小説『時の罪』
作者:裏音(雨月夜ノ歌声)

しおりをはさむ/はずす ここまでで読み終える << 前のページへ 次のページへ >>


【7.悪魔の手】

「おはよう紅蓮!」
朝。無邪気に白弥が紅蓮に飛びつく。
「うわぁ。朝から元気だね白弥」
紅蓮は夢のことを聞こうとしたが、何だか夢の中の白弥と現実の白弥が違うように思えて、聞けなかった。
「白弥ー、紅蓮。朝ごはん出来たよ」
リビングの方から薫の声が聞こえる。紅蓮と白弥の二人は、香りに釣られるようにリビングへと向った。
「おはよう楼」
「うん…」
「楼、さっきからこうなんだ。考え事でもしてるみたいだね」
数分ごとにため息をつく楼。流石の紅蓮も、こればっかりは不安だ。
「楼、大丈夫?」
「うん」
「私今から鍵使うね」
「うん」
何度声をかけても上の空。どうしようもない。紅蓮は困り果て、ため息をついた。
「そういえば、これから二人はどうするんだい?」
薫が話しかけてくる。楼は上の空な為、紅蓮が答える。
「やることやって帰ります」
やることとは、魔方陣を作った人間を突き止めるということ。そしてその人間を、消すこと。
「帰るって…どこへ?」
「私の家です。ちょっと遠いところなんですけど」
「ふーん…」
紅蓮は違和感を感じた。薫から、何だか嫌な空気を感じる。紅蓮は早くこの場を離れたいと思った。
「ごちそうさまでした。それじゃ、お世話になりました」
紅蓮は楼の手を引くと、逃げるように白弥の家から出て行こうとした。
すると、白弥が立ち上がり、どこからか人形を取り出した。
「逃がさないよ。時の瞳…。人形よ、自由を奪え!」
白弥が叫ぶ。すると薫が笑い出し、素早い動きで紅蓮の正面へ来た。そして白弥の持つ人形が宙に浮く。
「フフフフ…時の瞳を持つ人間。紅蓮!」
紅蓮は逃げようとした。だが体が動かない。薫の手が、紅蓮の体を打ち付けた。
「かっ、はっ…!」
苦しそうにする紅蓮。その瞬間、薫の腕が無くなった。
「紅蓮に、何してんだ…?」
楼の瞳は覚醒し、怒りに燃えていた。その手には、薫の腕が。血は落ちてなく、まるで人形のよう。
紅蓮は更なる恐怖を感じ、一刻も早くその場を離れようとした。
「楼、逃げよう」
「わかった」
二人は走り出し、家を出た。
「フフ…逃げたか」
腕を無くした薫と人形を持った白弥は、その場に立ち尽くした。
そして怪しく笑う薫。体が黒い物体に変わり、白弥の中へ入った。

-8-
Copyright ©裏音 All Rights Reserved 
<< 前のページへ 次のページへ >> ここまでで読み終える