「けぇーにぃー!起きろー!今日から学校なんでしょー!!」
家の中に活気そうな女の子の声が響く。
「んん…。ふぁ〜あ…。そういや今日から学校だったか…。」
ドタドタドタ………バン!!
部屋のドアが思いっきり開けられ、その声の持ち主が入ってくる。
「ほら!起きて!まったくもう、昨日あんなに夜更かしするからだよ!」
「あー、分かった、分かったから。今すぐ行くから、だから大きい声で話さないで、頭痛い…。」
「昨日あんな飲むからでしょ!ったく…」
ブツブツ文句を言いながら、その少女は部屋から出て行った。
ベットからおりて制服に着替え、リビングへと歩いて行った。
リビングには既に朝食の準備がしており、テーブルには先ほどの少女が座っていた。
俺も席に座ると、いつものように「いただきます」と、二人声を合わせ食事を始めた。
「そういや、彩萌、お前も転校して一週間くらいか?どうだ、友達できたか?」
「んー、あたしと似たような子と、あとその子の姉妹の子…が一番仲いいかな?
あ、ウルルとジン太は別だからね?」
そう、この女の子の名前は彩萌。神崎彩萌。と言っても俺と同居しているからこの名字なのだが。
以前色々あって俺と同居することになった。
料理も裁縫もできて結構優しい妹だと思う。
「へー、そっか…。仲のいい友達ができてよかったな。俺は友達つくれっかねぇ?」
「圭にぃは無理じゃね?喧嘩っ早いし、そもそも無愛想じゃん。」
…前言撤回。結構毒舌だったりする。ウルルやジン太には優しいんだがなぁ…。
どうして俺にはこうも厳しいんだか。
「はぁ。もっと俺にもウルル達みたいに優しくしてくれないもんか?」
「圭にぃはすぐ調子乗るからダメ。…それに恥ずい…。」
「ん?最後なんて言った?」
「圭にぃはすぐ調子乗るし、アホで馬鹿で間抜けだから!」
「あ、ひでぇな!俺だってやる時はやんだぞ!?」
喧嘩しているようだが、いつもこんな感じだ。犬で言えばじゃれてるのだ。これでも。
「あたしにいつも勝てないくせに〜?」
「うぐ…。ま、まだ俺の力を隠しているんだ!あと3回変身を残してんだ!」
「何わけ分かんないこと言ってんだか…。ごちそうさま。」
言い合っている間に彩萌は食べ終わっていた。
「おいおい、有名なセリフだぞ?変身や合体は漢のロマンなんだよ!っと、俺もごちそうさま。」
「あたしは女だからそんなもん理解しなくてもいいのー。じゃあ、今日は家帰ったらそのまま浦原さんのとこに行くからー」
「あぁ、俺は…。友達つくってから行くわー」
それ以外にもやらなきゃいけない事あるんだけどね…
ま、それは彩萌に言わんでもいいだろう。
「できたらいいね(笑)」
「けっ、友達100人作ってやるから!」
「はいはい、いつまでも子供みたいな事言ってないで早く行きなよ?遅刻しないでねー。あたしはもう行くから。」
「おう、気をつけてな。行ってらっしゃいー」
「行ってきますー」
そう言って彩萌は学校に行った。俺もそろそろ行かなきゃな…。
家に鍵を閉めポストに入れて、学校へと向かった。
………20年。
あれから20年が経った。
浦原さんは見事実験を成功させ、俺とポデーラの魂魄は融合した。
そのとき何が起こったのか。どんな実験をしたのか聞いたが、浦原さんは何も答えてはくれなかった。
鉄裁さんに聞いても、申し訳ありません、と答えられるだけであった。
言えない事情については教えてもらえた。どうやら実験の内容が禁忌に近いものを使用したからなのだとか。
ポデーラのいた精神世界は元に戻っていた。俺の身体が治ったからだと浦原さんは言っていた。
そんなこんなで以前の生活に戻れたわけだ。
が、良い事だけ、というわけでもなかった。
俺の記憶が一部吹き飛んだらしい。
今覚えている事は、俺が転生者だったこと、この世界に来てからの出来事。
転生前の世界についての記憶は少し消えてしまった。
…一番覚えていたかった原作知識が、 吹っ飛んだ。
重要なことは覚えているんだが、細かい事を全く覚えていない。
しかし、俺が覚えていないだけで、一人だけ覚えていてくれた人がいる。
俺の斬魄刀だ。
どうやら俺の記憶から作り出したため、俺の今までの記憶を全部覚えているということだった。
始解を取得するまで分からなかったので、それが分かった時には凄く嬉しかった。
何か重要な事が起こる時には教えてくれると言っていた。
あ、ちなみに卍解も取得してるぞ。
浦原さんに修業を見てもらったが、あれは辛かった…。
そして、もう一つ。性格がちょっぴり変わった。とポデーラに言われた。
浦原さんに聞くと、融合の副作用じゃないッスか?だそうだ。
まだ俺が気付いていないだけで、何か変わったところがあるかもしれないらしい。
そして、変わったのは俺だけではない。ポデーラも変わったのだ。
まぁ、それについては追々分かってくるだろうからここでは伏せておく。
って、俺は誰に向かって説明してんだ?
やばい、ついに副作用の効果もここまで来たか…。
とか考えていると学校が見えてきた。
空座第一高校。それがこれから通う俺の学校の名前だ。
今日から俺も高校へ通うことになった。
別に行かなくてもいいと思い、1年ほど前まで浦原さんの手伝いをしていたのだが、何故か急に高校生の生活へ戻ってほしいと言われた。
そのために戸籍と家を用意してくれ、一年経ち、今日を迎えた。
校門をくぐると、クラス割の書いてある掲示板の周りに人がたくさんいたので、そちらへと足を向ける。
さて、俺のクラスは…
神崎圭…神崎圭っと…
お、1-1か。分かりやすくてよかったー。
ん?…あ、主要メンバーとはクラス違うじゃねぇか!
