小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「ここ近年だけどさ、霊力とは違う何かができてきたんだが、何か知らないか?」
「俺が知るわけ無いだろ。自分のことぐらい自分で分かれ。あ、そうそう、外部の妖怪がまた入山して登録していったぜ」
「うーん、もしかしたら神力かもしれないよ?人里でなんか大将が祭られてたよ?」
どうも、なんかみなぎってきた薬師出雲だ。
ここ最近では山のことが有名になり始めて、外部から妖怪が入れてくれといってくるようになった。
頂上にある神社で登録をすれば誰でも番付に参加できる。
人であろうが妖怪であろうがたとえ神であろうがだ。
黒霊峰なんて呼ばれている。なんでも遠くから見ると黒くみえる山で、霊力がみなぎっているからだそうだ。
ついでに、頂上の神社で祭られているのは何故か俺だ。この山のルールの一つで、番付に加盟した妖怪は人間に襲われない限り、殺人ををしてはならないということがあるからか、人間もよく山で見かける。
そんな彼らがしっかりした住処を、といってとんでもなくでかい神社を造った薬師大社だったな。平成の世に残っている出雲大社なんて比じゃないぜ(笑)。なんでも人間だけじゃなく妖怪も協力して造ったそうだ。
嬉しいものである。神社の裏は妖怪たちの番付表があるが・・・・・・。
「まあ、そんな悪いものじゃないんだな?」
「多分だけどね?」
「俺は知らねーぜ」
「・・・・・・・・、せいっ目潰し」
「目がァァァァァァ目がァァァァァァァァァ」
「玲奈、ム○カになっちゃだめだよ?」
こういった普通の日常もいいものだな。
心が安らぐというかなんと言うか・・・・・・・。
まぁ、コタツ+みかん+談笑だからよけいに安らぐ。
このコタツ、電気とか火とかなしで俺の能力で温度を調節しているぶんだるいが・・・・・。
ごぉぉぉぉぉぉん
「鐘の音か」
「鐘の音だね?」
「鐘の音だ」
ごぉぉぉぉぉぉぉぉん
やっぱいいな、今年から12月31日から1月1日にかけては鐘を鳴らすように言ったら本当にやってくれてるよ。
「寝るか?」
「寝るの?」
「まじか」
こうしてまた一年が終わるのである。
のんびり、のんびりと。
長い年月を生きる妖怪だからこそ物事をゆっくりと落ち着いて。
ボーーっとしながら先を見据えた生活をするなんて事はなく、そのときをのんびりして過ごすだけ。
妖怪たちの年末であった。
だからこそ、こののんびりする大切な日は山では稽古が禁止されていた。
ゆっくりと、一年間の疲れを取るために。
もっとも、冬の時期であるがために冬眠している妖怪や妖獣たちも少なくないが・・・・・・。
そして、春が来るたびにこの山はにぎやかになる。
妖怪の数もわずかだが増える。
そして、動物の数が極端に増えるのだ。
出雲は妖精、動物から自然の力を繰るがゆえに好かれている。
そして、そんな彼のもとには様々な動物たちが集まっていた。

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