小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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ああ、ここに来てから何年経つんだろう・・・・・・・・・・・・・。
時という感覚が俺の中でどんどんと薄れていく。
もう、数百年ぐらい経っている気がする。どうやら、とりあえず俺は不老だ。それだけは自信を持っていえる。
じゃなきゃ、こんなに長く生きられないし、姿が全く変わらないのはありえない。
ただ一つ言えることがある・・・・・・・・・・・・・。
自分ひとりの世界はつまらん。
確かに、恐竜がいるが、別に会話できるわけじゃない。
食う側と食われる側の関係だけだ。
自分の能力もほぼ完全に使いこなせる。
もう、何かをするにも事務的な行動になってきちまった・・・・・・・。
はは・・・・、
「人が懐かしいな」
夕闇に沈みかけた世界で小さな波紋が広がった。






ああ、どうも。出雲だ。せめてもの娯楽にと酒を造ってみたが・・・・・・・
飽きてしまった。最初の数年は良かった。
創意工夫というものがあって、久々に色々と考えさせられたりもした。
完成してから何年かも、味の改良とかで夢中になれた・・・・・・・・・・・・・。
だけど、それも過ぎれば飽きてしまうものだ。
と、まあ、森を歩いているわけだ。
なにも考えなしに歩いてるわけじゃないぞ。なんかこっちからいい匂いがするんだよなぁ。
なんていうんだっけ?ほら、あの白黒や茶色で、角の生えた生き物。えーと、・・・・。まあ名前はどうでもいいが、あれを焼いたような匂いがするんだ。
なんつうんだろうな、いい匂いって感じだけじゃなくて、懐かしさも感じられる。
勘違いかもしれないが、ちょっと気になるんだよなぁ・・・・・・・・・・・・・・。
まあ、この時代に人間はいるわけないか。未だに恐竜の跋扈している時代だもんな。
あーー、でもこのまえヘンなの居た。蜘蛛の脚持ってて、体が人で、頭がティラノサウルス、両腕がカニのはさみだった。
まじで気味が悪かったから雷で焼こうとしたら、一発で焼けなかった。
あんなマジな戦い始めてだ。
最終的にあいつの体の表面を水でぬらしてから、雷の雨を鬼のように降らしたら30分後ぐらいに止まった。
やっぱり気持ち悪かったから屍骸は水素と酸素でポンしといた。
で、結局あれなんだったんだろうねぇ?
あのあと、数日後に見に行ったら屍骸がなくなってたしね。余計に気になるよ。
もしかして復活したとかだったら面倒くさいことこのうえない。
ん、匂いが強くなった。
そろそろか・・・・・・・・・・・・。
顔を上げた出雲の前に広がっていた光景は、戦国時代ぐらいの人の集落だった。

-3-
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