小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「調子に乗るからだ。お前の能力じゃ俺の能力との相性は最悪だからな・・・・」
そう、黒天の能力は風を操れた。
しかし、出雲の能力は自然そのものを操ることができる。
圧倒的に黒天の方が不利である。最初に自分の能力を明かさなかった出雲も多少えげつないが・・・。
「さて、次は誰だ?」
出雲は、自分の手にフッと息を吹きかけると次はお前だと言わんばかりに天狗たちを睨む。
すると、人間に負けていられないということだろうか。天魔が
「我がやろう」
名乗りを上げる。
すると、黒天を上回る妖力を確認できていた大天狗のひとりも同時に前に出る。
既になりふりは構っていられない。
たった一人の人間に種族が敗北したなど妖怪たちにとって屈辱にも程があるからだ。
「何人同時でも関係ない、かかってこいよ」
出雲がそう言うと大天狗が妖力の弾を飛ばすが・・・・・・・


「何一人で暴れている」
鬼神の妖力弾ではじかれた。
そして、ここに山の頂点二人と、天狗の頂点二人が対峙した・・・・・・・・・・・。



先に仕掛けたのは天魔だった。
妖力で弾幕を作ると、そのまま後退していく。それと同時に大天狗も同じことを行なった。
しかし、その程度の攻撃で出雲たちがダメージを受けるわけはなく、出雲の能力で空気の壁が発生しそこで霧散する。
どうやら天魔たちにもそのことはやる前から理解できていたらしく、彼らの手には大きな妖力弾ができており、それらは出雲たちをめがけて飛ぶ。
「次は我がやろう」
牙煉が体に紅蓮の雷と炎を纏い、巨大な妖力弾は正拳突きで天魔たちの方向へと帰っていく。
放たれた時よりも早く。
天魔たちが撃ったより早く。
妖力の弾は帰っていく、紅蓮の炎と雷をまといながら。
「・・・・・・・」
しかし、こちらも当たる前に軌道を変えて地面へと落下する。
「こいつの能力は軌道を操ることができる」
「なんてチートなんだか・・・」
天魔の言葉を聞き、出雲が言うが、十分彼の能力もチートの部類に入る。
隣の芝生は青く見えるものなのだ。
「でも、軌道とか関係ない攻撃ならいいか」
すると、どうしたことだろうか。
彼ら四人の周りに炎の輪が発生する。
炎の輪は、太陽のプロミネンスのように炎が噴き出る。炎は彼らの頭上にも飛び出し始め、本当に炎のドームの中に4人は閉じ込められた。
「極地限定紅炎(ワンポイントプロミネンス)
ついに四人の足元から巨大な火柱が噴き出した。あくまでドームの中だけで・・・。火柱はドームの天井に当たると方向を変えて彼らを襲った。




「危ない、咄嗟に能力の応用を思いつかねば死んでいた」
「牙煉の能力ならいけると思ったから使ったんだけど・・・・」
「他人に先に自分の能力の使い方に気がつかれるとはな・・・」
「普通はこんな状況はないだろ」
火柱が消えたあと、未だに煙が漂ってはいたがひとりの鬼と人間は軽口を叩き合っていた。
正直、かなりひどい攻撃だっただろう。
ただの炎の攻撃ではあったが、温度は太陽の炎にも近いものであった。
さらに、牙煉が自らの能力で、自分の周囲のものを天魔たちのもとに送りつけていたから実際に予定されていた以上の量の炎が天狗のコンビに襲いかかっていたのだ。
温度の方は出雲が異常なぐらい早い速度で自分たちの周囲だけ下げていたが・・・・・・。
「死んだか?」
「我は知らん」
「あっそ」
二人は、自分たちの攻撃を受けた者たちが死んでいてもおかしくないと判断していたが、
「物足りないからもう一発撃つか」
「今度はおぬしが合わせろ」
容赦がない。
彼らは戦いが好きなのだから。
いや、戦いというものは好きではないのかもしれない。ただ、自分たちの邪魔をしたものが気に入らなかった。だからそいつらを潰すことが気分が良かったのかもしれない。
「雷山(かみなりやま)の紅葉景色(あきもよう)」
牙煉の周囲に四つの紅蓮の雷がまとわりつく炎の巨大な玉が4つ顕現する。
「炎か・・・。炎の円舞曲」
出雲がONEPIECEのロビ☆のように腕をクロスさせると、手からぽんっぽんっ、とたくさんの小さな炎のたくさんの玉が現れる。
それらは巨大な巨大な4つの炎弾に螺旋状にくっつく。
そして、牙煉が右腕をふりかざし、振り下ろしたと同時に4つの玉が煙の中に飛び込み、4本の火柱を建てた。

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