小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>

どうも、半人前神様の薬師出雲だ。
つい先日、新しく入ってきた集落の連中と、これまで居た連中のちょっとした揉め事が起こり、それを仲裁したらなんかさらに信仰が増えてきた。
気持ち悪いぐらいに神力が増えまくる。膨大な量の霊力+豊富な魔力+鰻登り中の神力、普通にあってもいらない量だ。
ためしに魔力と霊力の5割を込めてマスパ撃ったら山がひとつ吹き飛んだ。
うん、ヤバイね。
「で、今度は何なんだよ」
俺は神社にいながら人の依頼を受けていた。
これまでのように人里を歩くのもいいが、広い上に以来が多い。だから、山の上の神社に依頼書を持ってくることで、依頼板に貼る。そして、一定以上の番付のものがその依頼を受ける。
そういうシステムにすることによって、増えた依頼量を裁くことに成功しているわけだ。
しかし、そちらでは対処できない様なものは直接俺のほうへと持ってくることになっているわけだ。
「それが、よその土地の神様というのがおりまして、信仰しなければ息子を殺すといって、いま私めの息子が高熱にうなされているのです」
「祟り神か・・・・・・・」
祟り神。
神の一種であり、名前のとおり祟りを扱うことができる。たとえば、嫌いなやつがいて、そいつに怪我をしろと念じればその後大怪我をするといった感じだ。
妖怪として強大な力を持って生まれたものが、そのうちに神として信仰されるようになった場合、祟り神になるものもいる。種類としては直接戦闘向きの力を持っているわけではないが、もとが妖怪だった場合は、もともと強大な力を持っていたことをあらわし、ものすごい強い存在であることが多い。
しかし、あくまで神であるため、神としての活動も行える。例としては土壌の質をよくしたり、ご利益を与えたりといったところだが・・・・・・。
ともかく、飴と鞭という言葉をそのまんまにあらわしたような存在の神である。
そして、今回は出雲の勢力圏内の者にまで信仰しろという命令、つまりは鞭を使ったのである。
「しょうがないか、これ以上被害を拡大させるわけにも行かないし。取り合えずお前の息子の熱を下げて健康な状態に戻したら売られたけんかを買いに行く。それでいいか・・・・・・・・・・」
こうして、出雲の次の暇つぶしは決まった。
「あ、ありがとうございます、ありがとうございます」
男が涙を流しながら出雲に謝礼を言うが、
「お前の息子が治ってからだ。それまでは謝礼なんか要らない」
静かにそれをなだめる。
そして、立ち上がると、
「じゃぁ、お前の家にまで行くか」
男を連れて下山し始めた。

-33-
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える




東方茨歌仙 ~Wild and Horned Hermit. (IDコミックス) (IDコミックス REXコミックス)
新品 \840
中古 \210
(参考価格:\840)