小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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どうも、どうやらここ最近神になってしまった出雲だ。
なんだかんだ言っても、やっぱりこれまでどおりの生活をしているんだけどな。
あ、でも今では人里にちょくちょく顔を出して、よその妖怪から襲われたりした情報が入った時に討伐に向かう。そんな流れになってきている。
しかしまあ、こんだけ武闘派ぞろいのこの山に喧嘩を売ってくる勢力もあるもので、時たま妖怪の軍勢が攻めてくるも、あっさりと山の麓付近であっさりと全滅したりしている。
「で、今日は何があった・・・・」
俺はいつもどおり人里の集会場に顔を出しているわけだが、代表格の顔が多少厳しい。
「薬師様、よその村が我らのもとに入りたいと言ってきました」
ああ、なるほど。
そいつらが入ってくることによって村の情勢が変わることを恐れているわけだ。
「特に問題はないと思うがなんかあったのか?そんな厳しい顔をして」
「え、ええ。彼らはとても軍事力が強大でして、もし彼らが我らを追い出そうとすれば簡単に我らは追い出されてしまうのです」
・・・・・・・、そりゃまた厄介なところが。
可能性としてはあまりにも巨大な集落になってしまったために全員の腹を満たすことができなくなり、この山の話を聞いて仲間に取り入れてもらおうと考えたということだ。
これまでにも、小規模な集落が吸収されて麓に住んでいる者たちもいる。
されど、今回はどうやらこれまで集まってきた集落の合成体を1とみたときに、3ほどの大きさであるらしい。
「いざとなれば妖怪たちが降りてくる。それでどうだ?最初っから疑ってかかっても、後後普通に集落に入りたかっただけだとすればいざこざが起こるぞ」
「されど・・・・・・・、分かりました。いざとなれば妖怪たちは我らの見方をしてくれるのですね?」
「ああ、通達しといてやる」
「ありがとうございます」
さて、用事はひとつ終わり。
あとは・・・・・・・・・・。



ふう、さすがに妖怪に襲われないとは言ってもこの山は老人たちにとっては厳しい箇所もあるかもしれないな。だからこうやって薬草の採取を引き受けたりする必要性も出てくる。
それに、今俺がいる中腹の森でだって妖怪たちが木々の中での戦闘を行なっているはずだ。
流れ弾が飛んでこないとは言い切れないだろう。
「ま、たまにはこうやって歩き回るのもいいことか」
普段は歩かずに空を飛んでいることが多い分だけ、足腰を動かすことに気分が良くなっている出雲だった。




「で、どうやら大規模な集落がうちの山のお膝元にやって来る。彼らがどういう行動をとるのかが今ひとつ不明のため、これまでいた住民たちに危害を加えるようであれば、彼らを追い出す。そうでなければこれまでどおり。異常だ」
「「「「「応」」」」」
神社の部屋の一つで妖怪の代表者たちに一応のことは伝えたが、さてさて、どうなうことやら・・・。

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