小説『死神転生』
作者:nobu()

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翌日、再び店の地下に浦原とポデーラ、そして今日は鉄裁もいた。
3人は機能使った穴の近くに集まり、実験を始めようとしていた。



「さて、今日は気絶させて、その体の持ち主が出てこれるかどうか実験しますが、準備はいいッスか?」


「大丈夫だ。いつでも行ける。」


「じゃあ、ひと思いにやらせてもらいますねー」



そう言うと、浦原はポデーラの首元に後ろから手刀を入れる。
ゴッ!という鈍い音と共に、ポデーラは崩れ落ちた。

完全に地面に倒れる前に、鉄裁がその体を受け止めた。



「これで…よろしいのですかな?」


「はい。後は…この人自身の精神力っすね。」



気絶したその体を横たえ、それから数分ほど経った。



「ん…、ここ、は…?」


「「!!」」


「…あ、浦原さん、ですか?」


「あなたは、ポデーラさんではないんですか?」


「え?…あ!はい、そうです。申し遅れました、神崎圭といいます。」


「では、神崎さんと呼ばせてもらうッス。」


「はい…。」



まだ頭が完全に覚醒していないのか、ボッとした様子で圭は答える。



「俺の意識があるってことは、ポデーラが頼んだことは成功したってことですか…?」


「…それがですね、すみません。一度神崎さんの身体からポデーラさんの魂魄を離そうとしたんッスけど、ダメでした…。」


「あー、そうでしたか…。原因は多分、これでしょうねー。」



そう言って、圭は自分の目についている眼帯を外した。
地下の冷たい空気に、その目が晒され、少し目を細めながらも、ゆっくりと目を開ける。
ポデーラは見せることがなかった眼帯の中を見て、浦原と鉄裁は驚いた。



「これは…。やっぱり、こういうことだったんスね。」


「ちなみに、両手に手袋してるんですが、外せば右腕も同じ状態です。」


「分かりました。…伝えなきゃいけないことがあるんスけど、いいッスか?」


「…なんでしょう?」


「それはッスね、どうしてもその体からポデーラさんを取り除くことは不可能なんスよ。
あなたが意識を乗っ取られてしまった原因はいろいろあるんスが、その一つが、一つの霊体に二つの魂が入ってしまっていたことッス。」


「その負担が大きかったせいで表と裏のバランスが崩れたってことですか。」


「その通りッス。ちょっと申し訳ないんスけど、どうにかする方法が後一つしかありません。」


「…その方法とは?」


「これはあまりやりたくはないんですけど…。魂魄を、融合させるという方法です。」



少し苦い顔をして浦原は言った。
圭はその理由を知っているのと、もう一つ、今魂魄をくっつける方法があるということで驚いていた。



「魂魄を融合…できるんですか?」


「…理論上は。ですが、これはぶっつけ本番で、成功するか分かりません。何が起こるかも分かりません。できれば使いたくない方法だったんスけどね。…危険なので、どうにかしてあなたに確認を取ろうとしてこうしてる訳っす。」


「………どうして、いきなりやって来た俺に、そこまでしてくれるんですか?」


「分からないッス。…でも、今度こそ、助けたいのかもしれません。」



何が、と、それ以上は聞けなかった。ただ、俺が思っていたよりもはるかに、あの事を深く考えているんだと分かった。



「お願いします。どうか、俺を、治してください。」


「了解ッス。…きっと意識を保ってられる時間もそう長くはないと思います。今から準備をして、終わるころには元に戻ってると思います。ポデーラさんを気絶させただけなんで。」


「じゃあ、時間が経てば、また俺は元に戻ってしまうんですね。」


「残念ながら。…ですが、次目覚めるときには、実験が成功してることを約束するッス!」



浦原は笑顔でそう言った。まるで圭の事を安心させるためかのように。

そして、一足先に浦原は地下へと降りて行った。
圭はというと、鉄裁の案内で、ポデーラの使った部屋へと行き、きっと眠くなるので、と言われ、布団を用意してもらった。

しばらくすると、その通りで、いっきに眠気が押し寄せてきた。

ここで眠ったら起きられないかもしれない、と思ったが、さっきの浦原の励ましを思い出し、布団にもぐり、眠りに落ちていった。


























「ん…。ここは?……あぁ、寝室か。」


「あ、起きましたか。で、あなたはポデーラさんスか?」



目を覚ますと、枕ものには浦原が立っていた。
しかし、浦原が発した質問を聞いてポデーラの表情は曇った。



「…そうだ。それを聞くということは、成功しなかったのか…。」


「いえ、それに関しては大丈夫でした。神崎さんと無事お話もできました。」


「本当か!で、あいつは何と言っていたんだ?」


「アタシの意見に賛成してくれました。後は、ポデーラさんに説明するだけッスね。…昨日は言いませんでしたが、残ったもう一つの方法について、それはあなたと神崎さんの2つの魂を融合させるという方法ッス。」


「魂を融合だと…?そんな事をできるのか?」



今までに聞いた事のない実験の内容を聞き、ポデーラは驚いていた。
確かに自分自身も似たような形で圭と同化した訳なのだが…



「はい。ただ、試すのは初めてなので理論上はということッスけど。それで、この実験をするには、後はあなたの承諾を貰わないといけません。」


「それなら我は拒む必要はない。始めてほしい。」


「…まぁ、話は最後まで聞いてください。この実験は初めてって言いましたよね?つまりそれは、何が起こるか分からないという事でもあるんス。もしかすればあなたの意志が消滅するかもしれない。その逆で、神崎さんの意識が…なんて事もあるかもしれないんス。まだ今なら他の方法を探す事も出来ます。それでも同じ答えが出せますか?」


「…圭は…。あいつは、それでもあいつは…。それでいいと言ったのだろう?」


「…はい。神崎さんもそう言ってくれました。」


「なら…、我も同じ答えを出そう。奴を信じないのなら一体我がここまで来た意味は何だというのだ。」



それに、と付け足してポデーラは語る。
何故かその顔からは笑みがこぼれている。



「彼女も大丈夫だと言っていたのでな。」


「彼女…?」


「圭の斬魄刀だ。気絶した後に夢の中で会った。何があっても、恐れなくて良いと言っていた。だから、きっと大丈夫なのだろう。」


「それでは、アタシも尚更頑張らないといけないッスね。…じゃ、移動しましょうか」






そう言って地下へと移動していく。

下にはすでに鉄裁が準備を済ませておりいつでも始められる状況であった。

近くには大きくそびえたつ5本の柱と何だかよく分からないが、魔方陣のようなものが描かれている。

五角形のその中央へと歩いて行きそこへポデーラを立たせる浦原。



「もしこの先何があったとしても、他の人には他言無用でお願いするッス。ちょっといけない事もするんで。
この先あなたに何かあったとしても、神崎さんにすら言わないでもらいたいんです。」


「ああ、分かった。約束しよう。」


「じゃあ、始めましょっか。」



そうして実験は始まった。







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