小説『東方薬師見聞録』
作者:五月雨亭草餅()

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「ほう、そ奴が人でありながら人里に住んでおらんという・・・」
「変わった奴だな」
「あらあら、おもしろいじゃないのさ。・・・・・でもよくこれまで生きてたもんだねぇ」
「強いんじゃないの?」
「じゃあやりあうか?」
「まずは鬼神様からさね」
「どーでもいいや、いまの人間になんて興味ねぇよ」
「随分連れないこと言うじゃないかい」



鬼ってのは好き勝手な奴が多いらしい。一応、俺がここにいるのを待ってはいたみたいだが、みな口々に俺の評価を始めている。まあ、鬼評価されるなんて一生に一度あるかどうかの珍しい体験だろうしひょかを受けとこうじゃないか。なんて思っていたんだが、あんまり評価というより誰から戦うかの話に変わってる気がする。
本当に気楽だな、草原のクマ妖怪が全滅すれば次に狙われるのはこの鬼達だろうに・・・・・・・。
まあ、どうせおれも家まで帰る気はないしここに居座ろうかと考えていたから一緒に人間と戦うんだろうけどな。
「で、俺は戦えばいいのか?葉華」
「はぁ?あんたみたいな弱い人間が戦ったら死んじまうよ。あたしら鬼とはレベルそのものが違うんだから」
葉華(ようか)は何をバカなことを、という顔を向けては来るが・・・・・。
「でもあちらさんがたはやる気みたいなんでねぇ」
どうやら俺を待っていた鬼の大半の理由は俺と殺しあうことらしい。
相手の強さを知るために相手と殺しあう。さすがは妖怪の中でも種族そのものが最高レベルの強さを誇るだけはある。
「おまえら・・・。バカか、こいつは人間なんだぞ」
葉華は声を荒立て、他の鬼達を帰らせようとする。
自分で行っていた限りは、葉華は鬼の四天王という奴の3番らしい。で、俺が一瞬だけ目を覚ました時にいたのが2番だったとか・・・・・・。あんなちびが?とはおもったが、見かけには寄らないということだ。俺だって見た目は18とか19そこらにしか見えないが実際は600年は生きてるもんな。
「ふん、とはいえしきたりを忘れたわけではあるまい」
「そうだ、この山のしきたりをな」
「何の問題があるってんだい?」
「いや、だがこいつはにんげ「葉華よ、我らが山のしきたりを忘れたか」き、鬼神様!」
ん、どうやら四天王より上っぽい存在か・・・・。
ってことは実力社会の鬼の世界。
鬼の頂点、鬼のかしら・・・か・・・・・。
「で、しきたりってのはなんなんだい?」
出雲は顔に子供のような笑みを浮かべながら口にした。
それを鬼神は認めると、
「鬼の強いものから順に新たにこの山にすむものは戦っていくというしきたりだ」
同じく子供のような笑みを浮かべながら返した。
二人の間に種族という怨みは存在しない。
存在しているのはただ一つ。
こいつはどれだけ強いんだ?
ただそれだけ。好奇心だけである。
「面白いしきたりだ。人のみだが挑戦させてもらおうか」
「ほう、いい度胸だな。お主、名はなんと申す」
鬼神に訊かれた質問に一瞬だけ出雲は固まる。彼は名字を持っていない。否、思い出せない。だから何と言っていいのかが分からなかったのだ。だが、次の瞬間には返答が決まっていた。
あいつ、銀髪門番の永琳は薬師だったな・・・・・ならかんたんだ。最初のお礼は
「『薬師(やくし)出雲(いずも)』だ」
俺の名字にするさ、お前の仕事をな。
「良い名だな。我はこの山の頂点、鬼神の大雉牙煉だ」
「「じゃぁ、おっぱじめっか」」
大自然を司るものと、鬼達の頂点はついに激突した。

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