は、鋭かった。


「えっとね、お店でお買いものしたら、猫ちゃんがいて、その…猫ちゃんのこと、おっかけてたら…………ごめんなさい。」


父さんの顔が怖いため、言い訳はやめて、素直に謝る。
まあ、間違ったことは言っていないんだが。


「母さんや父さんがどれだけ心配したのか分かっているのか?」

「ホントにごめんなさい…」


精一杯の気持ちを込めて謝罪した。
はぁ、猫なんて追いかけないで帰ってくるんだった。


「本当に…心配したんだぞ…」


そう言って、やはり父さんも、俺のことを抱きしめてくれた。

その日は大収穫だった。この世界のことも分かったし、親子の絆も深まった。……気がした。


(心配させちゃって悪かったな…)


お説教も終わり、その後はやることもなく一日が終わった。
疲れが回ってきたのか、俺は睡魔に抵抗することなく、眠りに落ちていった。






そして、俺が寝ついた後

夜、神崎家では裕也、巴の二人が話をしていた。


「…あなた、圭は本当に大丈夫だったのかしら?見たところ何もなかったみたいだけど…」

「ああ、俺ら二人の子だ。きっと圭にも強い霊感があるだろう。
 しっかり見守ってやらないといけないだろう…」

「私もあなたも、霊感がとても強いですからね。
 ………やはり、あなたの家については、話してはもらえないのですね?」

「……済まない。いつか話せるときがきたら、必ず話す。」

「そんなに気にしなくてもいいですよ。
 それより、圭が"あれ"に会って、怖い思いをしてなかったらいいのですけど…」

「確かに、あいつらは危険だが…大丈夫だろう。
 安心しろ、巴。仮にも圭は男の子だぞ?」

「ええ、そうですね。 …ふふっ」

「なんだ、いきなり笑ったりして?」

「いえ、あなたが私の名前を呼んでくれるなんて久しぶりだったので、つい」

「あぁ、確かに。圭が生まれてからは、名前で呼ぶことも少なくなったなぁ。
 …そういう巴さんは俺の名前は呼んでくれないのかな?」

「あら、呼んでほしかったんですか?ならそう言ってくれればよかったのに、裕也さん♪」

「…懐かしいなぁ。昔は毎日こっそり神社の神木の前で会ってたなぁ…」

「ええ、私が巫女だったばかりに…」

「あれはロミオとジュリエットみたいで中々楽しかったぞ?」

「あら、雄太さんはロミオより数倍もかっこいいですよ?」

「そういう巴はジュリエットより数十倍も綺麗だ」

「ふふっ」「はははっ」

「そろそろ寝ないと、明日もお仕事があるのでしょう?」

「あぁ、そうだな。じゃあ、電気消すぞー。……おやすみ、巴。」

「はい。おやすみなさい、裕也さん。」


そうして今日も夜が更けていく。
楽しそうに話をしていた二人は、まるで若い恋人のようで。

静かになった部屋の中を、月明かりが優しく照らしていた。

-3-
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