小説『死神転生』
作者:nobu()

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「じゃあ、俺はこの辺だから、またな」


「へー、圭の家ってこの近くなんだねー。遊びに行ってもいい?」



下校の途中、俺は皆と別れようとしていた。
ところが、水色が俺の家が近くにあると思って興味を持ち始めた。



「いや、俺の家はこの近くじゃないよ。ちょっと晩飯の買い物するから近くのスーパーに寄るだけだ」


「へー、神崎って料理してるんだ。両親とか忙しいのか?」



と、啓吾が聞いてきた。
…この質問って、答えたら雰囲気まずくなるパターンのやつ?
でも下手に言い訳したらそのうちバレたときにもっと気まずいし…



「俺は妹と二人暮らししてるんだ。今日の夜は俺が当番なだけ。最近じゃ珍しくもないだろう?」



そう例えば井上とか、そのあたり。チャドはどうなんだっけ?
石田も一人だったか?いや、でも父親いたと思うし…



「ま、そんなんだから。じゃ、また学校でな」


「おう、気をつけてなー」


「…またな」



一護やチャドとも挨拶をして別の道を歩いて行く。
買い物に行くと言ったのは嘘ではないが、それよりも重要な用事があった。

今日は俺も浦原商店に行くのだ。



「もう彩萌は着いてっかなー」



今日は俺の義骸の点検と微調整をしてもらう予定だ。
この義骸は俺の発注により少し特殊なものになっている。

一つは見た目を少し変えてもらい、黒い髪の毛にしてもらった。
灰色でこの名前だと、絶対にバレるからだ。


もう一つ、霊力を遮断する殺気石を加工して加えている。
そのため俺の霊力は外に漏れないため、死神としてばれる事はない。




…はずだったのだが。
どうもポデーラと融合してから霊圧やらなんやらが跳ね上がってしまったらしく、この義骸を使っても完全に遮断できなかったらしい。

なので剣八のつけていた眼帯と同様の物を作ってもらい、身につけてやっと霊力が遮断できたのだ。


というか、跳ね上がり過ぎていろいろ大変だったと浦原さんに愚痴をこぼされたのだが…


死神の姿の時は以前のままだが、眼帯が変わった。
あれだ、これも剣八と同じ仕様の眼帯になった。

つまり、眼帯→義骸→眼帯の三段階構成でやっと、というわけだ。


だが浦原さん曰く、「霊圧が高いだけで、戦闘経験やその他が紙ッス」だそうだ。
…ちょっと心が傷ついたのはナイショ。

ま、そのために稽古も付けてもらって、今ではそれなりに強くなってると思うんだが。



「っと、着いたか」



いつものように考え事をしていると到着。
店の前にはウルル、ジン太、彩萌の3人がいた。



「お!圭にぃ、来たんだ、学校お疲れー」


「おい、今日こそ俺のスーパー・ウルトラ・ジン太・ハリケーン・スイングでホームランとってやるから勝負しろ!」


「こんにちは…」



上から彩萌、ジン太、ウルルである。



「あぁ、お疲れ。ジン太、取りあえず先に浦原さんに会いに行くから、その後勝負な。ウルル、こんにちは。」



そういってウルルの頭をなでる。
いつもの事だが、ウルルは嫌がって無いように見えるので楽しんでいる。



「ちょっと圭にぃ、いつもの事だけど、ちょっと犯罪者みたいな匂いがするからその辺でやめときなって」



そして毎回こうして彩萌の制止が入るのだった。
取りあえず、店の中に入って行き、浦原さんを探す。

ここに来るのももう何回目になるだろうか。

最初の方はすごく緊張してたな。今ではもう慣れてしまったが…っと、浦原さん発見。


居間に入ると浦原さんがいた。



「お、神崎さんいらっしゃい!今日は点検ッスね。じゃあ移動しましょうか。そうだ、そこに夜一さんいますよ。」


「な!?き、喜助!黙っておれと言ったじゃろう!!って、神崎!寄るな!こっち来るな!その手は何じゃ!フシャァァァァーーー!!!!」



俺は隠れていた夜一さんを問答無用で捕まえ抱え込んだ。
威嚇のつもりか毛を逆立てているが、そこすら可愛い、愛らしい!



