小説『異世界転生物語〜え?リリカル?なにそれ?〜』
作者:ガウェイン()

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「という訳で、川を探して移動中というのが現状だ。何か質問は?」

「川を探すのはいいと思うけど…方角は分かってるんですか?」

「・・・・・・・・・」

司の状況説明にフェイトが質問をする。シグナムも言葉にはしていないが同感なのだろう。

「なに、方角は分かっていないが方法は考えてある。」

「今度はまともな手段だといいのだが……」

シグナムが呟くように言葉を発する。ここで先ほどのように神頼み等と言われたら(たとえ冗談だとしても)一度本気で殴ろうか、と割と本気で考えているのかもしれない。

「安心しろ。この方法は今まで俺が何度も使ってきた実績のある信頼できる方法だ。」

「それで、どんな方法なんですか?」

いい加減じれったいと思ったのかフェイトが質問する。

「それは…」

「「それは?」」

「これを使う。」

そういって司が何処からか取り出したのは、最新のレーダー・・・なんてことは無く…

「木の棒…?」

「ブラック…ふざけているのか…?」

フェイトの言葉からわかるように、司が取り出したのは、いかにもそこらへんから拾ってきました。と、言わんばかりの普通の木の棒だった。

「断じて、ふざけてなどいない。」

「………」

「そ、それで、どうやって使うんですか?」

無言のシグナムととりあえず聞くフェイト。そして司が答える。

「まずは、この棒を地面に立てる。」

「(いや…まさか…な?)」

「(うん…そんなわけ無い…無いよね?)」

司の言葉に不安が募る二人・・・そして

「そして手を放すと当然、棒は倒れる。」

こて、そんな擬音と共に棒は倒れる。

「ブラック…まさかとは思うが…倒れた方向に進むなんて言わないだろうな?」

シグナムの、それだけはやめてくれ。そんな願いが聞こえてきそうな言葉に司が反論する。

「馬鹿を言うな。そんなことするはずがないだろう。」

その言葉に安心するフェイトとシグナム。しかし、次の言葉でその安心は消し飛ぶ。

「自分の運の悪さくらい理解している。よって、倒れた方向の逆に進む。自分の悪運を逆利用した完璧な作戦だ。」

「「ばかぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」」

司の言葉に思わず叫ぶ二人。当の司はというと…

「シグナムには先ほど言ったが、そんなに叫ぶな。無駄にエネルギーを消費するぞ。」

「「お前(あなた)のせいだ(です)!!」」

「何故!?」

自分の作戦が可笑しいとは微塵も思っていない、むしろ二人が何故不安なのか疑問に思ってさえいた。



-----23分後-----

「言った通りだっただろう?無事に川にたどり着けた。」

「嘘・・・」

「馬鹿な…」

どうやら三人は無事に川にたどり着いたようだ。約二名、信じがたいようだが。そういっている間にも司は何かの作業をし始めた。

「ブラック、何をしているんだ?」

正気に戻ったシグナムが司に聞くと、司は当たり前のように答える。

「水は見つかった。なら、火もほしいからな、たき火の準備だ。」

「……そうか。それならば私も手伝おう。」

以外にも正論だったため一瞬驚いたがシグナムも納得できる答えだったため手伝いだした。

「あの…シグナム、ブラックさん。私は何をしたら・・・」

フェイトも自分も何か手伝わなければいけないと思い、声を発した。

「手伝ってくれるならありがたい。なら、俺は別でやりたい事があるから、シグナムを手伝って火を作っておいてくれ。火おこしはシグナムの魔法なら簡単だろう。」

「わかりました。ブラックさんは何を?」

「少し、別行動だ。一時間以内に戻る。シグナム、頼んだぞ?」

「ああ、承知した。気を付けろよ。」

そんなやり取りの後、司は森に入っていった。


司君side

さて、とりあえず水は見つかったし、次は食料だな。幸いにも川には魚もいたし、木の実もいくつか見かけた。空気や木の形なんかから察するに地球と大して変わりはない筈だし、探せば食料はある筈だ。伊達に遭難して捜索願いが出されて発見されるまで三日間、山で生き残ったわけじゃない。それに今は頼りになる相棒≪デバイス≫のオーラがいる。見つけたらスキャンしてもらえば毒がないかもわかるから便利だな。

「という訳で、頼むぞ?オーラ。」

『毎回のことながら唐突ですが、了解です。』

じゃあ、捜索再開だ。お、あの木は釣竿に使えそうだ。

『ところでマスター』
ん?
『もっと出番が欲しいです』
え”?

司君side out

「あの…シグナム…」

「ん?なんだテスタロッサ。」

今は司がいないので二人でたき火を間に挟んで座っている。

「あなたは、ブラックさんとどういう関係なんですか?」

「どう、と言われてもな…私が魔力の蒐集のために襲ったうちの一人だ。もっとも、その時は気絶寸前まで追い詰められたし、ヴィータが危なかったから途中で引き分け…いや、あいつが私を殺す気でいたら私は殺されていたな。そういった意味では実質、私が正面から挑んで初めて負けた相手だ。それがどうした?」

「(シグナムを気絶寸前まで追い詰めた?)…いえ、その、ブラックさんはあなたのことを随分信頼してるように見えたし、あなたもブラックさんに随分心を許しているように見えたので…」

フェイトは正直に感じたことを言っただけなのだが…

「!?ブラックが私を信頼している!?ば、馬鹿を言うな!!ここには他に人がいないからであって、……って心を許している!?ち、違うぞ!?ブラックは決着がつかなかったから、その…そう!その時まで生きていてもらわねば困るのであって…」

シグナムには核爆弾並みの威力があったようだ。

「その…あなたはブラックさんの事が好きなんですか?」

「・・・・・・・・・・わからない。この気持ちがそうなのか…少なくとも嫌いではない。」

「そうですか…。」

「そ、そういうお前はどうなんだテスタロッサ。気になったりする男はいないのか?」

「……へ!?」

シグナムの予想外の変化球≪ガールズトーク≫を聞いてフェイトの頭に浮かぶのは学校で自分の隣りの席に座る無表情、でも自分を助けてくれたクラスメイト。

「…/////一応…気になっている人は…(あの笑顔は反則だよ…)」

「そうか…」
「・・・・・」
「・・・・・」

「で?そろそろ俺も座っていいか?」

「「っっ!!!???」」

二人が振り向くとそこには、魔力を質量化して作った籠二つに木の実と魚を入れた司こと、ブラックが立っていた。


-13-
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