「お前らが俺をどう思ってるのかよく分かったよ」
呆れたように賢太は言った。
いや実質呆れているのは確かだ、普通の感覚なら呆れるに違いない。
「モデルやらないなら何やるんだ?進学すんのか?」
郁葉が尋ねると、賢太は遠くを見て一言。
「あーまぁ……警察か自衛隊になろうかと思ってる」
あまりにもイメージとかけ離れた答えにワーオ、と一同驚きの声を漏らす。
だが別に予想外ではなかった。
昔から人一倍正義感の強い奴だったし、何より突飛した身体能力を生かさないのはもったいない。
まあ抜きん出た容姿を使わないのも勿体ないのだが。
「お前らは普通に大学か?」
また郁葉が、今度は他のメンバーに聞く。
「あー」
「あぁ」
「じゃね?しらね」
隆弘、昂矢、竜樹の順に答える。
郁葉も同じだったようで、お前らもか、と一人呟いた。
進路の話と言うのは、高校生の後半になれば誰でもが持ちだす話題だ。
もちろん、出してほしくないと思う人もいるかもしれないが、高校を卒業して新しい一歩を踏み出すという事実からは逃れられない。
だが結局のところ、この5人は新たな一歩などは踏み出したくは無かった。
それは彼らが今まで作り上げてきた思い出の終焉を意味するから。
それ以降、彼らは何も話さず、ただ空を見上げていた。
空には沈みゆく太陽と、これから夜を輝く星とがすれ違うように浮かんでいた。