「ふぁー、もふもふだー!ぬこかわええなー。わー♪」


「や、やめろ!…にゃー」



最初は抵抗していた夜一さんもいつの間にか諦めたようだ。
ちなみに初対面のころから俺の全勝である。



…だってしょうがないじゃん、猫可愛いんだもん…。



「さ、じゃれるのもその辺りにして、移動しましょ、神崎さん。」


「えー?」


「えー?じゃないッス。全く、猫見るといつもこうなんスから…。夜一さんそのまま持ってってもいいッスから、行きますよー」


「喜助…。後で覚えとれよ…。」



夜一は恨めしそうな声をあげながら、大人しく俺に抱かれて地下へ移動を開始した。

何だかんだ言って無理に逃げようとしないってことは少しは気に入ってるってことなんだと思うけどなー…

















「…よし、取りあえずこれで完了ッス。もう動いても大丈夫ッスよー。」


「んん〜!はぁ〜。うん、やっぱり動きやすくなってるね、流石浦原さん!」


「あはははー!まぁ、アタシに任せればそんなの朝飯前ッスよ!」



義骸の手入れやらを済ませてもらい、動きも快調になったところで、俺は浦原さんに話を切りだす。



「ふぅー…。で、今日呼び出したのはこれだけじゃないんでしょ?」


「おぉ、何て勘の鋭い…。そうッス、その通りッス。実は今度別の死神のお客さんが来ると思うんスよ。なので、しばらくはここに来るのは控えてほしいと思うんスけど…」



浦原は少し申し訳なさそうな顔をして言った。
まぁ、大方予想はつく。そろそろ物語が始まるのだろう。

浦原さんが俺の事をどこまで知っているかは分からないが、俺もなるべく彼女と顔を合わせるのは避けたい。

しかし…



「もしもどうしても行かなきゃいけないときはどうしたらいいんでしょう?」


「そのときはー…。あ、顔でも隠したらどうッスか?」


「んー、というか、俺としてはこの義骸の姿でこの店にいる事ももちろん、死神の姿も見られたくないんですよねぇ…」


「そうッスか…。なら、お客さんには極力夜には来てもらわない事にするッス。神崎さんは用があれば夜に来てもらう。これでどうッスか?」


「…うん、そうですね、わざわざすみません。」


「いえ、気にしないでください。…ところで、彩萌さんはどうします?」



あ、その事を忘れてた…

一応彩萌はここの人として働いている。というかたまに手伝いをしてる程度だな。
表向きだと普通にまともな店やってるらしいし。

うーん、まぁ、彩萌もここの奴らと会うのも楽しみにしてるし…。
そもそも毎日じゃないから平気か?



「多分彩萌はそのままで大丈夫だと思います。一応後で本人に確認とっておきますね。」


「了解ッス。それと、ちょっぴり…というか、遠くから見守る程度でいいので、観察していてもらいたい人がいるんスけど、いいッスか?」


「んー、誰でしょう?」


「神崎さんが通っている学校にいる、黒崎一護という男ッス。」



…こちらも大体分かってはいたが、やっぱり俺が近くに行かされるのかー。
じゃなきゃ急に高校に入学させるなんて意味無いことしないしな…。



「その人なら今日偶然知り合いましたよ。観察っていっても、一日中見てる事なんて無理だと思いますが…」


「あぁ、それなら夜だけで平気なので大丈夫ッス。詳しい事は後々教えますんで、じゃ、今日はおしまい!」




地上へ延びる階段へ歩いて行き、一足先に戻って行った。
俺も戻るかー。



「貴様がしばらく来ないのなら安心して眠れるわい。」


「話聞いてました?夜は入れるんですって。…夜這いでもしましょうか?」


「そ、そのときはわしの白打で返り討ちにしてやるわ!」


「ふふ、冗談ですよ。」


「…神崎、少し喜助に似てきたんじゃないのか?」


「気のせいッス(笑)」



そんなくだらない話をしながら地上へ戻った。



















「おい!野球だ!勝負だ!こっち来い!!」



しかし、上に戻るとジン太が俺の腕を引っ張り始め、店の外へと連れ出した。

野球で勝負、というか、俺がただ単にボールを投げ、それをジン太が空振りするだけの話なんだが。



「今日こそテメェの球を撃ちとってやんぜ!」


「はいはい、どうせ今日も同じですよー」


「るっせぇ!おい、彩萌!こっちきてキャッチャーやれ!」


「はぁ?あたしも巻き添え…?まぁいいけど…。」



彩萌がジン太から道具を受け取り、後ろにしゃがむ。



「かかってこいやー!!」


「はー。じゃあ行くぞー、…てい!」



俺は普通にボールを投げ、彩萌の構えたミットへとボールが入る。

…いつもはこうだった。



が、



カキーン!




