「開戦といこうか・・・・・・」
「ふん」
牙煉の体を紅蓮の雷と炎が包み込む。
相対する出雲の腕を風の渦が包み込む。
牙煉が音速を超えた速度で踏み込み、音速を超えた拳が出雲を捕らえるが、風を纏った腕にガードされる。
「終わりではないぞ」
「？」
牙煉はそのままさらに強く自分の腕に力をかける。
腕の紅雷と紅炎の密度が急激に上がり・・・・・。
「紅(くれない)の雷炎舞踏」
「！！！」
出雲に遠慮など無くそれらは放出された。
そして、それらは容赦なく出雲を飲み込む。
「くっ」
出雲は、それに飲み込まれたまま、広場の外側にあった大木にぶつかり、大木をへし折る。
「ふん、これが我の本気だ」
紅蓮の雷炎を纏った鬼神はそう呟くが、その動きには油断というものが一切見られない。砂埃を巻き上げその先が見えない大木の方向を見続ける。すぐにもう一度同じ技を放てるように構えたまま出雲が再び姿を見せるのを待ち続ける。
「マスタァァスパァァァァァァァク」
砂煙の中から出雲の大声が響き、煙を貫き、光の束が牙煉を襲う。
「読んでなくとも分かる、その程度のこと」
再び紅の砲が火を吹き、光の束とぶつかり、拮抗する。そして、拮抗していたところが爆ぜた。
爆風は、再び砂煙を発生させる。鬼神の周囲も例外ではなく、砂煙に包まれた。
「・・・・・・・・・・・・来るか」
鬼神がそう言うと、また紅蓮の雷と炎の密度が上がり、構える。
「チェストォォォォォォ」
砂煙を突き破り、日本刀を上段に構えた出雲が鬼神の上から飛び込んできた。
「あはははは。また私の負けか・・・・・・」
「今回は負けたと思ったよ」
２人の鬼の少女が揃って倒れていた。
服は既にボロボロとなり、体中に痣や擦り傷などが見られる。痛々しい状態ではあるものの、二人ともどこか清々しい笑みを浮かべていた。
楽しかったや、嬉しかった。
もしくは、ありがとうだったのかもしれない。
二人は同時に何かを言ったが、それは言葉にはならず、お互いに重くなったまぶたを下ろした。
それが鬼の友情なのかもしれない・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「むっ」
牙煉は自らの体に刃が触れるか触れないかの寸前で両手で刃をつかみ、体からそらす。
「・・・・・・マジですか」
「ああマジだ」
牙煉は日本刀ごと出雲を背負投の要領でぶん投げた・・・・・。が、何度も同じように吹っ飛ばされる出雲ではなく、その先にあった大木に着地する。そして、膝をバネにして再び牙煉に斬りかかる。
刃は牙煉に触れる前に振りきられ、風の斬撃が飛ぶ。
「ふんっ」
牙煉は右手の正拳突きで風の刃を砕く。
出雲は、牙煉から数メートル離れた位置に着地すると届くはずも無い突きを連続して行う。それは残像が発生するほど・・・・・・・。
一つ一つの突きからは紫電が放たれる。牙煉を蜂の巣にせんとばかりの勢いで。
「さすがにこれは・・・・」
牙煉もそれに対抗しようと連続して正拳突きを放ち、そこからは紅蓮の雷が紫電を相殺するべく放たれる。
しかし、牙煉は両手で手数を増やして防いでるのに対して、出雲は片手で日本刀を持ち、突きを放っている。つまりは出雲にはまだまだ手数を増やすことは可能である。
出雲のもう一方の空いている手に霊力が集まり、球となす。
7色の螺旋の弾幕が放たれた。
「ぐふぁっ！？」
ついに出雲の攻撃はまともに牙煉の体を直撃した。
弾幕の雨は止むことを知らぬかのように吹き飛ばされた牙煉の体を容赦なく襲い続ける。
「ぐぅ・・・・」
牙煉は、自分が纏う紅蓮の雷炎の密度を上げると、弾幕をそれで防ぐ。そして、両手を前に突き出す。
「紅蓮の二重奏」
紅蓮の炎と雷が捻じれ、編まれるように一個の巨大な砲となって出雲に襲い掛かった。
「・・・・・・・・おいおい。大自然の怒り」
出雲も両手をかめはめ波を横にしたように前に突き出してそこから術をたたき出す。
中央に細いマスタースパークのようなレーザーが、その周囲には竜巻が。さらには周りに雷がまとわりついている。
牙煉の『紅蓮の二重奏』と出雲の『大自然の怒り』が拮抗する。
これは爆発などせず、力の全てが拮抗しているポイントから周囲に散らされる。
「「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」
二つの力はより強大なものとなってぶつかる。お互いの最後の力を全力で搾り出したエネルギーが空間にゆらぎまでをも作り出す。
「ラストォォォォォォォォォォォ」
すでにもう空になったと思われていた二人の力がさらにまし、ぶつかる。
が、突如その拮抗は崩れた。
ほぼ同時に牙煉と出雲は倒れた。
一瞬だけ先に・・・・・・・牙煉が先に・・・・・・・・・・。