小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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ズドォォォォォン
バゴォォッォン
パァァン

随分と派手にやってるもんだなぁ・・・・・・・・・。ここまで音が響いてくるよ。
あ、どうも、山の中でも年寄りに含まれる薬師出雲だ。
今年の宴に天狗が乱入しているせいで、いつも以上に賑やかな戦いになっているみたいだ。
いつもも派手な戦いにはなるけど、音が違うからなぁ・・・・・。天狗の技か?興味はあるがまだ行く気はねぇよ。雑魚がまだまだたくさんいるだろうし。あ、でもさっさと行ってマスタースパークでまとめて倒すとかも良さそうだな。よし、じゃあ野菜小屋と屋敷に結界張り終えたらさっさと行きますか。
出雲はせっせと野菜の小屋に、そして屋敷に結界を張っていた。
結界は、よほど強力らしく、時折枯れ葉が当たると『ビシッ』と強い音を立てて弾いていたが・・・・。



・・・・・・。聞いていた話と違うぞ。
何かずいぶんと天狗が強くないか?
数は聞いていた話と変わりがないけど、倒れている鬼の数がおかしい。
もう、半分ぐらい倒れていやがる。
それに対して、地で倒れている天狗は300程度・・・・・・・。
ああ、そうか。それだそれ。鬼は、空を飛べる奴が少ないが、天狗はみんな空を飛ぶことができる。だから空からほとんど一方的に攻撃を仕掛けているのか。結局、鬼の攻撃は基本的に素手や武器。
ある程度以上に強いのは、妖力で弾を作って撃てるけど、それもすべての鬼ではない。
天狗は、空からの攻撃で妖力を利用して葉っぱをナイフのようにして地の鬼に弾幕を作って攻撃する。
もし、天狗が地上にいたらいい勝負どころか、鬼が押していただろうが、これじゃぁむりだ。
早く来て運が良かった。
のんびりしていたら敗北していて住むところを追われたとか言っても情けないしな。
別に前の住処に戻ればいい話だから俺はそんなに困ることではないが、鬼たちには借りがあるし・・・。
よっしゃ、一発景気づけに撃ちますか・・・・・・。
出雲は、両手を前に突き出し、かめはめ波を横にしたように構える。
両手の中央に、光が集まり始め・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「マスタァァァスパァァァァァァァァァク」
宙から一方的な攻撃をしていた、天狗の群れに直撃した。
それこそ1000や2000は超す数に。






「マスタァァァスパァァァァァァァァァク」
一方的な攻撃を受けていた私たちの頭上を青白い極太の光が貫いた。
そう、この技は出雲がよく多用する技。
つまりは・・・・・・・。
「出雲が来たぞ」
鬼神さまが私たち鬼の士気を上げるために声を張り上げる。
きた、圧倒的な攻撃を受けていた私たちにも反撃のチャンスが・・・・・・・。
「大自然の怒り」
再び出雲の声が響き、風の渦が空中の天狗たちを襲う。風が渦を巻いているせいか、かわしきったと思われていた天狗や、射線上以外の天狗も吸い込まれて、電撃にあたったり、中の光に当たる。

『これなら勝てる』

鬼たちの勢いは再び強くなる。
空にいる天狗たちが恐怖を感じてしまうほどに・・・・・・・・・。
そう、もともと天狗たちは、自分たちには空からの攻撃というアドバンテージがあったので勝てると思っていた。
鬼たちは基本、拳で戦うからだ。
なのに、今は空中にいると謎の砲撃を受けて一発ごとに1000や2000落とされている。
だからといって受けないために陸上に降りれば鬼の餌食となる。
将棋で言えば『詰み』の状態であった。
しかし、ひとつだけその『詰み』をくつがえす策がある。
簡単だ。砲撃を行なっているものを倒せばよい。
ならば誰が倒すのか?
いっぺんにあれだけの仲間を落とすことができる砲撃を近距離で受けることになるのだ。足がすくまないわけがない。いくらどれだけ強いものであったとしても、恐怖は感じるのだ。
天狗たちが硬直している間にも、次々と砲撃が放たれ、意識を奪われていった。
そして、天魔の決断が広場に響く。
「陸に降りろ。一方的な砲撃を受けるぞ」
天魔の声で天狗たちの硬直はやっと解けたが、既に数は1000をきっていた。

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