「あ…」


「しゃー!打ったぜー!!どうだ!俺のスペシャル・ウルトラ・ジン太・ダイナミック・タイフーン・スイングは!」


「…さっきと名前変わってる…。」



そこで冷静な突っ込みを入れるな、ウルルよ。



「ふ、ふふふ…。」


「な、何がおかしいんだよ!俺の勝ちだぞ!」



いきなり笑い出した俺にジン太が少しビビっている。



「ジン太、お前はまだ俺の力のほんの一部を見ていたにすぎん…。タイムだ、彩萌、ちょっとこっち来てくれ。」


「あー?なんだよ?」



こっちに歩いてきた彩萌に俺はこっそり耳打ちをする。



「はぁー…。圭にぃ、それ大人げないよ…。」


それを聞いて彩萌はうんざりしたような声で俺に言った。
しかし、顔は笑っている。こいつも、ジン太をいじるのが好きなのだ。

再びジン太の元へ戻った彩萌はキャッチャーミットを構える。



「さぁ、もう一度勝負だジン太!今度は俺の本気を見せてやろう!!」


「な、何回やったって、俺のジン太マックス・デルタ・ジャイアント・ホームランには敵わないぜ!」


「だから、また名前…」


「ふふ、そう言っていられるのも今のうちだ。…喰らえ!秘儀、消える魔球!!!」



俺はきれいなフォームから、勢い良くボールを投げる!…振りをした。



パァン!!



しかし、ジン太の後ろではミットにボールが入った音がした。


「な…、見え、ねぇ…。」


ジン太は何が起こったのか分からず、ただ茫然としている。

今起こった事はいたってシンプルで、俺が投げるふりをし、彩萌が持っていたボールをミットに叩きつけただけなのだ。


つまりあれですよ。グレートでティーチャーな人がやってたのと同じあれですよ。



「も、もう一度だ!今度こそ見切ってみせる!!」


「ふ、何度やっても結果は同じなのだよ!」



そして、もう一度投げるふりをする俺。



パァン!!



「…。ま、また見えなかった…。」



しばらく同じ遊びをしたが、流石にジン太がかわいそうになってきたので、見える球を投げてあげることにする。



「み、見えた!」


スカッ!


「ちきしょー!」


悔しがっているジン太に近付いて話しかける。


「まさか、俺の魔球を一瞬でも見ることのできる奴が現れるとは…。
ジン太、お前もっと誇ってもいいんだぞ!」


「な、そんなにすごいのか!?なぁ、俺ってすごいのか!?」


「あぁ、スゲェよ!お前なら世界を狙えるかもしれねぇ!!」


「うぉぉ!!決めた!俺はプロを目指す!!!」





「はぁ…。男ってくだらねぇ…。ウルル、そう思わない?」


「う、うん。でも…。楽しそう…。」


「まぁ、確かに楽しそうだよねー。馬鹿みたいだけど!」



女子二人は俺たちのやり取りを見てくすくす笑っていた。

その後、もういい時間になったので俺と彩萌は家に帰ることにした。
しばらく遊べないって伝えると、ウルルとジン太は納得しない表情だったが、たまに近くの空き地で遊んでやると言ったら了承してくれた。


途中で晩御飯の材料も買って、俺が料理し、その後はいつも通りに風呂入ったりくつろいだりして寝た。









こんな平和な日常。

しかし、もうすぐ終わる事を、俺は知っている。

せめて、少しでも幸せな日々を。

思い出をつくりたい。



















―――あとがき―――




ようやく30ページ目です!

ていうかようやく本編!


長々とお待たせしてしまい申し訳ありませんでした!

皆さんのコメントにはいつも勇気づけてもらっています。
これからもこの小説をよろしくお願いします!















…29ページの内容からこの小説始めればよかったんじゃね?って今更思ったのはナイショ。

-30-
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