小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「?人里の動きが慌しい?」
「ああ、物見の天狗が言っていた。なんでも武器を持った連中が慌ただしく動き回っているそうだ」
・・・・・・・・・・・・。
あ、どうも、長年独り身の薬師出雲だ。ここ最近じゃ仙人なんて呼ばれるようにもなってきた。
近年生まれたような若い鬼や天狗たちにだけどな・・・・・・・・・。
教師に向けてなんてことを言うんだか。
「私も見に行ってみたわ。暇だったし。彼らの言うとおりだった、盗み聞きもしてみたけれどあの様子じゃ山に攻めてくるわよ」
「マジかよ。・・・・・・、寺子屋はしばらく休止だな」
せっかく寺子屋始めたのにな。この山教育機関というものがないし・・・・・。
だからまぁ、兵法から戦い方。文字、計算、自然、歴史について教えていたんだが案外ここの住民は本当にのみこみが早い。
ちょっと教えるとあっという間に覚えている。
こっちが気づかなかったことに彼らが気づいたりしている。
寺子屋の場所は屋敷だ。実戦訓練の時以外は屋敷で、実戦訓練の時は広場で訓練している。
「彼女もいたわよ」
「永琳が?」
「ええ、武器を持った人たちをものすごい形相で睨んでいたわ。一人の男が近づいて彼女の顔に触れようとした瞬間に殴り飛ばされていたけどね」
おいおい、何やってんだか。多分その男ってのがもう一人の天才なんだろうな・・・。
「どうするんだ?私たちなら勝てないことはないだろうが・・・・。彼らの新兵器がな・・・」
そう、人里が急激な発展を遂げた副産物とでも言うべきもの、兵器の発展。
銃が連射可能な武器になっている。それに威力も半端ではない。射程距離も長い。
「どっちにしろ迎撃はしなくちゃならないだろう。黒天、人を貸してくれ、迎撃設備を整える」
「人間の出雲が行動するのは皮肉なものだな」
「あら、彼にとってはその程度の事関係ないのでは?いいわ、貸してあげる」
ともかく時間がないな。
武器を持っていたことが分かっているのにこっちに来ないとなるなら、どこかで訓練をしていると考えるのが一番。
普段は戦い慣れていない者たちも付け焼き刃だとしても確実に戦闘を覚えてくる。
さてさて、どうしたものやら。
近接の武器なら戦い慣れていないものなら恐怖を感じてまともに戦えないんだけど、遠距離武器なら関係ないからな。相手が遠くにいるぶんだけそういうものを感じにくくなる。相手が接近戦メインの敵ならなおさらだ。





「そうそうそこに櫓、そっちにはもっと高く塀を積んで。堀はもっと深く。そこには水も流すから内側に壁を作って」
厄介だ。
天狗だけじゃなくて力のある鬼の人員も借りている。
塀と堀は既に5重にしている。異常なぐらいの防御陣。これですら防ぎきれるかどうかは定かではないのだから・・・・・。
強度は俺の能力でなんとかなるけどそれ以外はどうしようもない。はぁ・・・・。高さとかは俺じゃ変えられないからな。
「上流の河童たちに連絡、河をこっちつなげるように。それと川の水はまだ流すなよ」
「了解しました」
ひとりの天狗が河にいる者たちへと伝令に飛ぶ。
着々と迎撃体制は整ってきている。あとは人員の配置。
どこに人を配置するかが関わってくる、どうしたものやら・・・・・・・・。
同じ種族ばかりを固めても敗北する、違う特性を兼ね揃えた部隊を構成しないといけない。
「前列は天狗メインかな」





「物見から連絡があった。永琳殿から密書だ」
「むちゃするなぁ、ありがとうな葉華」
さてさて、なんと書かれているやら。

『お元気ですか?出雲。私のあとを継ぎ、人里を発展させている男がいます。彼は次々と新しいものをつくり、人々に思想を植え付けています。「人間こそが善、妖怪は悪」と・・・・。気づかれているでしょうが、彼らは山を攻めようとしています。それは明日か明後日と思われます。あなたがたが防御体制を整えているのは彼らも気づいています。それでも計画に変わりはないでしょう。すぐに防御を固めてください。私は残念ながら何もできませんが、あなたが生き残ることを祈っています。そして、あなたの仲間となった妖怪たちも・・・・・・八意&#10006;&#10006;。失礼、八意永琳より』
「・・・・・。全員迎撃体制に移れ」
「来るのか、ついに・・・・・」
「私も前に出なくてはならないわね」
「悪いな、葉華、黒天」






翌日、人間が山へと攻め込んだ。

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