小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「結局この山で一番強いのは出雲か」
「らしいな。葉華はどうだった?」
「四天王第4位だって」
どうも、薬師出雲だ。一昨日の宴以来、序列が変わった。最後まで立ってたやつが強いってことなんだけどな。
で、いつもどおり葉華の家で酒を飲んでいるんだが・・・・・・・・・・・。
「なんでこうなった」
どうやら葉華の家を増築して、これ以降も同棲しなさいということらしい。
別に結婚したとかそういうわけじゃないんだけどな・・・・・・・。
多分の話だが、この屋敷には四天王が二人と俺がいることになる。俺が暴走すれば、鬼のメンツが揃うまで四天王が時間稼ぎ。もし人が攻めてくれば俺たちが防波堤といったところだろう。
まあなんともいい位置にこの屋敷もあったもんだ。ひとつの屋敷なのにたくさんの役目を果たしてやがる。
あ、そうそう。鬼神にはまた牙煉がなった。
俺は鬼じゃないから関係ないし・・・・・。
どちらにせよ、自由に使っていいらしいから土地は自由に使う。せっかく自然を使いこなせる能力なんだから畑でもやってみようと思う。一応野菜の種はもらってきたから、いつでもできる。俺は能力を使えば季節とか関係なく自由に作れるからな。
だってその座標の気温変えてやればいいだけだし。
あ、でもビニールハウスみたいなのがあったほうがやりやすいんだけどな・・・・・・・。
まあ無い物ねだりしてもしょうがないから木で小屋でも作れば事足りると思う。
多分だけどな・・・・・・・・・・・・・。
ふう、しょうがないか。
「葉華、あっち側木を伐るぞ」
「勝手にしろ・・・。まったく、お前が来てからというものいろんなものが急激に変わっていくな」
「いいことだと思え」
「そうでも思わなきゃ心がもたんわ」
どうやら俺が言う前からそう思っていたらしい。
なら何と言おうが変わりはないか・・・・・。
「まあできたらうまい野菜を食わしてやるさ」
「・・・・・。そちらの件は楽しみにしておこう」
花より団子・・・、か。
色気より食い気だな。
まあこのくらいの子供ならしょうがないか。
あ、でも俺も楽しみだからまだ子供なのか?魂は肉体に引っ張られるらしが・・・。俺は大体18&#12316;19ぐらいのはずだよな?子供じゃないし。
そこが男子と女子の違いか?
そこまで重要なことでもないしどうでもいいか。さて、木を伐って小屋作って野菜を作るとするか。




「ふう、これでいいか」
小屋が4つ巨大な屋敷の隣に出来ていた。
それぞれが違う季節の温度になっており、擬似ハウス栽培を完成させている。
そしてなかには既に種まきを終え、既に野菜が芽吹いている。
ちょっとずるいが、能力で成長を早くしてみたのだ。もらった種の数は少なめだったので、種を増やすための育成を始めた。というより最初からこれができると思ってたくさんはもらわなかったのだが・・・。
「お疲れ様」
「葉華・・・・。ん?ここ最近美月を見ないけどなんかあったか?」
この前屋敷に帰ってきたときも見なかったな。宴のあとのことな。
それ以降も帰ってきたところを見たことがない。
もしかして・・・・・・。
「俺は避けられてるのか?」
「いや・・・・。あいつなら鬼神様のところだ。にしてもなぜ美月のことが気になるのだ」
葉華は少し過剰とも言える感じで出雲に詰め寄る。
しかし、出雲は全くそんなことにも気がつかず杯を仰いだままその質問に答える。
「いや、一応は同居人だからな」
「そ、そうか・・・」
そんな葉華の様子を見ても出雲は結構友達思いだな、程度にしか感じていないのだが・・・・・・・。
「あいつは鬼神様のことが好きだからな」
「ぼふぉぉぁっ、ゲホッゲホッ」
出雲は意図せずに聞いた鬼神の浮ついた話に、酒でむせ吹き出す。
そして、その噴射された酒は葉華の顔に直撃する。
「むぎゃぁぁぁ」
葉華は葉華で女の子としてはどうなのかと思われる声を上げる。
「す、すまん」
「知るかぁ」
バシィィ
こ気味のいい打撃音が出雲の頬から響いた。

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