はぁ…。何か補正的なものがかかって一緒のクラスになれると思ってたのに…。
この年には何かある、という浦原さんの助言で高校に来た事と、斬魄刀に今年が始まりの年。と言われたことから、俺が主人公と同期だという事が分かっていた。
しかし、違うクラスかー。どうしようか…。
そう思いつつ教室へと足を運んで行く。
T字路になっている廊下に差し掛かった瞬間…
ドン!
「あ、いてて…。!あ、あの、すみません、大丈夫!?」
廊下を走ってきていた生徒にぶつかってしまい、二人とも尻もちをついてしまった。
これは不注意だったな。俺も謝らなければ…
「あぁ、わりぃ。俺もよく見てなかっ…た…。」
先に立ちあがった相手の差しのべられた手を掴んで、その人を見ると、見た事のあった顔だった。
確か名前は…。
「本当に大丈夫?どっか打ったりしてないかい?」
「あぁ、大丈夫だ。ぶつかっちまって悪かったな。」
「いや、僕が走ってたのが悪かったんだ。あ、そうだ、僕の名前は小島水色。よかったら覚えといて!」
「お、おう。俺は神崎圭だ。圭で構わない。1-1なんだけど、お前は何組?」
「あ、僕の事は水色でいいよ。僕は1-3。違うクラスなんだ、残念だねー。」
その後も少し話をしながら一緒に一年のクラスのある場所まで行った。
そして教室の前に着いた。
「じゃあ、俺は1-1だからここで。じゃな、水色。」
「うん、じゃあね圭ー。」
それぞれ教室の中に入って行き、ほどなくしてHR(ホームルーム)が始まった。
「あー、めんどくせぇー。この年になってまで、なんぜ爺の長ったらしい話を聞かにゃならんのだ。」
俺は入学式で校長の長ったらしい話を聞き、その後も何だかんだといろんな先生の話が続き、疲れた上に、教室に帰れば女子や男子に何かと話しかけられストレスが激しく上昇していた。
「こんなんじゃ友達100人とか無理じゃねーか…。」
彩萌の言ったことを思い出して少しだけイラつきも収まった。
「はい、次。じゃあ9番神崎。自己紹介だ。」
今は各個人の自己紹介をしている。
俺の出席番号は9…まぁ、そんなことはどうでもいいんだが、さて、何を話そう…。
「えっと、名前は神崎圭。趣味は読書、それと…、あ、猫が好きだ。以上。」
最後を言った瞬間、周りの女子から何やら物凄く熱い視線が向けられたが、無視する。
え?なんかギャップがすごい!見たいな感じの目だ、あれは。
その女子の中の一人が声を上げた。
「はい!神崎君はどこの中学だったんですか?」
…困った。中学なんて通ってない。
俺の昔の中学の名前も覚えてないし…。
「中学は…県外の中学だった。」
それしか言えなかった。周りは「どこに住んでるんだろうね?」とかざわざわ話していたが、先生が強制的に次の人へと話を移した。先生、GJ。
そんなこんなで1日が終わり、放課後になった。下校しようかと思い、席を立とうとすると…
「ねーねー、神崎君!何県の中学行ってたの?」
「部活は何部に入ってたんだ?」
「今はどこに住んでるの?」
「どんな女の子が好み!?」
「今まで付き合ったことは!?」
「え!?なに!?神崎君付き合ってるの!?」
「だれだれ!?この学校の子!?教えて!!」
俺の周りが男女で埋め尽くされ、次々に質問が投げつけられた。
…キレてもいいでしょうか?
俺の怒りが限界に達しそうになった瞬間。
「あ!いたいた!おーい圭!ちょっといいー?」
どこかで聞いた声。どうやら教室の外からしているらしい。
周りの奴の隙間からのぞくと、水色がいた。
「すまん、ちょっといいか。」
周囲を押し退け、水色の元まで行くと、教室の外には、一護、チャド、あと…誰だったっけ?もう一人のお友達がいた。
「どうしたんだ、水色?それにこの人たちは…?」
「あ、先に紹介するね。左から黒崎君、茶渡君、それと…誰だっけ?」
「おいぃ!それはわざとか!?わざとだろ!?俺は浅野啓吾だ!啓吾様って呼んでもいいんだぜ?こう見えても俺はこいつらの中で一番――――――」
「俺は黒崎一護だ、よろしくな。」
「…茶渡、泰虎だ。」
二人は啓吾様(笑)を無視して話を進めて行く。うん、中々にできる奴らだ。
「俺は…神崎圭だ。よろしく。で、水色、何故ここに?」
「あぁ、そうだ。もしよかったら僕らと一緒に帰らない?あ、先客とかいたら別にいいんだけど!」
「…いや、ありがたい。正直あの輪の中からどうやって抜け出そうか悩んでいたとこだ。」
軽く後ろを見ると、さっきまで俺を取り囲んでいた奴らが、
「あ、あれって馬芝中の…黒崎と、チャド…!ひ、ひぃ!!」
「こ、ここの高校だったのかよ!」
「く、下らん!お、俺は先に帰らせてもらうぞ!」
などと言っていた。一人だけ死亡フラグを立てていた気もするが…
「そうなんだ!よかった。じゃあいっしょに帰ろうか!」
そうして3人と一緒に帰ることになった。
「え!?結局俺の事は無視!?」
間違えた。4人だった。