小説『死神転生』
作者:nobu()

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――side 圭――


あ…れ…?


海燕に助けてもらって、一度体勢を整えた俺はもう一度、虚へと走って行ったのだが…


足に力が入らない。目の前の景色が歪んでいく。
あぁ、ここで来たか…

最近頻繁に起こるようになった目まい。これを忘れていた。
立っていられなくなり、崩れて膝をついてしまう。


何とか離れそうになる意識を引きとめ、虚の方を見たが、これを好機と、虚は俺に憑依するために、自分の身体を俺に向けて飛ばしてきた。


…避けられないかな。。
ここで俺が乗っ取られたら、皆悲しむだろうな。
ここにいる人なら、誰に殺されてもいいや…。
あ、でもルキアにだけは殺させたくないな。これが原因で、せっかく副隊長が生きてるのにトラウマにしちゃうのもやだし…。


ほんの一瞬がとても長く感じられた。これが死ぬということなのだろうか?
なんだか不思議と心が落ち着いている。もう、このまま―――――




「圭はやらせるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」





俺の考えを遮るように勝がそう叫びながら、俺と虚の間に突っ込んできた。
そして勝は俺の代わりに虚の攻撃に当たり…


「勝!大丈夫か!?」


後ろから海燕の声がする。


ごめんなさい。俺のせいで勝が…


出そうとした言葉は喉から出てこない。




『ひひ、儂のことを呼んだか、小僧?』




「勝…?なのか?」

『そうじゃ。貴様等の大好きな仲間じゃぞ?』


ちがう…!逃げて…!


『どうした?何故そんな顔をしておる?ほれ、もっと近くで、見ればよいじゃろう!』


そう言って勝―――いや、虚は海燕へと飛びかかった。


「な…!?ぐっ…」

『どうした!どうして攻撃してこんのか!?ひひ、ひひひっ!』


反応もできずにまともに虚の攻撃を喰らってしまった海燕は、迷いのために攻撃することも無く逃げ回るだけだった。


「くそっ!…おい勝!目を覚ませ!!」

『無駄じゃ、無駄じゃ!貴様の声などもう此奴に届くことなど無いわ!!』


虚は攻撃を緩めることなくどんどん海燕を追い詰めて行く。

反撃できずに防戦一方の海燕は、どんどん傷が増えていく。


『ほれほれ、どうした?このままだとやられてしまうぞ?・・・それとも儂から貴様の仲間を引きずり出そうと考えているのか?それなら無理じゃぞ!儂と此奴は霊体が融合しておる!ただ人間の肉体に入り込んだのとは訳が違うぞ!!もはや此奴を助ける術は無いわ!』


「な…?!」



唯一の希望も潰されてしまった。
ショックを受けた海燕に隙ができ、虚は海燕を吹き飛ばす。


「ぐ…!がぁ…」


そのまま木に激突して、気を失ってしまった。
海燕を吹き飛ばした虚は周りを見渡し――――


林の中で、浮竹を庇っているルキアを見つけた。


『ひひ…、そこにいたか小娘。そうじゃな、この中では貴様が一番うまそうじゃな。…ひひっ』


ゆっくりと虚はルキアへ近づいて行く。


「朽木!逃げ…ごはッ!」


浮竹がルキアを逃がそうとするが、持病のせいで動くことができない。


『そうか、逃げんか。なら望み通りに喰ろうてやろう!!』


ルキアは、ただ茫然とその光景を見ていることしかできなかった。
















――side ルキア――


分からない…。
いきなり神崎殿は膝をついてしまったし、それを助けようとした勝殿に虚が吸い込まれたように見えた。
そして今は勝殿が海燕殿と戦っている…?


「あれは、どういうことなのだ…」


思わずつぶやいた私に浮竹隊長が答える。


「おそらく勝は…ごほっ。虚に取りつかれている…ごほ、ごほっ!」

「う、浮竹隊長!今は喋らないでください!」


さっき血を吐いて倒れてしまった浮竹隊長と私は今、林の中で隠れつつ、そこから外の様子を見ている。


「しかし、勝殿は…。あっ!」


どうすれば助けることができるかと考えていたが、防戦一方だった海燕が吹き飛ばされてしまった。

そして、私を見つけた勝殿がこちらへ歩いてくる。
どうしてだろう、動くことができない。こうしてる間にも、着実に距離は縮んできている。


「何をしている朽木!逃げ…ごはッ!」


浮竹隊長がそういうが、足が動かない。
…怖い。

ここで浮竹隊長を見捨てて私一人で逃げることが。
さっきまで笑い合っていた仲間が私を襲おうとしていることが。
そして動くことができず、何もできない私が。


『そうか、逃げんか。なら望み通りに喰ろうてやろう!!』


そう言って飛びかかってくる。


「朽木!もうそいつは勝ではない!早く…ごほっごほっ!」


私はもう、どうしていいのか分からず、ただそれを見ていることしかできなかった。
勝殿は腕から生えてきた触手のようなもので、私を攻撃しようとしてきた。


…もうダメかな。


そう思って私は目をつむった。
次の瞬間、私の身体を痛みが襲って…

襲って…?



いつまでも来ることのない衝撃に、ゆっくり目を開けるとそこには胸から刀が生えた…
いや、刀で貫かれた姿の勝殿がいた。


『ソンナ…マダウゴケ…』


目の前の勝殿の姿が、本来の、元の勝殿の姿へと戻っていく。


ポツ…
雨だ…。雨が降ってきた。


「…圭、か…。すまなかった、な…。」

「ばか…野郎。俺のことなんか、庇いやがって…!」


そう、勝を後ろから突き刺したのは、圭だった。


「隊長…。ホントに、すみません、で、した。勝手なこと、ばっかし、て。」

「勝…。ごほっ、私こそ、すまなかった。…お前、を助けて、やれなかった。」

「いえ、しっかり助けて、もらえましたよ…。最後の、一撃が…。親友のもので、よかっ、た…。」


徐々に、勝殿の身体が端から崩れていく。


「勝、殿…!身体が…!」

「あぁ、もう、長くはないだろうなぁ…。大丈夫だ、朽木。お前のせいじゃねぇ…。気にするな。」

「そんな!あの時私が動いていれば…!こんなことには…!」


そう、きっとあの時私が浮竹隊長を連れて逃げたり、応戦したりしていれば、こんなことには…


「それ以上言うな。…確か、海燕副隊長と、修業した時に、言ってたな…。朽木、心ってどこにあるか、分かるか?」

「あ、ここ…ですか?」


私はそう言って私と勝殿の間に拳を出す。


「そうだ。なら知ってるな。俺は、一人で死ぬわけじゃ、ない…。心は―――」


「「ここに置いて行く」」


ルキアと勝の声が重なった。
ふっと笑うと勝は力なくその場に倒れこんだ。


「勝殿…?勝殿!!」

「おい!勝!返事しやがれ!こんなとこでくたばったら許さねぇぞ!!」


私と神崎殿がいくら声をかけても反応が無い。

今日、今ここで、私たちの大切な仲間が旅立った。





























あとがき


初めてあとがきを書きます。
今回、コメントなどをしてくださった方、ありがとうございます。
これからもがんばっていきたいと思います。

私なりの解釈を交えたりして、オリジナルな部分を加えたりしているのですが、いかがでしょうか?
更新が不定期の為、中々話が進まないのは申し訳ないと思っています;

次の投稿までまたしばらく空いてしまうと思いますが、今後とも死神転生を応援していただけるとありがたいです。

それでは、今回はこの辺りで。

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