小説『時の罪』
作者:裏音(雨月夜ノ歌声)

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【9.約束】

『ねぇ、どうしてずっと立ってるの?』
それは、紅蓮が実験場へ来て約2年経ったある日。今にも消えそうなか細い声で、紅蓮は聞いた。
『…俺が見えるのか?』
二人の出会いは、小さな牢獄。偶然やってきた楼と、偶然その姿を見つけた紅蓮。
本来なら、死神の姿は人間には見えない。だが、紅蓮は元々人ではない者を見ることが出来た。
ちなみに普段の楼は人間に見えるようにしている。
『うん。見えるよ』
『お前…何でこんな所にいるんだ?』
『…おじさんたちに、連れてこられたの』
楼は知っていた。子供達がこの実験場へ連れて来られていたことを。だから、紅蓮がそう答え時も、さほど驚かなかった。
この時、楼には不思議な感情が生まれていた。この子を守りたい。死神には、絶対ないような感情。
『お前さ…名前は?』
『…紅蓮』
『俺は楼。よろしくな』
その時触れた二人の手。紅蓮の手はとても冷たくて、楼の手はとても暖かい。
『紅蓮…ここから逃げたいか?』
『…うん。逃げたい』
『なら…俺が手伝ってやる。そして、これからお前を守ってやる』
『じゃあ、一つだけ約束して』
絶対私に、答えを教えないで。
それが、紅蓮と楼の二人だけの約束。

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